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人生というのは不条理の塊だ。
理想を求めても、最終的には欲するものを得られない事の方が多い。むしろ搾り取られるばかりだ。私はずっと自由が欲しかった。けれど18歳になった今、自由どころか命を奪われようとしている。
私は、『最強の軍神』と呼ばれる軍神・アーサーを呼び出すための生贄にされるのだ。ただ妹が16歳の誕生日には、最強の軍神が欲しいと発したその一言のために、私は犠牲になる。妹のによって、私は死ぬのだ。

「おい!エレノア!!お前、このままじゃ殺されるぞ!アレを呼び出すための魔力補助……生贄になんてなったら、死ぬどころか魂すら消滅するかもしれない!分かってんのか!?」
「……分かってるわよ。でも私に逃げる術なんて残されていないの」
「っだから、俺と契約しろって言ってるだろう!?俺がお前の妹ごと、この国の全てを滅ぼしてやる」

この必死に私を引き止めようとする男の名はリアム。
『軍神』と呼ばれる神の一人であり、3年前から何故か私に付きまとってきている存在だ。それどころか、私のお世話係という立場になってさえいた。きっとこの男の力に頼れば、は助かるのだろう。しかしそれが出来ない理由があった。

「グレンが人質にされているのよ?私に命令無視が出来るわけないでしょう?」

そう。私が抗う意思を見せれば、弟であるグレンを殺すと脅されているのだ。
彼がどこにいるのかすら分からない私には彼を救うことなど不可能。
リオンは私に命欲しさで弟を見捨てろと言っているのだ。なんて残酷な男なのだろうか。否、軍神という人智を超えた存在なのだから、心なんてものがないのかもしれない。なにせ、正妻だった私の母と現国王の間の子供である私は邪魔者であり、いなければいいとまで国王や現王妃に言われてしまっている存在。
唯一の大切な肉親とも言えるグレンに矛先がいかないようにするには、私の全てを犠牲にするしかなかった。

「待て!エレノア!!」
「リアム……助けてくれようとしてくれて、ありがとう」

軍神と人間。価値観は違うと言えど、彼が私の命を守ってくれようとしていたのは分かっている。
だからこそお礼を言った。これで最後になるから、今まで一緒に居てくれてありがとうという意味も込めて。
それが分かったのだろう。リアムは悔しそうな顔をしながらも、それ以上は何も言ってこなかった。
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