復讐なんて意味がない? そんなのやってみないと分からないよね

ももがぶ

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第1章 始まり

第10話 死ぬなよ

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 優太は一度、冒険者ギルドから外に出ると人通りが少ない路地裏に入り隠形、認識阻害スキルを解除すると初めて入るフリをしながら『ゴルモン王国 バヤン領 スジン街』の冒険者ギルドの扉を潜れば、さっき坂井誠とやり合っていた受付のお姉さんであるリタと目が合うと、リタはニッコリと優太に微笑みかけ、ギルマスは「ほぉ~」とだけ漏らす。

 優太がリタのいるカウンターに近付けば「いらっしゃいませ。今日は、どの様なご用件で?」とリタが優太に尋ねる。優太はリタに「冒険者登録をお願いします」と伝えれば「あの、失礼ですが年齢は?」と聞いて来たので十三歳であることを告げる。

「ふ~ん、年齢は大丈夫そうだけど……魔物とか相手にするのはどうかなぁ~」とリタが遠回しに優太の登録を断ろうとしたが、リタの後ろからギルマスが声を掛ける。

「リタ、登録してやれ。そうだな、ランクはそうだな……Cだな」
「ギ、ギルマス! 正気ですか!」
「あ~正気だ。小僧、さっきぶりだな」
「え?」

 リタは見た目こそ冒険者の様な格好をしているが、どう見てもこれから冒険者としてやっていけそうには思えなかったので、遠回しに「君には無理だから」と断ろうとしていたのにリタの後ろから面白いモノでも見付けた様にギルマスがニヤニヤしながら「登録してやれ」と言ってきたばかりか、冒険者ランクもいきなりCランクで登録するように言ってきたのだ。リタはギルマスの正気を疑うが、ギルマスの言った「さっきぶり」と言った言葉の真意が分からずに困惑するが、優太以上にリタは意味が分からずギルマスに優太との関係を問い詰める。

「え? ギルマス、お知り合いですか?」
「いいや、知らん」
「え? でも、今って……」
「まあ、そのことはいいから。さっさと手続きしてやれ。小僧、それが終わったら裏の訓練場に来い! いいな、バックレたりするなよ」
「……はい」

 リタは目の前の優太が少し可愛そうに思えたが、一枚の登録用紙を優太の前に出し、名前や年齢、特技などの必要事項の記入をお願いする。優太は一瞬、戸惑ったが正直に聴き取りは出来るが、文字の読み書きが出来ないことを話せばリタは「なるほど」とだけ言って代筆を買って出る。そして優太から必要な項目を聞きながら淡々と事務処理を熟し、不思議に思いながらもギルマスに言われた通りにCランクでの登録を済ませる。

「じゃ、この水晶玉に手を置いてくれるかな」
「こ、こうですか? うわっ」

 優太はリタに言われた通りに水晶玉に手を載せれば、水晶玉と共にギルドカードも光り登録を終える。リタはそのギルドカードを優太の目の前に置き「登録が終わりました」と告げる。

「はい、これで登録完了よ。無くさないように注意してね。再発行には十万リル掛かるからね」
「十万?」
「うん、登録は無料だけど、再発行にはお金が掛かるからね。無くさないでよ。無くして他の人が悪用しても責任はあなたが取ることになるからね」

 優太はリタに冒険者ギルドカードの再発行に十万リルが掛かると言われるが、こっちの世界での貨幣価値が分からない為に今ひとつピンと来ない。なので、この際だからとリタに対し質問してみる。

「は、はい、分かりました。それと、いくつか質問してもいいですか?」
「何? 言っておくけど、私の年齢やスリーサイズに関しては非公開だからね。残念だったわね。フフン、で聞きたいことって?」
「……貨幣価値と文字を教えてもらいたいんですけど」
「あれ? ホントにそれだけ?」
「ええ、それだけです」
「えっと、私のことはいいの? 今ならなんでも教えるわよ? も、もちろん言えないこともあるけどね」
「いえ、興味ないのでいいです」
「……可愛くない」
「え?」
「なんでもないわよ。ほら、ギルマスが待っているからさっさと行きなさい!」
「え? 僕の質問は?」
「あなたがギルマスの相手が終わるまでには用意しておくから。ほら、行きなさい。あ、それと死なないように頑張ってね!」
「へ? それってどゆことなんですか?」
「行けば分かるわよ。ほら、早く行かないと生存確率が下がるわよ」
「わ、分かりました。じゃ、僕の質問の答はお願いしましたよ!」
「はいはい、頑張ってねぇ~死ぬんじゃないぞぉ~」
「……」

 優太は呑気に手を振って「死なないでね」と言うリタを一瞥し、冒険者ギルドの裏にあると言われた訓練場へと足を運ぶ。

「訓練場ってここ……だよな」
「小僧、こっちだ!」
「あ、はい」

 訓冒険者ギルドの裏に用意された訓練場へと足を運べば、その中央付近にギルマスと言われた禿頭の髭を生やした大男が腕を組んで立っていた。そして、優太を見付けると早く来いとばかりに手招きをする。

 優太はなんとなく……なんとなくだけど「もしかしたら、これってラノベのテンプレ展開か」と思っていた。そして、その答は直ぐに分かった。

「小僧、隠形スキルを使うなら殺気も少しは抑えないとダメだぞ」
「え?」
「おいおい、まさか自分は見えないから大丈夫とでも思っていたんじゃないだろうな。小僧、ある程度殺気は抑えていたみたいだが、完全には抑えられていなかったぞ。要訓練だな」
「……」
「なんだ。俺がお前の隠形を見破ったのがそんなに不思議か? おいおいおい、勘弁してくれよ。あんな稚拙な隠形で俺まで騙せると思ったのか? 随分と見くびられたもんだな。これでもギルドマスターを任されている身なんだけどな。で、お前とあの坊主とはどんな因縁があるんだ?」
「……」
「答えないか。まあいい。取り敢えず、俺の目が腐っていないことを確認させてくれ」
「へ?」
「ハァ~だからよ。小僧の力量を俺はCランク相当、若しくはそれを超えるモノだと思っているんだがな。もし、お前が見かけ倒しなら俺がリタに怒られるんだ。だから、死ぬなよ?」
「え?」
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