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初めて会った日に、ドルシーさんへ口調のことについて聞いた日を覚えている。
こちらは侯爵令嬢、あちらは男爵の庶子で、身分の差は歴然としている。

でも、返ってきた答えは「堅苦しいのって苦手なの!さん付けで呼んでちょうだい、私もそうするわ!」でした。
そういう事を言ってるんじゃないんですけどね……

リュート様にそれとなく言ってみても、

「ドルシーは……その、礼儀作法とか、苦手みたいで……勉強しようとしても熱が出ちゃうだろ?」

だろ?と言われましても。というような答えが返ってくるだけ。
その割には、寝込んだところなんて一度も……ああ、ありましたね。

たまに私が体を休めよう、と休日を作った日。
気晴らしに市街地にでも行こうと計画を立てていると、リュート様も「一緒に行こう!」と言ってきました。
この時はまだ、婚約者としての義務……という気持ちもありましたし。

「そうしましょう……でも、ちなみに、誰と一緒に、ですか?」

リュート様はきょとんとしました。

「それはもちろん、リオンとだよ!当り前じゃないか……」

そういって笑顔になるリュート様を見ると、少し気分が解れたのですが……

休日の朝。
さあ、出かけようと言うとき……ドルシーさんが、熱を出したようでした。


ドルシーさんの部屋に、リュート様が入っていきます。
私は顔を出しづらくて、扉の陰から二人の声だけを聞いていました。

「ごほっ、ごほ……ごめんなさい……リュート、出かける予定だったのに……」

「いいんだ、そんなのいつでも行けるだろ?僕にとってはドルシーの方が大事だからね……」

「うれしい……いつもみたいに、手を握ってくれる……?」

「ああ、元気になるまで側にいるからね……」


……そっと私は、その場を離れて、仕事部屋に行きました。
そして、その日も一日、仕事をすることにしたのでした。
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