A&R
90年代の音楽業界バブル。二十一世紀に入るとすぐに押し寄せたデジタル化の波の中で、レコード会社は大きく姿を変えていく。1999年入社で二年目の佐伯は、インディペンデント・レーベルで働く駆け出しのアシスタント。アメリカの影響から日本でも、制作部で働くディレクターをA&R(アーティスト・アンド・レパートリー)と呼ぶのが定着し始めた頃。ファイル共有ソフトの『Napster』の先見の明は消され、『iTunes(現Apple Music)』が登場する前夜。最も刺激的で残酷な新時代が幕を開けようとしていた。最近になってようやく声高らかに叫ばれる『DX』は、音楽業界にとっては遠い過去の出来事。デジタライズ、コークリエイション、エンパワーメント、新たな民主化、サブスクリプション・・・未曾有のビジネスモデルが立ち上がっていく黎明期に、音楽馬鹿な若者たちが酒と煙に巻かれながら書き殴られる青春グラフィティ(落書き)。
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