月は蒼き島に落ちる
延波島――若者が次々と島を離れていく、小さな離島。
島を出たい者は、反対される。
島に残りたい者は、出ることを期待される。
高校二年の遠海嶼言は、その「遠海神社」に囚われた少年だった。
ある日、教室の机の上に見知らぬガラス瓶が置かれていた。中には、海水。
放課後、その瓶の持ち主が嶼言の前に現れる。
蒼島汐鳴――毎晩、月が海に沈む瞬間に、小さなガラス瓶で海水を汲む少女。
「返して……」「……ああ。」
それが、二人の最初の会話だった。
汐鳴は毎日、月沈みの浜辺に立つ。瓶を海に沈め、月を閉じ込める。なぜ、そんなことをするのか。誰も知らない。嶼言も、聞かない。
けれど――彼女が汲む海水は、少しずつ、何かを失っていることに、嶼言は気づいてしまう。
月が海に沈むとき、海水はその瞬間を覚える。
けれど、覚えている者がいなくなれば、海は――忘れる。
「ずっと、君のそばにいる。たとえ千度万度、君が記憶を忘れても――そのたびに僕が、僕たちの物語を語り直すから。」
島を出たい者は、反対される。
島に残りたい者は、出ることを期待される。
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「返して……」「……ああ。」
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けれど――彼女が汲む海水は、少しずつ、何かを失っていることに、嶼言は気づいてしまう。
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