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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?

第13話 実技試験(魔術)

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魔術の実技試験会場に移動すると五十人前後の生徒が実技試験を受けに来ていた。

あれっ、思ったより魔術系スキル持ちがいるのね?

魔術系スキルを取得できる割合は少ないと言われている。稀に生まれながら魔術系スキルを持っていることもあるがけど、それは本当に珍しい。成人までに魔術系スキルを取得できる人も限られているのだ。

さすがは貴族家の人間ということかしら?

魔術系スキルを取得するためには知識や訓練が必要となる。取得できるか分からないのに、時間や労力をかけて魔術系スキルの勉強や訓練など平民はしないだろう。

「まずは順番に使える生活魔法を見せてもらいます!」

試験官らしい人が大きな声で話した。

生活魔術スキルは誰もが成人するまでに取得するスキルだ。

 生活魔術:生活を便利にするスキル。そこに含まれる魔法は生活魔法と呼ばれる。
 タイム(時)
 ウォーター(水)、ファイア(火)
 ホール(土)、ブロウ(風)
 スリープ(闇)、ライト(光)
 クリア(聖)
 ルーム(空間)

生活魔術スキルのレベルによって使える魔法は限られてくる。テンマ先生はそれぞれの生活魔法には属性があり、その生活魔法のレベルを上げると、その属性の魔術スキルを取得できると教えてくれた。

タイムのレベルを上げると時魔術スキルを取得でき、ウォーターは水魔術スキル、ファイアは火魔術スキル、それ以外も同じように取得できる。
もちろん素質によって取得難易度が違ってくるみたいだけど、そのことは一般的に知られておらず、テンマ先生独自の知識となる。

一般的にはスキルや魔法にもレベルが存在することも半年前まで知られていなかった。テックスとしてテンマ先生が『知識の部屋』に登録したことで知られるようになったのだ。
その知識も閲覧した人間も限られている。スキルや魔法のレベルは貴族カードやギルドカードには表示されない。だからテンマ先生の知識はそれほど広まっていない。

テンマ先生の魔道具なら確認できるのにねぇ~。

私はテンマ先生の生徒として指輪型の魔道具を貰っている。その魔道具はステータスの詳細を表示でき収納や念話を使えるのだ。そしてテンマ先生の作ったロンダにある研修施設には、ステータスを確認できるような魔道具が揃えられている。

生徒は三列に並んで試験官に生活魔術の魔法を見せるみたいだ。私は目立たないように列の最後尾に並んだ。

驚いたことにシャルロッテ王女達も魔術の実技試験に来ていた。王女達は先頭で試験官たちに生活魔法を使って見せていた。
貴族だと生活魔法は使用人が使ってくれるので、上位の貴族ほど使えない場合が多いと聞いていた。だから王女達の三人共がライトの生活魔法まで使えることに私は驚いた。

試験を受けにきた生徒はファイアまでは全員が使えたようだ。少数ながらクリアが使える生徒もいて、それを見て驚く生徒が多くいた。

ちょっとぉ、目立ちまくっているじゃないのぉ~!

目立たないように列の最後に並んだのに、私が最後になったことで全員の注目を浴びてしまった。大半が私のレベル一桁だと知っているのか、軽蔑するような視線で見つめる生徒も多かった。

「無理しないでね。魔力が枯渇すると命に関わるからね」

私がレベル一桁だと試験官も知っているみたいね……。

心配するような様子で試験官が声をかけてきた。

説明するのも面倒なのでクリアまで一気に魔法を使って見せる。
私は魔力枯渇させるために毎日のように生活魔法を使ってきた。ここにいる誰よりも生活魔法を使い慣れている。

「えっ、嘘!」

どういうことよぉーーー!

試験官が驚いたように声を出していた。試験官もレベル一桁だと知っていて、私のことを侮っていたようだ。

私がジト目で試験官を睨むと、慌てたように私から目を逸らし手元の紙に試験結果を書き込んでいた。

「魔術系スキルを使える人はこちらに集まってください!」

えっ、全員じゃないの!

私はてっきり全員が魔術系スキルを使える思っていた。よく考えてみると学園で魔術系スキルの取得を考えていたとしても不思議ではないと気付いた。それほど魔術系スキル持ちは少ないのだ。

それでも十数人の生徒が呼ばれたほうに集まった。私もそちらに行くと試験官も含めてほとんど全員が驚いたような顔をしていた。

試験官も驚いた顔で固まっていたので、またジト目で睨みつける。私に睨まれて試験官は焦ったように説明を始めた。
攻撃系の魔術系スキルを使える人は的に向かって魔法を放つようだ。聖魔術のような攻撃系でない魔術は使ってみせるようだ。

王女の従者たちは魔術系スキルを持っていないようで見学している。王女は聖魔術と光魔術が使えるようで、試験官に攻撃系以外の魔術を使って見せていた。

私はまだ魔術系のスキルは火魔術スキルしかまともに使えない。他の属性の魔術系スキルも取得していたが、中級魔法を使えるようになるまでは魔術系スキルを順番に研修するようにと、テンマ先生からの教本に書かれていたからだ。

火魔術スキルもまともに練習したのは王都に到着してからだから、ようやくファイアボールの魔法がlv2になったばかりだ。それでも私は魔力量が多いので、レベルの上りは早かったと思う。

攻撃系の魔術系スキルを使える人は私を含めて六人しかいなかった。的に向かって三回まで魔法を放つように試験官に指示される。

最初に王女がライトボールを的に向け放ち、すぐに同じライトボールを放った。そして三回目にはライトアローを放った。
ライトアローの魔法も光魔術スキルの初級魔法である。それでも学園に入学した時点でそこまで使えるのは珍しいのか、試験会場にどよめきが広がった。

そして他の生徒はボール系の魔法を放っていた。私の順番になると試験官から忠告される。

「無理をしないでね。知らないかもしれないけど、魔力を枯渇すると命の危険もあるのよ」

何度も念を押すなぁーーー!

最近では魔力量が多すぎて回復するまでに時間がかかるので、魔力を枯渇するのは数日に一回にしかできない。それでもここにいる誰よりも魔力枯渇を経験しているはずだ。

魔力枯渇のことなら誰よりも知っているのよ!

軽毒や軽麻痺状態で魔力枯渇を何度もして、女の子として人には見せられないような醜態もテンマ先生には見られてきたのだ。

「大丈夫ですわ」

私はそう言うと的に向かってファイアボールを三回連続で放った。まだ細かな制御に不安もあったが、問題なく三回とも的に当てることができた。

試験官が露骨にホッとしたような表情を見せたので、またジト目で睨んであげたわ。




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