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ロンのお気に入り?
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それは、シュゼット擬きを取り押さえてから一時間後…。王宮の影が来る少し前。
屋敷に王宮から火急の知らせが届いた。
レイモンドは慌てて、王宮に向かった。
「ねえ、あのシュゼット擬きはどうするの?」
「そんなのは後だ。それよりも大変な事が起きた。俺は王宮に向かうから後は好きにしてくれ」
その言葉を素直に受け取ったわたしは、レイモンドを見送ると、屋敷の中のある場所に向かった。
それは言わずと知れたシュゼット擬きが監禁されている部屋だ。
「おじょ…奥様。悪い顔をされていますよ」
「そーお…」
クスリと嗤う顔は赤毛で釣り目のわたしはまるで悪女のようだろう。
確かにわたしは悪巧みをしている。
わたしが部屋に入ると見張りの騎士達が一斉に頭を下げる。
なんだか女王様になった様な気分だ。
「この者を尋問します」
「それは、公爵様の許可を得ているんでしょうか?」
「勿論よ。好きにしていいと言われたの」
「ならば…我々が…」
「いいえ、わたしたちは只眺めていればいいのよ。後は彼がやってくれるわ」
そう言ってほくそ笑むと騎士達は顔を引き攣らせていた。
アリスが言うにはニタリと魔女笑いにしか見えなかったそうだ。
そして始まったのが…。
「ぎゃああああああーーーだずけてーーーーっ」
けたたましい雄叫びを上げながら、全速力で何か?から逃げているのは、シュゼット擬き。
それを嬉しそうに追いかけているのは、ロンなのだ。
シュゼット擬きの身体に大きな釣り糸に布で作った鼠をいくつもぶら下げた。シュゼット擬きが動くたびにその鼠も動く。それに反応してロンも動く。
走れば走る程、ロンの興味を引いて、まさにシュゼット擬きにとっては地獄だが、遊んでくれていると思っているロンにっては天国のような時間。
最後には力尽きたシュゼッ擬きが、ロンに頭を甘噛みされている。
その壮絶な光景を目にした使用人達は恐怖した。
『奥様を怒らせると、ロンが来る』と謎の言葉を胸に彼らは、わたしの僕?になったのだ。
その後、使用人達は誰もわたしに逆らわなくなった。
シュゼット擬きのお仕置きがすんだ所で、
「ねえ、話す気になったかしら?それとももう少し遊んでいく?」
ロンの涎と自分の涙と鼻水でどろどろの顔のシュゼット擬きは、自分の生い立ちから喋り出した。
話の内容を要約するとこうだ。
シュゼットと彼は双子の兄妹で、彼の名はソルトという。
飲んだくれの父親と離婚した母親に引き取られて隣国に住んでいたのだが、母親が病気になり、父親に支援を頼んだ。
父親も当時の事を反省したのか、援助をしてくれるようになった。
その内、母親が回復したら復縁しようと約束をした矢先、母親は亡くなり、父親も死んでしまった。
そんな時に宰相の使いという者が現れて、双子の妹が公爵家に囚われていると言われ、この国に一緒に来た。
そして、近辺の巡回騎士がシュゼットと親しいと聞いて、協力をして貰い入れ替わった。
「なら、あなたは父親が何をしていたかも知らないし、宰相の事も知らないの?」
「俺は、知らない…でも…シュゼットがこれが終われば公爵夫人になれると言っていたんだ」
「公爵夫人に…?」
「そうだ。入れ替わる時にそう言っていた。それに紙切れの様なものを眺めながらニヤニヤしていた」
「その紙切れに何か書いてあったの?」
「日時が書いてあったと思う」
あの紙切れはやっぱりシュゼットの物で、シュゼットは宰相と繋がっている。
この擬きは事情を知らない。これは行き詰ったわね。
「ねえ、他には何か聞いていないの?」
「なかった…あっ、まてよ。そう言えば今日、何かを決行するから、屋敷から出るなと言われたな。それが終わったら、明日入れ替わる予定になってたんだ」
「そう、なら、あなたはこのまま、ここで大人しくしていなさいよ。これ以上シュゼットに罪を犯させない為にもそうすべきね」
「罪…?」
「そうよ。公爵夫人にはなれないわ。わたしが公爵夫人だからね」
「じゃあ、あいつとんでもない事に巻き込まれているんじゃあ…」
「どっちにしても大人しくしてなさいよ!さもないと…」
わたしは後ろで呑気に眠っているロンを見た。擬きはわたしの言わんとした事を理解した様で「大人しくしています」と小さく頷いた。
悪巧みに巻き込まれたのか、自ら飛び込んだのかは分からないが、シュゼットが罪を犯したのなら、何れ償わなければならない。
そう考えながら部屋を後にした。
部屋から出ると、王家の影が待っていてレイモンドからの伝言を聞いた。
「王太子殿下一家が行方不明です。夫人は大人しく屋敷で待っているようにとの言伝を預かりました。それと偽シュゼットは王宮にてお預かりします」
「でも、さっき話を聞いたけれど、特に知っていることはなかったわよ」
「それでも関係している以上は、放って置くわけにはいけません。引渡しをお願いします」
「王家の命には従います。でも約束してちょうだい。何も知らない彼に酷い事をしないと…」
「出来るだけの配慮はいたします」
「なら、良かったわ」
わたしは影と話を付けて、シュゼット擬きを引き渡した。
ロンはお気に入りのおもちゃを取られて項垂れてしょげている。
ロンの頭を撫でながら、わたしはレイモンドの帰りを待っていた。
屋敷に王宮から火急の知らせが届いた。
レイモンドは慌てて、王宮に向かった。
「ねえ、あのシュゼット擬きはどうするの?」
「そんなのは後だ。それよりも大変な事が起きた。俺は王宮に向かうから後は好きにしてくれ」
その言葉を素直に受け取ったわたしは、レイモンドを見送ると、屋敷の中のある場所に向かった。
それは言わずと知れたシュゼット擬きが監禁されている部屋だ。
「おじょ…奥様。悪い顔をされていますよ」
「そーお…」
クスリと嗤う顔は赤毛で釣り目のわたしはまるで悪女のようだろう。
確かにわたしは悪巧みをしている。
わたしが部屋に入ると見張りの騎士達が一斉に頭を下げる。
なんだか女王様になった様な気分だ。
「この者を尋問します」
「それは、公爵様の許可を得ているんでしょうか?」
「勿論よ。好きにしていいと言われたの」
「ならば…我々が…」
「いいえ、わたしたちは只眺めていればいいのよ。後は彼がやってくれるわ」
そう言ってほくそ笑むと騎士達は顔を引き攣らせていた。
アリスが言うにはニタリと魔女笑いにしか見えなかったそうだ。
そして始まったのが…。
「ぎゃああああああーーーだずけてーーーーっ」
けたたましい雄叫びを上げながら、全速力で何か?から逃げているのは、シュゼット擬き。
それを嬉しそうに追いかけているのは、ロンなのだ。
シュゼット擬きの身体に大きな釣り糸に布で作った鼠をいくつもぶら下げた。シュゼット擬きが動くたびにその鼠も動く。それに反応してロンも動く。
走れば走る程、ロンの興味を引いて、まさにシュゼット擬きにとっては地獄だが、遊んでくれていると思っているロンにっては天国のような時間。
最後には力尽きたシュゼッ擬きが、ロンに頭を甘噛みされている。
その壮絶な光景を目にした使用人達は恐怖した。
『奥様を怒らせると、ロンが来る』と謎の言葉を胸に彼らは、わたしの僕?になったのだ。
その後、使用人達は誰もわたしに逆らわなくなった。
シュゼット擬きのお仕置きがすんだ所で、
「ねえ、話す気になったかしら?それとももう少し遊んでいく?」
ロンの涎と自分の涙と鼻水でどろどろの顔のシュゼット擬きは、自分の生い立ちから喋り出した。
話の内容を要約するとこうだ。
シュゼットと彼は双子の兄妹で、彼の名はソルトという。
飲んだくれの父親と離婚した母親に引き取られて隣国に住んでいたのだが、母親が病気になり、父親に支援を頼んだ。
父親も当時の事を反省したのか、援助をしてくれるようになった。
その内、母親が回復したら復縁しようと約束をした矢先、母親は亡くなり、父親も死んでしまった。
そんな時に宰相の使いという者が現れて、双子の妹が公爵家に囚われていると言われ、この国に一緒に来た。
そして、近辺の巡回騎士がシュゼットと親しいと聞いて、協力をして貰い入れ替わった。
「なら、あなたは父親が何をしていたかも知らないし、宰相の事も知らないの?」
「俺は、知らない…でも…シュゼットがこれが終われば公爵夫人になれると言っていたんだ」
「公爵夫人に…?」
「そうだ。入れ替わる時にそう言っていた。それに紙切れの様なものを眺めながらニヤニヤしていた」
「その紙切れに何か書いてあったの?」
「日時が書いてあったと思う」
あの紙切れはやっぱりシュゼットの物で、シュゼットは宰相と繋がっている。
この擬きは事情を知らない。これは行き詰ったわね。
「ねえ、他には何か聞いていないの?」
「なかった…あっ、まてよ。そう言えば今日、何かを決行するから、屋敷から出るなと言われたな。それが終わったら、明日入れ替わる予定になってたんだ」
「そう、なら、あなたはこのまま、ここで大人しくしていなさいよ。これ以上シュゼットに罪を犯させない為にもそうすべきね」
「罪…?」
「そうよ。公爵夫人にはなれないわ。わたしが公爵夫人だからね」
「じゃあ、あいつとんでもない事に巻き込まれているんじゃあ…」
「どっちにしても大人しくしてなさいよ!さもないと…」
わたしは後ろで呑気に眠っているロンを見た。擬きはわたしの言わんとした事を理解した様で「大人しくしています」と小さく頷いた。
悪巧みに巻き込まれたのか、自ら飛び込んだのかは分からないが、シュゼットが罪を犯したのなら、何れ償わなければならない。
そう考えながら部屋を後にした。
部屋から出ると、王家の影が待っていてレイモンドからの伝言を聞いた。
「王太子殿下一家が行方不明です。夫人は大人しく屋敷で待っているようにとの言伝を預かりました。それと偽シュゼットは王宮にてお預かりします」
「でも、さっき話を聞いたけれど、特に知っていることはなかったわよ」
「それでも関係している以上は、放って置くわけにはいけません。引渡しをお願いします」
「王家の命には従います。でも約束してちょうだい。何も知らない彼に酷い事をしないと…」
「出来るだけの配慮はいたします」
「なら、良かったわ」
わたしは影と話を付けて、シュゼット擬きを引き渡した。
ロンはお気に入りのおもちゃを取られて項垂れてしょげている。
ロンの頭を撫でながら、わたしはレイモンドの帰りを待っていた。
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