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恋愛未満は甘辛い? 勇者と英雄とレベル4⁉︎

第9話!

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「マーファリーがこの町の事を大切な故郷みたいに思ってるように私も、この町の事は好き! エルフィとユスフィーナさんが大切にしている場所だもの!」

 町の人も本当は親切な人ばかり。
 町並みも綺麗だし、お祭り好きな陽気な人たちが多い。
 お見合い抽選会でステージ作ってお祭り騒ぎにしちゃったところなんていい例だ。

「私にも何か出来る事があるはずだから……何かするわ」
「そう言うと思った」
「……くっ……」

 だから、その余裕! ムカつく!
 歳下のくせに~!

「やっぱりミスズは『勇者の資質』があるね」
「……は?」

 勇者?
 いやいや、確かに勇者が異世界から召喚されたー、的なのはRPGではもはや王道とも言うべきお約束感すらあるけど……。
 私の場合は事故だし、魔力は全然扱えないし、体内魔力量に至っては三分の一という最弱以下の戦闘能力ですけど?

「なに言ってんの、私はただの一般人よ」
「そうだね。フレディも『勇者の資質』がある人は、本当に普通の人が多くて……その才能が開花するのは運次第だって言ってた」
「……………………」

 あれ? 遠回しに馬鹿にされてる?

「でも一般人だから……自分も弱いって事を最初から知っている人だから……弱い人の気持ちに寄り添って立ち上がれるんだって。ヨナが言ってたよ。……勇者は特別な事をする人間じゃない、当たり前の事が当たり前のように出来る人の事なんだってさ。当たり前の事をするのは実はすごく勇気がいる事で、勇者っていうのは……その勇気がある人間の事を言うんだって」
「……そんなら勇者なんてその辺にたくさんいる事になるわよ」
「……まぁ、素質があってもなれるかどうかはその人次第だからね……」
「なにそれ、意味深な言い方するわね……」
「当たり前の事が当たり前に出来ない人がいるのも忘れないであげてって事」
「まあ、そりゃそういう人もいるだろうけど……」

 なによそれ、もー。全然意味分かんない。
 私が勇者な訳ないでしょ、レベル3が出た時ナージャとしがみつきあって腰抜かしてたのよ。

「まぁ、つまりさ……ミスズなら当たり前の事を当たり前に出来るはずだよって事。どうしたらいいか分からないって言ってたけど、やりたい事をやりたいようにやればって意味」
「……回りくどい」

 でも、ハクラなりに激励してくれたって事かな?
 勇者だなんて表現持ち出してきて、大袈裟ねぇ……。

「それはそうとさ、魔力はどうだったの?」

 と、突然話題が変わる。
 話はひと段落ついていたけど、まさかその話に来るとは思わなかった。

「……一応あるにはあったんだけど……」

 隠しても仕方ないし、気に掛けていてくれたのはありがたいのでハーディバルに診断してもらった結果を正直に話す。
 人より魔力が溜め込めない事。
 そしてそれを補うために生命力を魔力に変換していた事。
 ハクラは少し変な顔をしてそれを黙って聞いていた。
 な、なによその変な顔は。

「生命力魔力変換魔法が掛かってるのに……体内魔力容量が少ないだけで使える魔力が減るの? おかしくない?」
「あれ? そういえばそうね?」

 そもそも私のような異世界の人間は魔力そのものがない人間がいる、らしいっていう話もあった。
 そういう人間に生命力を魔力に変換して使わせるのが生命力魔力変換魔法。
 体内魔力容量が少ないから生命力を魔力にしているってハーディバルは言ってたけど……それってつまりちゃんと生命力魔力変換魔法にはかかってるって事じゃない?
 じゃあなんでババーンと使えないの?
 いや、使えても困るんだけどさ。

「事故だったから生命力魔力変換魔法が不完全な形でかかってるのかもね。たまに魔石も起動出来ないって言ってなかった?」
「うん……。まぁ、それ含めて今度ちゃんと検査みたいなのを受けるわ。ジョナサン王子にも言われたし」
「ヨナに会ったんだ?」
「ヨ…………?」
「ジョナサンの愛称だよ。フレデリックはフレディ」
「おま……王子様を愛称呼びしてるの!?」
「ミスズも呼べば? 特にフレディは俺しか友達いないから喜ぶと思うな」
「……ッッッ!」

 よ、呼べるかぁ!
 相手は王子様よ!? 恐れ多いわ!
 私は一般ピーポーだって言ってるでしょうがー!

「……あんた、怖い……」
「え! 急になんで!?」
「……いや、もういいや」

 力が抜ける。
 なんというか、怖いもの知らずなのね……。
 眠るティルを抱き上げて、フードの中へと入れるハクラはドラゴンすらこの扱い。
 王子様を愛称で呼ぶとか彼氏かよ。

「ハッ! ……ドS騎士と付き合ってないけど、まさかどっちかの王子様と付き合ってるんじゃ……!?」
「え、どうしてそうなるんだよ!? そりゃ、二人は恩人だし大好きだけどあの姿に手を出したら犯罪でしょ!」
「……ああ、まあ、そうね……」

 その辺りの常識はちゃんと…………。

「こっちの国では!」

 ……アバロンは犯罪じゃないのおおぉぉ!?

「それに俺、ハーディバルに嫌われたくないし!」
「色々どういう意味!」
「ハーディバル……っていうかフェルベール家の人ってフレディとヨナ大好きじゃん」

 そ、そうね……すごかったわ、色々。

「手なんか出したら物理的に殺される」
「……そ、そうね……」

 昨日のレベル4すらお手玉のように扱ったハーディバルとか、お城で最も怒らせてはいけないエルメールさんとか、ハーディバルすら恐れる『三剣聖』のお姉さん含め……フェルベール家は敵に回しちゃダメね。

「相性的に俺はハーディバルの方が好きだし」
「ねぇ、多分あんたのそういう発言が誤解を生むんだと思うわよ?」
「え? どういう事?」
「付き合ってるんじゃないの、っていう、誤解よ! よく誤解されるって昨日言ってたでしょ!? それ! それがまずいの! その言い方!」
「どれ?」
「ハーディバルに嫌われたくないとか、相性がいいとか、ハーディバルの方が好きとか!」
「え~?」

 なんで疑問形!?

「だってハーディバルって可愛いし」
「どこが!? あとそれもアウト!」
「料理が好きなところとか、掃除好きなところとか、魔法オタクなところとか優しいところとか、照れて直ぐ魔法使うところとか可愛くない?」
「うーん! 色々突っ込みたいところはあったけど多分あんただけだと思うわよ」

 意外と家庭的!
 下手したら私より女子力高い気配がする!

「最近思うんだけど、俺ドMなのかなー? 殴られる時、ハーディバルが物凄く嫌そうにしてるの見るとゾクゾクするんだよね」
「……それは…………多分……ドMの皮を被ったドSよ……」
「そうなの? SとMって奥深いんだな~」
「……そうね……」

 この若さで何に目覚めてるのよこの子……。

「………………。ところでハクラ……断ってもらっても全っ然いいんだけど……」
「? なに?」
「…………トイレ行きたいのよね……」

 いつもならマーファリーに起こされてから行くんだけど、今夜は徹夜しちゃったから……めっちゃ行きたくなってきた。
 でも男にトイレ流してもらうのは……!
 そりゃこの屋敷のトイレは蓋つきだけれどもー!
 でも、やっぱり行きたいし!
 マーファリーが準備して私を起こしに来るまで一時間くらいあるし!
 そんなに我慢出来る気がしないし!
 トイレ流すのに魔石を起動させるのなんて一瞬だけど、でも、いや、だが!

「いいよ」
「えらくあっさり!?」
「魔力使えないんだもんね、もちろんいいよ。ほら、俺、ティルの下の世話もちゃんとしてるから慣れてるし。全然気にしないで」
「……………………」

 じ、人生経験豊富か……。そうか……。そうだったわね……。

「……そういえばシングルファザーだったわね……」

 何かしら、この、よく分からない敗北感……。

「いや、それだけじゃなくて」
「え?」
「俺元奴隷だから○○○○が○○○○ったところも見た事あるし○○○○を○○○○に○○○○した事あるからーー」
「ごめんなさい。そ、そういうのはちょっと……!」

 人生経験どうのこうのじゃなかった。


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