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5.身元確認
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「では、皆さんの身元確認をさせてもらいます」
アルトニアの騎士団により、奴隷とされた一人一人が身元を確認される中、隣国から連れてこられ競売にかけられていた、シェイラと子供達は隣国で身元を特定できるものなど何ひとつなかった。その為、他の人達とは違いその場で解放とはされず、一度アルトニアの首都にある騎士団本部へと向かうこととなった。
「大変だったでしょう。とりあえず、今日はゆっくりと身体を休めてください。」
幸いにも、オークション会場とされていた場所は首都からそれ程遠くなかった為、すぐさま騎士団の宿舎へと案内されたシェイラ達は早々に休む事ができた。
子供達が、シェイラと離れたくないと言い張った為、大きめの部屋に11人で寄せ合って眠る事になる。疲れ切っていたのだろう、子供達は安全が保証されるや否や、すぐに寝息を立て始めた。
しばらく子供達の寝顔を眺めたのち、シェイラもゆっくりと目を閉じた。
翌日、改めて騎士団より聴取を受けたシェイラは攫われてからの様子を細かく説明した。
話を聞いた騎士は、困った様子で騎士団長の元へと報告に向かった。
それから、しばらくすると先程の騎士が騎士団長と副団長を連れて戻ってきた。
そして、まず子供達に関しては親がいる子は親元へ帰し、孤児院から拐われてきた子達に関しては、元の場所へ戻るかアルトニア王国の孤児院に入るかとの選択肢が課せられた。子供達が、それぞれの境遇にあった選択をしているうちに、騎士の1人が慌てた様子で部屋に乗り込んできた。
「団長!!!お取込み中のところ、申し訳ございませんっ!」
「どうした?」
入ってきた騎士は、すぐさま団長と呼んだ人物の元に駆け寄ると、耳元でボソボソと話をはじめた。そして、話を聞いていた団長と副団長の顔が強張っていき、急いで部屋を出て行ってしまった。
只事ではないと感じたシェイラは、すぐさま周囲に気づかれないように増幅魔術を展開した。こうする事で、少し遠くにいる人の会話を、まるで自分に話しているかのように聞こえる様にすることができるのだ。
そうやって、聞いた内容は昨日の奴隷商の一斉捕縛の件だった。
なんでも、奴隷商に潜入していた騎士仲間の胸に、黒々とした奴隷紋が刻まれてしまっているとの事だった。
しかも、助け出された時には酷い拷問を受けた状態で意識がなく、すぐ様治癒師のもとに連れて行ったらしい。
しかし、どれだけ傷は癒せても治癒師に奴隷紋の解除は難しく、そう簡単に消せるものではなかったのだ。
潜入させた部下の肌に残された、鞭の後は綺麗に消えても、あの忌々しい奴隷紋はかけた本人にしか消せない。しかし、それをかけた奴隷商のオーナーは、騎士団が乗り込んだ時には既に逃亡していたのだ。
その場にいる誰もが、悔しそうな顔を見せた。
今回、違法な取引を行なっていた奴隷商を捕まえられたのは、間違いなく潜入していた彼のお陰なのだから。
奴隷紋は、古くからある魔術の一種である。
今尚、使われている魔術種類の中では1番古いとされている。基本的に魔術は、かけた人間よりも魔力量や実力が勝れば簡単に解除することができるのだが、奴隷紋だけは複雑な契約魔術も含まれている為、解除は非常に難しいのだ。その為、時が経つに連れ奴隷紋だけは、かけた人間にしか解除出来ないと伝えられてきたのだ。
しかし、それは世界有数の魔術大国と呼ばれているディート王国の魔塔こと【魔術師研究管理塔】に所属しているシェイラにとっては、取るに足りないことだった。
だから、言ったのだ。
皆んなを助け出してくれたお礼を兼ねて…
そう、私は知らなかったのだよ…
アルトニア王国の常識では、一度つけられた奴隷紋を消すのは普通の魔術士には無理だってことを…
それを、目の前で最も簡単に消してしまうとは…
うん、浅はかだったよね。
アルトニアの騎士団により、奴隷とされた一人一人が身元を確認される中、隣国から連れてこられ競売にかけられていた、シェイラと子供達は隣国で身元を特定できるものなど何ひとつなかった。その為、他の人達とは違いその場で解放とはされず、一度アルトニアの首都にある騎士団本部へと向かうこととなった。
「大変だったでしょう。とりあえず、今日はゆっくりと身体を休めてください。」
幸いにも、オークション会場とされていた場所は首都からそれ程遠くなかった為、すぐさま騎士団の宿舎へと案内されたシェイラ達は早々に休む事ができた。
子供達が、シェイラと離れたくないと言い張った為、大きめの部屋に11人で寄せ合って眠る事になる。疲れ切っていたのだろう、子供達は安全が保証されるや否や、すぐに寝息を立て始めた。
しばらく子供達の寝顔を眺めたのち、シェイラもゆっくりと目を閉じた。
翌日、改めて騎士団より聴取を受けたシェイラは攫われてからの様子を細かく説明した。
話を聞いた騎士は、困った様子で騎士団長の元へと報告に向かった。
それから、しばらくすると先程の騎士が騎士団長と副団長を連れて戻ってきた。
そして、まず子供達に関しては親がいる子は親元へ帰し、孤児院から拐われてきた子達に関しては、元の場所へ戻るかアルトニア王国の孤児院に入るかとの選択肢が課せられた。子供達が、それぞれの境遇にあった選択をしているうちに、騎士の1人が慌てた様子で部屋に乗り込んできた。
「団長!!!お取込み中のところ、申し訳ございませんっ!」
「どうした?」
入ってきた騎士は、すぐさま団長と呼んだ人物の元に駆け寄ると、耳元でボソボソと話をはじめた。そして、話を聞いていた団長と副団長の顔が強張っていき、急いで部屋を出て行ってしまった。
只事ではないと感じたシェイラは、すぐさま周囲に気づかれないように増幅魔術を展開した。こうする事で、少し遠くにいる人の会話を、まるで自分に話しているかのように聞こえる様にすることができるのだ。
そうやって、聞いた内容は昨日の奴隷商の一斉捕縛の件だった。
なんでも、奴隷商に潜入していた騎士仲間の胸に、黒々とした奴隷紋が刻まれてしまっているとの事だった。
しかも、助け出された時には酷い拷問を受けた状態で意識がなく、すぐ様治癒師のもとに連れて行ったらしい。
しかし、どれだけ傷は癒せても治癒師に奴隷紋の解除は難しく、そう簡単に消せるものではなかったのだ。
潜入させた部下の肌に残された、鞭の後は綺麗に消えても、あの忌々しい奴隷紋はかけた本人にしか消せない。しかし、それをかけた奴隷商のオーナーは、騎士団が乗り込んだ時には既に逃亡していたのだ。
その場にいる誰もが、悔しそうな顔を見せた。
今回、違法な取引を行なっていた奴隷商を捕まえられたのは、間違いなく潜入していた彼のお陰なのだから。
奴隷紋は、古くからある魔術の一種である。
今尚、使われている魔術種類の中では1番古いとされている。基本的に魔術は、かけた人間よりも魔力量や実力が勝れば簡単に解除することができるのだが、奴隷紋だけは複雑な契約魔術も含まれている為、解除は非常に難しいのだ。その為、時が経つに連れ奴隷紋だけは、かけた人間にしか解除出来ないと伝えられてきたのだ。
しかし、それは世界有数の魔術大国と呼ばれているディート王国の魔塔こと【魔術師研究管理塔】に所属しているシェイラにとっては、取るに足りないことだった。
だから、言ったのだ。
皆んなを助け出してくれたお礼を兼ねて…
そう、私は知らなかったのだよ…
アルトニア王国の常識では、一度つけられた奴隷紋を消すのは普通の魔術士には無理だってことを…
それを、目の前で最も簡単に消してしまうとは…
うん、浅はかだったよね。
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