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幼さの罪

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 紬さんからのメッセージが嬉しくてつい頬が緩むが、そろそろ勉強を始めないと…と流石に反省する。時計を見ればとっくに9時を過ぎている。
 静流君のまとめてくれた資料はわかりやすく、これだけ見ておくだけでまず問題はないが、それでも静流君の資料以上の成績を取りたくてテキストや自分のノートとも照らし合わせる。
 大抵、自分のノートの不備に気づき落ち込むのだがそれも勉強だ。

 時折休憩を挟みながら勉強を続ける。集中力が途切れてきたと思った時には1度机から離れ、スマホを触ったり、昨日譲ってもらったストールの感触を楽しんだりして休憩をする。ガーゼの触り心地は思いのほか良いのだ。

 あまりにも触り心地が良いため冬場は寒いかな?と思いつつガーゼの寝具がないか検索してみる。よく考えたら寝具にこだわるようになってからも〈誰か〉に自分の好みを伝え、探してきれくれたものの中から好きな素材や色・模様を選んでいて、自分で探したことはなかったはずだ。
 今の時代、パソコンでもスマホでも指先ひとつでなんでも調べることが出来るのに、僕はそれすらしてなかったことに気づいてしまった…。

 今まで感受してきたことが当たり前ではないことに気づく。そして、自分の幼さに気づく。
 その幼さは〈子供っぽい〉幼さではなく、〈物を知らない〉という幼さ。
 考えれば自分の周りには常に誰かがいて、僕が臨めば直ぐに手を伸ばしてくれる存在があった。それは〈Ω〉だからと言うだけではないだろう。
 一言〈自分でやってみたい〉と言う勇気と、それをやってみせる行動力。それが無かったため、常に誰かが僕の周りにいる必要があったのだ。
 いつもグズグズと考え過ぎてやらずに過ぎていった事がどれだけ沢山あるのだろう…。

 それはきっと、自分のそばに常にあった事実。手を伸ばせば掴めていたかもしれない未来。

 僕は依存することで、甘えることで、多くのことを失ってきたのかもしれない。

 どうしても思考がマイナス寄りになるのはいつもの事だ。いつの頃からか、直ぐに諦める癖がついてしまった。
 …いつの頃からかなんて、本当はいつからかはっきりわかっていながら認めたくないだけだ。それを認めたら何かが変わるのだろうか?

 つらつらと考えながら指を動かす。
〈ガーゼ 寝具〉
〈ガーゼ カバー〉
 検索ワードを変えながら試してみるが、思った以上に出てくるそれらの品に何が良いのかが全く分からない。値段も驚くほど高いものもあれば、驚くほど安いものもある。基準がわからないためどれを選べば良いのかすらわからない。

 お手上げだ…。

 コンコン

 そんな事をしていると部屋のドアがノックされる。
「光流、ご飯だって」
 どうやら賢志が昼食の誘いに来てくれたらしい。
「今行く」
 僕はスマホを閉じて部屋を出るのだった。
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