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当事者④
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あの時、というのはいつのことだ?リチャードはそんなことを考えながら夢の中にいた。リチャードを取り囲む人の中には多分あのアーサーがおり、忙しく人に何かを告げている。リチャードは高いところにいて、そのことを聞いていた。
はて?自分の身体はそこにあるというのに、これはどういう現象だろう。
悩んでいる間にも場面は変わる。アーサーの声が頭に響くように聞こえるようになって、気がつけば自分の意識は身体に戻っていた。
「目が覚めましたか。」
リチャードを覗き込んでいたのはアーサー殿ではなく、アルマ嬢だった。
「アルマ嬢。今アーサー殿が……」
何を話すつもりで口を開けたのかさっぱりわからない。だが、意図を汲み取りアルマ嬢は経緯を話してくれた。
突然倒れたリチャードを運んでくれたのはアーサー殿でアルマ嬢が来るまで付き添ってくれたのも彼らしい。
彼が倒れ方を見ていて、とても心配していたとアルマ嬢は言った。
「大丈夫ですか?持病とかありました?一応医師は呼んでいるので診て貰いましょう。」
入ってきた医師は初対面だと言うのに、何故か既視感があって、その所為なのかまた気持ち悪くなり、診察は早々に切り上げてもらった。促されるままに目を瞑れば、すぐに寝入ってしまう。リチャードの意識はまたもや自分の身体を離れふわふわと浮き上がった。
次にリチャードが気がついたのは、近くでアルマ嬢が話している声。やはりその場にはアーサー殿がいて、あとは聞いたことのない男性の渋い声がする。アルマ嬢の口調から親しみが感じられ、リチャードは不思議な感覚に囚われた。
『やっぱり何か後遺症があるんだわ。今までにない状況だもの。』
『いや、決めつけるのはまだ早い。何らかの攻撃によるものかも知れないだろ。』
『でも、これまでにはこんなことなかった。』
『だって、これまでとはそもそも全てが違うだろう。心配を誤認の原因にしてはいけない。』
アルマ嬢が何か思い詰めたような口調で、それを宥める謎の声。アーサー殿は冷静に二人の話に耳を傾け、話す様子で三人はリチャードが入れる間もないほどシリアスな様子で話を続けていた。
リチャードはそれを高いところからまた見て、聞いている。先程と違うのは、それからずっと彼らを見続けていたが、一向に身体に戻ることはなかったことと、三人とは別の空間に投げ出されたことを本能的に当然だと自分が理解していることだ。
リチャードは何が現実で、何が夢で何が今行われているか、を深いところではちゃんとわかっているのに、何も考えられなくなっているような状態になっていた。
まるで誰かの意思によって、頭の中を制限されているかのような感覚に、それこそが気持ち悪さの原因なのではないか、とリチャードは考え始めていた。
はて?自分の身体はそこにあるというのに、これはどういう現象だろう。
悩んでいる間にも場面は変わる。アーサーの声が頭に響くように聞こえるようになって、気がつけば自分の意識は身体に戻っていた。
「目が覚めましたか。」
リチャードを覗き込んでいたのはアーサー殿ではなく、アルマ嬢だった。
「アルマ嬢。今アーサー殿が……」
何を話すつもりで口を開けたのかさっぱりわからない。だが、意図を汲み取りアルマ嬢は経緯を話してくれた。
突然倒れたリチャードを運んでくれたのはアーサー殿でアルマ嬢が来るまで付き添ってくれたのも彼らしい。
彼が倒れ方を見ていて、とても心配していたとアルマ嬢は言った。
「大丈夫ですか?持病とかありました?一応医師は呼んでいるので診て貰いましょう。」
入ってきた医師は初対面だと言うのに、何故か既視感があって、その所為なのかまた気持ち悪くなり、診察は早々に切り上げてもらった。促されるままに目を瞑れば、すぐに寝入ってしまう。リチャードの意識はまたもや自分の身体を離れふわふわと浮き上がった。
次にリチャードが気がついたのは、近くでアルマ嬢が話している声。やはりその場にはアーサー殿がいて、あとは聞いたことのない男性の渋い声がする。アルマ嬢の口調から親しみが感じられ、リチャードは不思議な感覚に囚われた。
『やっぱり何か後遺症があるんだわ。今までにない状況だもの。』
『いや、決めつけるのはまだ早い。何らかの攻撃によるものかも知れないだろ。』
『でも、これまでにはこんなことなかった。』
『だって、これまでとはそもそも全てが違うだろう。心配を誤認の原因にしてはいけない。』
アルマ嬢が何か思い詰めたような口調で、それを宥める謎の声。アーサー殿は冷静に二人の話に耳を傾け、話す様子で三人はリチャードが入れる間もないほどシリアスな様子で話を続けていた。
リチャードはそれを高いところからまた見て、聞いている。先程と違うのは、それからずっと彼らを見続けていたが、一向に身体に戻ることはなかったことと、三人とは別の空間に投げ出されたことを本能的に当然だと自分が理解していることだ。
リチャードは何が現実で、何が夢で何が今行われているか、を深いところではちゃんとわかっているのに、何も考えられなくなっているような状態になっていた。
まるで誰かの意思によって、頭の中を制限されているかのような感覚に、それこそが気持ち悪さの原因なのではないか、とリチャードは考え始めていた。
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