恋焦がれている学校の人気者が俺にも優しくて翻弄される話

とある高校。

桜舞い散る春の風に吹かれて、ふと、落としてしまった紙。

ひらりひらりと踊って、ある男子生徒の足元に落ちた。


同じ、入学生だろうか。


無言で取ってしまえばいいだろうとしゃがみこんだとき、視界に焼けた肌の角張った手が映る。己の貧弱な手とは比べ物にならないほど、凛々しくて、美しい造形だった。

紙を拾っていった彼の腕から肩、肩から顔へと視線を移すと


ぱちり


目が、合う。

荒々しくも丁寧に後ろに撫で付けられた前髪。オールバックまでとはいかない、過度なオシャレというわけでもないが、彼にはよく似合っていた。鋭い目つきで、思わず怯んでしまう俺をよそに彼は______……


「落としたろ?これ」


何事もないように笑顔という名の爆弾を落として、快活に笑った。




その日から、ずっと、ずっと。

俺はあの笑顔に焦がれていた。


廊下ですれ違う度、仲間と談笑しながら帰る様子を見る度、柔道部として励む後ろ姿を眺める度、学校行事でふと肩をぶつける度。

募り募っていた。

抱いてはいけないはずの感情が。



そうして迎える2年の春。

「…………あ?」

呆然とクラス表の前で立ちすくむ。
他に生徒のいない時間帯、いくらでも衝撃に身を任せることができた。

己の苗字である"白川 小海(しらかわ こうみ)"。
6つほど出席番号がズレているからこそ隣に来た、"田崎 仁人(たざき じんと)"の文字。


まさか、まさかそんな奇跡があるものか。


ガラリ。

扉が開く。



「た、…ざき、くん……」

「ん?ああ、おはよ、クラス表それ?」


俺の葛藤なんて知らないから、そうやって屈託もなく笑顔を振りまいてすぐ隣に並ぶ。覗き込むことで俺のすぐ横に、あれほど見た顔が近付いた。

「お、隣じゃね?白川……だよな?」

名札を見てそう言う田崎くんに、たしかまともな自己紹介もしていないままだったなと気がつく。

相槌を返すことすらもできない俺に、田崎くんが笑う。


ああ、笑う。


「1年、よろしくな」





これは、そんな彼との1年間の話
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