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第1章 ここが異世界

第18話 親は何をしているんですか!

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「あの……」
「ちょっと、こちらへ来て下さい!」
「え? いや、まだ名前も知らないのにそういうことはイケないと思います!」
「は? 何を言っているんですか! いいですから、早く!」
「あ、はい……うわっ!」

 俺は受付のお姉さんにいきなり手を握られ、驚き固まっているとお姉さんは俺の手を引き、一緒に来てくれとカウンターの向こう側から引っ張られる。でも、俺はいくらなんでも名も知らぬ人とそういうことはちょっとと怯んでいれば、お姉さんは「いいから!」と俺の手を強く引っ張り俺をそのままカウンターの向こう側へと引きずり込む。

「とにかくこちらへ」
「えっと……随分、情熱的なんですね」
「は? さっきから何を言ってるんですか?」
「ふふふ、分かりますよ。隠しきれない俺の魅力が悪いんですよね」
「ハァ~さっきから意味不明なことを言っていますが、多分あなたが考えていることは間違っていますから。では、中にどうぞ」
「え? はぁ、失礼します」

 俺は冒険者ギルドのカウンターの向こう側へと無理矢理連れ込まれ、その奧にある会議室っぽい部屋へと案内された。

 お姉さんは、会議室の扉を閉める際に誰も近くにいないことを確認してから、ソッと扉を閉めると、俺に椅子に座るように促す。

「では、改めまして。私はここ『冒険者ギルド トリリア村出張所』で受付業務を任されているミーです。以後、よろしくお願いします」
「はぁ……」
「では、早速ですが先程、ヒロ様は何をしようとされていましたか?」
「え? 何ってインベント「はい、そこぉ!」リからって……えぇ?」

 俺は冒険者ギルドの受付嬢ミーさんから、さっき俺がしようとしたことの説明を求められ薬草をインベントリから取り出そうとしていたことを話せば、ミーさんは「ソレだ!」と俺に右手人差し指を突き付ける。

「えっと、俺は何か悪いことをしたのでしょうか?」
「はい。とは言え、正確ではないですね」
「えっと、ではなぜ?」
「なぜって言わないと分からないのですか?」
「はい。だって、昨日来たばかりなので」
「昨日だろうが、一年前だろうが、こんなのは常識です! 親に習わなかったのですか?」
「はい?」
「ですから、インベントリなんて、アイテムボックスの上位スキルをあんな人目の多いところで使うなと親から注意されなかったのかと聞いているんです!」
「されませんでしたが?」
「……呆れました」
「へ?」

 ミーさんは俺がインベントリの重要性に気付いていないということから、親に聞いていないのか、親は何をしているのかと憤慨するが、そもそも俺は昨日、日本向こうから異世界こちらへ来たばかりだと話せば「ウソ!」と言うが、俺がこの辺では見かけないスーツに革靴という格好をしていることに気付いたのか、「言われてみれば」と右手で顳顬を軽く押さえ天井を仰ぐ。

「俺は一般的にまれびとと言われている様で、もう少ししたら領主からの迎えが来て、王都までドナドナされる予定です」
「どなどなが何かは分かりませんが、王都へと招聘されるのは理解しました」
「分かってくれたのなら助かります」
「ですが、それとこれとは話が別です!」
「はい?」

 ミーさんは俺がまれびとであり、王都まで連れて行かれることは理解したが、それとインベントリの重要性は別だとテーブルの上に身を乗り出し少し興奮した様子で俺に言う。

「いいですか! アイテムボックスを持っている人は、常に狙われているのですよ。老若男女関係なく力尽くで抑えつけ隷属の魔道具や隷属の魔法を使って一生飼い殺しです」
「えぇ~またまたぁ~」
「……」
「……冗談ですよね?」
「ふぅ~そう思うなら、それでも構いません。ただ言っておきますが私は冗談の類は、あまり好きではありません」
「……はい」

 ミーさんからの話というか、警告を聞いて「そう言えば」とラノベの設定を思い出す。アイテムボックスなどのスキル持ちは商人にとっては垂涎モノであり、当たりならば大店の商家に高給で雇われるが、外れならば先程の警告の様に一生奴隷として使い潰される運命となる展開もあったことを。

「……分かりました。以後、気をつけます」
「分かってもらえたのなら、いいです」
「はい、ありがとうございました。じゃ」
「あ、ちょっと」
「はい?」

 ミーさんにお礼を言って帰ろうとしたところで、ミーさんに呼び止められた。

「それで、話を戻しますが何を取り出そうとしていたのでしょうか?」
「あ、そうでした、そうでした。実は……」

 俺はインベントリから薬草を一束取り出し、テーブルの上に載せると、道中採取して来たんだけど、手持ちの軍資金がないから売れないかとミーさんに相談する。

「ま、確かにヒール草は常時依頼でありますが……」
「が?」
「これだけでは、買い取るにしても小銭にも満たないと言いますか」
「あ、大丈夫です。全部で確か……百五十六本ありますから」
「はい?」
「見せた方が早いですね。はい、これで全部です」
「あ……」

 俺はインベントリから全てのヒール草を取り出しテーブルの上に載せればミーさんはそれを見て「ウソ、信じられない!」と呟く。

「もしかして、売り物にはなりませんか?」
「あ、いえ。その逆です」
「はい?」
「ここまで保存状態がいいヒール草を見ることは滅多にありません!」
「そういうものですか?」
「そういうモノです!」
「いや、だから近いから!」

 ミーさんはまた興奮した様子でテーブルに上半身を乗り出し俺の顔のすぐ前まで近付く。ま、俺的にはご褒美なんですけど、ここは冷静になりミーさんの肩を掴み無理矢理椅子の上へと戻す。

「すみません。思わず興奮してしまったようで……」
「いえいえ、俺としては嬉しいばかりなので」
「でもですね、ヒール草を採取してくるのはいいんですが、皆は何度言っても乱暴に地面から何も気にすること無く引っこ抜くだけで、これほど根が綺麗なままというのは本当に貴重なんです。是非、買い取らせて頂きます!」
「はぁ、ありがとうございます」
「で、お値段ですが……先ずは数と状態を確認させて頂きたいのでお時間を少々頂けないかと」
「あ~今日は無理そうですか」
「はい。申し訳ありません」
「そうか。いや、困ったな~」
『ピィ……』
「おや、そちらは?」
「セツです」
『ピ!』
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