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番外編① アーリンの残念なチート物語 学園入学?

第23話 冒険者!?

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王妃様に挨拶するのだから着替えをしようとしたけど、お母様は着替える必要はないと言っていたみたいで、クリアだけして急いで応接室に向かう。

迎賓館の入口には特別騎士団の騎士が護衛に立っており、中に入るとすぐに応接室に向かった。

応接室の前にも護衛がいたけど、何人かはすでに私のことを知っているようで、特に止められることもなく応接室に入る。

応接室には見覚えのあるシャルロッテ王女と従者の二人もいた。そして優しい微笑みを湛えている女性がいた。その女性はシャルロッテ王女に似ており、高貴な気品と風格に溢れていた。

「初めて拝謁させていただきます。ロンダ准男爵家のアーリンです」

訓練用の服装なのでスカートではなくパンツ姿だったが、スカートの端を持つような仕草をして挨拶する。

「ドロテア先生が自慢していたお嬢さんにようやく会えたわ。娘のシャルロッテと仲良くしてくださいね」

まるで包み込むような優しい笑顔で王妃様は話しかけてくれた。

勘弁してぇ~、下級貴族の私が王女様と仲良くなんかできるはずないよぉ~。

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

それでもそう答えるのが精一杯だったのに、そんな私の返事をシャルロッテ王女は驚くほど真剣な表情で聞いている。

私はこの後どうすれば良いのか戸惑っていると、王妃様が話を続ける。

「学園のことではあなたに迷惑を掛けているみたいね。すぐにでも対処したいところなのですが、学園長を含む教師たちの大半が元老院派閥のようで、今年の元老院議会で彼らの派閥が何やら画策しているようなの。すでに彼らの企みも判明していて、対処は問題ないのだけど、学園のことは後でまとめて対処するつもりなの。あなたには辛い思いをさせて申し訳ありませんけど、もう少しだけ持って下さいね」

な、なんか話が大きくなってるぅ~!

私とは関係なく政治的な問題になっているみたい。
ここ数日の訓練で、私は学園で特に学ぶことは無いのではと思い始めていた。まずは基礎を繰り返し続けることのほうが重要で、新たな知識や技術を慌てて学ぶ必要がないと気付いたのだ。

「いえ、特に辛い思いはしていません」

それどころか学園のことは政治的な解決ではなく、魔術師として私の実力を見せつけてやりたいとすら考えている。

「うふふふ、あなたはドロテア先生に似ているようね。その顔つきは自分で解決したいと思っているのかしら?」

えっ、顔に出てたかしら!?

「い、いえ……」

「残念そうな顔をしておきながら、まるで自分の力で解決するから気にしないでほしいと顔に出てますよ。性格までドロテア先生と似ているのねぇ。ホホホホ」

み、見透かされてるぅ~。

大叔母様ドロテアと似ていると言われるのは嬉しいけど……。

「とりあえず基本となる訓練を一人だけでするつもりです……」

それだけ答えるしかできなかった。

「そうだったわ、アーリンさんにお願いしたことがあったのよ!」

何なんですかぁ? 王妃様のお願いなら、それは命令じゃないのぉ!

「ど、どのようなことでしょうか?」

「シャルロッテも一緒に訓練をしたいらしいの。お願いできないかしら?」

そ、それだけは無理よぉ~!

私の研修くんれんは魔法契約で人には教えられない。いくら王妃様のお願いでも受けられない。

「私の訓練は先生に教えてもらった特別な方法なので、申し訳ありませんが無断で見せることはできません」

「それなら大丈夫ですわ。ドロテア先生にテックス様の許可証をいただいて、シャルロッテと従者の二人はすでに『知識の部屋』の利用は済んでいますわ」

あふぅ、断れないじゃな~い!

テンマ先生の許可がいると言い張れないわけではないけど、強引に断るのはできそうにない。

それにシャルロッテ王女や従者の二人は王妃様が訓練の話を始めてから、喰いつきそうな表情で私を見つめているのを気付いていた。

「で、ですがシャルロッテ王女殿下がやるような訓練とは……」

訓練とはいえ王女様に毒薬や麻痺薬を飲ませたら護衛に捕縛されそうだわ……。

「問題ありませんわ! 私もドロテア様に憧れていて、学園を卒業したら冒険者になるつもりですわ」

王女様が冒険者になるなんて非常識でしょ!

あまりに非常識なシャルロッテ王女に驚いて心の中で突っ込んでしまった。でも不思議なことに、王妃様はそんな話をした王女様を嬉しそうに見つめている。

「遠慮はいりませんのよ。陛下や私もシャルロッテには好きにしてほしいと思っています。可能なら私もドロテア先生のように好き勝手に生きてみたいですわ!」

王妃様は目を輝かせながら夢見る少女のように、何かを思い浮かべるようにして話した。

こ、これは絶対に断れないやつだ……。

私は覚悟を決めて大きく息を吐き出してから話した。

「わかりました。ですが私の教えられた訓練法は、洒落にならないほど厳しいものになります。途中で音を上げたらその時点で一緒に訓練するのは終了します。それでよろしいですか?」

王女様達の決意を確認するために、王妃様の前でハッキリと約束してもらうことにした。

しかし、王女様達が答えるより早く、お父様達が口を挟んできた。

「ま、待ちなさい! 王女様にあの訓練はさすがにまずい!」

「ま、まさか毒薬や麻痺薬まで使うつもりではないでしょうね!?」

王女様達もお父様の話に驚いた様子はなかったけど、お母様の毒薬の話には王妃様や護衛で控えていた特別騎士団の副団長であるソフィア様も呆気に取られていた。

「もちろんそのつもりですわ。もし手を抜いた訓練をお望みなら、他で訓練すればよろしいと思いますわ!」

私は両親の質問に答えた。
できれば王女様と訓練などしたくはない。年齢は同じでけど相手が王女様では友達になれるとは思えない。気を遣いながら王女様の面倒をみるなど遠慮したいのだ。

「構いませんわ! アーリンさんがしている訓練なら、いくら厳しかろうと耐えて見せますわ!」

くふぅ、王女様は予想以上に気が強そうね!

従者の二人は毒薬と聞いて驚いていたけど、王女の決意を聞いて彼女達もやる気に満ちた表情になった。

「うふふふ、これで話は決まったようね。ソフィアさん、先ほどお願いしたエステに参りましょうか」

エステもやるんかい!

「は、はい……」

お母様は呆然としながらも返事をして、嬉しそうに立ち上がった王妃様を見て慌てて案内する。

私はやる気に満ちた表情の王女様達に見つめられ、心配そうにするお父様と護衛達に睨まれたのである。


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