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断罪 4〈静流side〉

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「弁解の余地もありません…」

 しばらく沈黙が続いた後、最初に発せられた言葉は謝罪の言葉だった。
 護が膝の上で拳を握り締める。よほど力を入れているのだろう、拳は白くなり少し震えているようにも見える。
「光流君に会えますか?」
 謝罪させてほしい、そう続けるが反省したからと言って光流に会わせるわけがない。そもそも光流に会わせられる状態ではない。

「前提として挑発フェロモンを纏っている相手と会わせるつもりはない」
 期待を持たせるつもりはない。

「光流な、寝込む度に痩せていくんだ。
 お前と一緒にいた頃着ては服は処分したよ。サイズが合わなくて着られなくなったんだ。
 ボトムはベルトをしないと落ちるし、Tシャツは肩が出る。スーツはラインが変ってしまって作り直しだ。
 それに、今は眠り続けてる」
 その言葉に2人は顔を上げる。

「光流は休ませてるって言っただろ?
 主治医に診てもらったが、急激なストレスによりヒートが早まったとの事だ。諸々の検査もしてもらったが多少の数値の乱れしか確認できない。
 ただ今日起きるのか、明日起きるのか…。
 前回が5日だったからそれ以上になるなら入院を勧められたよ」
 光流の現状を知った2人が息を飲む。

「大丈夫なのですか?」
 護の絞り出すような声。一応まだ心配する気持ちはあるようだ。
「前回は大丈夫だった。
 でも前回大丈夫だったから今回も大丈夫とは断言できない、そう言われたよ」
「そんな…」

「そもそもこの婚約はどちらかに継続の意思がなくなった場合、速やかに解消すると決めてあったはずだが…光流より大切にしたい相手ができたなら何故そう言わなかった?」
 1番聞きたかったことを口にすると護は不思議そうな顔をした。
「そんな話は知らない」
「親から聞いてないのか?」
 父親に冷ややかな視線を向けるとゴニョゴニョと何か言おうとするが要領を得ないため話を続ける。

「小学生の頃からお前を縛りつけたようなものだ。恋愛感情なんて知らない小学生が〈婚約者〉と言われて物珍しさで受け入れたとしても、思春期を過ぎれば気持ちも変化する。特に光流は男性Ωだ。異性に惹かれた場合に強要してまで婚約の継続は望んでいなかった。
 お前と光流はちゃんと関係を築いていたようだが〈婚約者〉の存在を示すことによって光流の安全を確保する事が最優先事項だったんだよ」
 父親にチラリと視線を向けると顔面蒼白になっている。彼の独断で護には伝えられなかったのかもしれない。護に対する同情の余地はあるが、それでも彼のした行為を許すわけにはいかない。

「光流はちゃんと理解していたよ。
 この先、新しい出会いの中でお前が可愛い女の子と恋に落ちるかもしれない。自分は男性Ωだからその時はどうすることもできないだろうって。
 ヒートを一緒に過ごしてしまえばお前を縛り付けることになる。だから結婚が決まるまでは一緒にヒートは過ごさない。
 それでも自分を選んでくれた時に、その時に護にとって有用で在り続けるために学びを続けると」

 オレの言葉だけが続く。
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