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俺と幼馴染みと おっぱいと

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 過去の事だ。



 星を見ている。俺は理央 (リオ)と星を見ている。



「コータ。星がすごく綺麗だね」



「ほんとだな。リオ」



 幼い頃、俺と理央は多くの時間を共有した。理央の両親はエリートで出張が多く。俺の親父も長距離トラックの運転手なので家に居ないことが多々あった。お袋は親父と別れて違う所に暮らしてる。



俺にとって家族より多くの時を共有する幼馴染みの理央はかけがえのない大切な存在だ。理央も俺の事をそういう風に思ってくれていたんじゃないのかなぁ。



 「コータ。ボクたちってずっと友達だよね」



 「ああ。オレたちは親友だよ。ずっと」



 星空の下で俺たちはそう誓いあった。風が少し肌寒かったけど、寄せあった体がポカポカと温かく心地よかった。



 この時は思っていたんだ。俺たちの友情は永遠だと――――。





 ◇◆◇





 ここは喫茶店。今日は高校に行かなくていい休日だ。俺は親友の理央を呼び出していた。



「で、僕に話ってなに?」



 親友の理央の声は冷たかった。まあ、最近の俺の態度のせいなんだろう。理央の不満ももっともだ。顔をそむけて喋ったり、付き合いが悪くなったりしたからな。



「あ、ああ。それはだな」



 理央との関係が最近上手くいってない。それには理由がある。さすがに誤魔化しが利かなくなってきたのでここらでハッキリさせておこうと思ったのだ。



「実はだな。その……」



 俺は言い淀む。切り出しにくい問題なのだ。



「歯切れ悪いなぁ」



 理央は唇を尖らせ不満そうだ。



「……僕からいってやろうか?」



「え?」



 我慢出来なくなったのか理央が喋り出す。



「コータはこう言いたんじゃないの?「俺たちの関係はここまでだ!」ってさぁ。違うっ?」



「そ、それは……。違っ」



 動揺する俺の態度を見て理央の不快さは増したようだった。



「ふんっ。図星? 噂だと隣のクラスの兼近さんと楽しく喋ってたそうじゃないかっ」



「あ、あれは委員の仕事で……」



「言い訳はけっこうだよっ! 仲良くなった女の子が出来て僕が邪魔になったんだろっ! 別にいいけどねっ! それじゃっ! 兼近さんと仲良くねっ!」



「………っ!」



 理央は我慢の限界だったようだ。席を立って店から出て行こうとする。



 まずいっ! ちゃんと説明出来てないっ! なんか勘違いも入ってるし。下手すると理央との関係がこんなよくわからない感じで終わってしまうっ! そんなのは嫌だっ!



 俺は必死だった。必死に理央を行かさまいと立ち上がりやつの腕を掴んだ。 



「な、なんだよっ! 離せよっ!」



 理央は手を振りほどこうする。だが俺は離さない。



「聞いてくれ理央!」



「………」



 掴む手以上に声に力を込める。俺の思いが伝わるように。



「俺は気の利いたことはいえない。下手に考えてモノをいったら逆に伝わらないだろう。だから思っていたことをいう。だから理央。全部聞いて、それからお前が判断してくれ」



「な、なんだよっ。 ………い、言ってみろよ」



 真剣さが伝わったのか理央が耳を傾けてくれるようだ。ありがたい。俺は気持ちを伝えなければいけない。たとえ関係が破綻したとしても正直であろう。正直に打ち明けダメならば悔いも残るまい。俺と理央の関係がその後どうなろうとも。



「おっ! おっ! おっ!」



「コータ?」



「おっ! おっ! おっ! おっ! おっ! おっ!」



「コータぁ!?」



 ギャグっぽいがそうではない。あまりにもデリケートな案件なので俺のキャパシティではいっぱいいっぱい。思考回路はショート寸前なのだ。だが限界を越えろ俺! 崖から飛び降りる覚悟を出せ俺ェェェ~~~~~~っ!!!



「俺はぁ~~~!」



「………っ!」ゴクリ



 ただならぬ様子に理央は俺の様子を伺いつつ生唾を呑み込んでいる。



「お、お前のぉ……………!」 



 店員。周りの客の注目が俺に集まっている。



 一瞬の静寂が店内を満たしている。









「お、【おっぱい】が! 気になってしょうがないんだよぉおおおお~~~~~~~~っっっ!!!」



「………………………!!!」



 店内に絶叫が響き渡る。営業妨害もいいところだろう。しかし俺はこの時思いを吐き出す事しか頭になかった。



「お前と永遠の友情を誓ったよ! 理央は最高の友達だったよ! だけど理央は中学に入ってどんどん女性らしくなっていった!」



「……………」



「俺の心は揺れ動いたよ! 思春期真っ盛りだったからっ! 空手道場で身体を痛めつけることで煩悩を必死に抑えたねっ!」



「えっ? そ、それで空手を始めたのっ?」



「そうだよっ! 理央が成長して魅力的になる度に巻き藁に対する正拳づきの回数は増えたよ! お蔭で今はコンクリもメゲちゃうよ!」



「よ、よかったね…………」



「ありがとうっ! でもさぁ! あれはムリだぁ~~~っ! 今年の夏に海に行ったろっ!?」



「う、うん」



「理央がビキニでさあっ! 胸がこぼれ落ちるかのようだった! 理央が浜辺で走る度にたゆんたゆん胸が揺れててさあ! 俺の心は完全に打ち抜かれたんだよ!!!」



「そ、そうなのっ!?」



 理央と俺の友情は永遠に続くかと思われた。しかし大きな問題があったのだ。理央は女で俺は男。成長すればするほど差異は大きくなっていった。そう、理央のおっぱいはどんどん大きくなっていったのだ。たわわに実る魅惑の果実。高校一年の夏に海に行ったわけだが。ビキニの理央に完全に悩殺された。巨乳でビキニは反則だろ。魅惑の双丘が揺れて目も心も吸い寄せられる。俺は俺の息子が反応しないように全身全霊の力を用いた。天国であり地獄。地獄であり天国。俺の脳内は混沌カオスであった。



「いつの間にあんなに立派になっていたのかぁ………っ! その日から! 理央の見事な胸が! 頭から離れないィ!!!」



 セクハラなのだろう。だが今はただ真っ直ぐに。ストレートだけを投げよう。



「こ、コータぁ」



 理央は頬を紅く染め手と腕で自らの胸を庇う仕草をする。



 そうなんだよ。あれからというもの理央との距離感がわからなくなったんだ。



「俺は自分に対して絶望した。理央と永遠の友情を誓いあったはずなのに。俺はお前を性の対象としていやらしい目で見てしまっていたんだ。くっ………! 俺は俺が情けないっ!!!」



「……そ、そうなんだっ」



「すまなかった。これが俺の抱えていた問題だ。友達だったやつにこんな風に思われて気持ち悪いだろ? これで俺たちの友情が壊れて関係が破綻してもしょうがないって思ってる」



 言うだけはいった。後は理央に判断してもらうだけだ。



「パパが言ってたんだけどさ」



「…………」



 理央が口を開く。俺は神妙に耳を傾ける。



「人間って年を取ると価値観が変わるんだって。お肉が好きだったのにお魚が好きになったり漬け物を美味しく感じたりするようになるんだって」



「…………? それは、どういう」



「つまりっ。コータはちゃんと成長して男になって、僕は女になったってこと。それだけのことだよ」



「理央……。で、でも俺たちの友情は……」



「友情は価値観が変わって愛情になった。とかなんとか。そういう感じでよくない?」



 理央は目を逸らしてながらそういってきた。頬が上気している。今度は理央がいっぱいいっぱいの状態のようだ。ここまで来たら鈍い俺でも何をいわんとしているのかわかった。



「り、理央……。それって」



「コータは僕の身体でドキドキしたことに罪悪感持ってたみたいだけど、気にしないでいいよ」



 理央は綺麗な瞳で俺を見つめながら笑顔を浮かべた。



「僕も海でコータの身体を見てドキドキしてたからねっ。お互い様ってやつさっ」



 その顔はしたり顔で何とも魅力的であり、またしばらく俺の心を占居すること受け合いであった。





 ―――――――こうして…………、俺の大事な親友は大事な恋人になりました。俺、かわいい彼女が出来て幸せです。

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