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お見合いしてみた 4

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 胸を張ってホワイトローズの制服を見せる。
 白を基調とした生地。
 裾は花弁をイメージしており、回転するとドレスのように広がる長さ。
 女性の足を守る意味でも太ももまでの長さのブーツ。
 装飾品は少なめだが、個人で好きな根付を剣のベルトにつける。
 私は犬さん。
 後宮でも恥ずかしくないように襟や袖、裾には金の刺繍で縁取られている。

「後宮で働いている女性騎士だけの部隊は聞いたことがあるわ。ホワイトローズ……ええ、聞いたことがあるわ。王妃様が絶賛していたわ。今まで後宮でも男の騎士を連れ歩くのが当然で、護衛騎士の顔と実力を競い合ってマウントを取り合ったりしていたんだけれど、ホワイトローズが後宮に入ってからは相談相手が増えたおかげで後宮の空気が格段によくなった、って」
「そういえば国王陛下や王子殿下たちも女性陣の機嫌がいいことが多くなって、後宮に行きやすくなったと言っていたなぁ」

 と、ジェラール様のご両親がそう言って顔を見合わせる。
 そしてすぐに私の方を見ると、ニコ!っと微笑まれた。
 クッ……! ジェラール様のご両親らしくなんという人懐っこい可愛らしい笑み!

「うちのジェラールは体が弱くてね、健康な女性と結婚してほしかったんです」
「健康! はい! 健康は取り柄の一つです!」

 他の取り柄は剣技と身体強化魔法くらいなものだけれど!
 余計なことになるので言わないさ!
 背後からルビの「余計なことを言ったら奥様にチクりますからね」という突き刺すような視線を感じるからな!

「あ、あの、お父様もお母様もフォリシア嬢といつまでも立ち話は……」
「あ! そ、そうね。気が利かなくてごめんなさい。話したいことがたくさんあって……」

 ジェラール様の声、かわいい!
 私は立ち話でも構わないのだけれど、と思ったがジェラール様が「こほ、こほ」と軽く咳き込んだので目を見開いた。

「ジェラール様、体調が悪いのですか!?」
「ふぁ!? あ、い、いいえ、この時期は王都の自然魔力がどうしても不足するので……」
「え?」

 首を傾げる。
 私は元々魔力量が少ないのでそのあたりのことがわからない。
 庭の東屋に案内され、そこにはいつも高貴な令嬢たちがお茶会をする時のティーカップやお菓子が用意してある。
 え、こんなキラキラした場所に、私が座る……?
 いや、母上に最低限のお茶会の作法は教わっていましたけれども!
 さすがに緊張してきてしまうな。
 カップの取っ手、細すぎて砕いてしまいそう……。
 ひやひやしていると、公爵家のメイドが紅茶をティーカップに注いでくれた。
 義母上が朗らかな笑顔で「どうぞ。お口に合うといいのだけれど」と優雅に進めてくださった。
 まずい、急に緊張してきた。
 こういう、女子女子したことは本当に苦手なんだ、私は。
 と、とにかく取っ手を砕かないように、ゆっくりと集中して持ち上げる。
 そんな私にジェラール様たちの不思議そうな眼差し!

「フォリシア様、万年筆を握る感覚です」
「そ、そうね」
「ええと……?」
「も、申し訳ありません。実は外出時はどうしても気が張ってしまって、常に身体強化魔法を使っている状態なのでカップを壊してしまいそうで」

 ジェラール様たちは「え?」という表情。
 私は自宅で剣を置いている時以外、身体強化魔法が解けないのだ。
 なんなら自宅で父上や兄上たちとの訓練の時にも身体強化を使う。
 そのくらい、私は寝る時以外身体強化魔法を解かない。
 それはもう、常に”騎士として”守るべき人のことを守る、という意識のなせる業というか――。

「そういう癖ですね」
「まあ……」

 でも万年筆と同じ、ということならこのくらいかな、と加減を調整してお茶を口に運ぶ。
 う、美味ぁ!
 お茶ってこんなに美味しいの!?
 うちで飲むお茶なんて「水分補給できればなんでもいい」っていう感じだったから、飲み物の味に感動する日が来るとは思わなかった!

「とても美味しいです!」
「よかったわ」
「ええと、それで……改めまして、あの時は助けていただきありがとうございました。おかげで助かりましたし、無事にマリーリリー様との婚約は破棄ということになりました」
「っ! お、おめでとうございます?」

 つい自分の本能の赴くままに「おめでとうございます」と口にしてしまったけれど、よく考えなくても婚約破棄は「おめでとうございます」ではないな?
 まずい、変なことを口走ってしまったかもしれない。
 後ろから突き刺すようなルビの視線が「はい、奥様にチクります」と言っている!
 まずい! 母上の突き技を食らう!
 でも微笑むジェラール様の笑顔も十分胸に来る!
 撃ち抜かれた――!

「ふふ、はい。ありがとうございます」

 ぐは……!

 か 可憐 …… !

「お可愛らしい!!!!」
「え」
「申し訳ございません。お気になさいませんよう」

 ルビが指で私の背中をド突く。
 うっ! すみません!

「あ、ええと……実は僕、先天性の魔力過剰症でして」
「え? 魔力過剰?」
「はい。都会は魔力を使う人間が非常に多いので、魔力濃度も薄いじゃないですか? 僕は魔力が生まれつき過度で、時々王都でガス抜きをしなければいけないんですけれど……けほ、けほ……!」
「大丈夫ですか?」
「は、はい」

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