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《135》義弟の逆襲
しおりを挟む覆いかぶさったアレクシスが首元に頭をうずめてくる。
柔らかな弾力が鎖骨に吸い付く。さっきと同じ、湿った唇だ。
「·····へっ?」
沈黙に響くのは、濡れたリップ音。
それが、何度も繰り返される。ぞくぞくとしたくすぐったさが体を走り、宙に浮いた脚は、片手に捕まえられた。
大きな手の平がゆっくりと上にあがってくる。
「ぁ·····だめ·····っ」
小さな抵抗は無視された。
彼の手が内腿を撫で、脚を押し広げてゆく。
こんなのはありえない。
「兄さん·····兄さん·····」
「へ·····っ?あ、ン·····っ·····」
ノワは両手で口元を抑えた。
アレクシスの息遣いは荒い。両腿はさらに迫ってきた相手の両腿に固定され、ビクともしない。
(こんな体制、まるで·····っ)
「·····ノワ·····」
「やだ·····っ!」
ノワは、近づいてきたアレクシスから顔を背けた。
「や、やめて·····」
自分を覆う大きな影が怖い。
まるで捕食される獲物のような恐怖心だ。
「兄さん」
静かな声が呼ぶ。
「嫌がったって、駄目ですよ」
目が合ったのは、普段の理性的な彼とは違う、熱く焼けるような視線だった。
「兄さんが触れることを許したんですから」
「え·····?」
「兄さんが、俺をおかしくしたんですよ」
紡がれる言葉の半分も理解出来ない。
ノワは弱く首を振った。
「ア、レク、退いて·····」
「嫌だと言ったら、どうするんですか?」
灰銀の髪が、彼の顔に冷たい影を落とす。
「何も出来ないでしょう」
耳を疑うような発言に言葉を失う。
彼は、本当にあのアレクシスだろうか?
内腿に触れていた指先が僅かに動く。
ノワは飛び上がった。
「なんで·····僕のことが、嫌い····?」
恐ろしくてたまらない疑問を、やっとの思いで本人に告げる。
果たして返ってきたのは、失笑だった。
頭から冷水を被る気分だった。
「『嫌い』という返答をお望みですか?」
ノワはシャツを握りしめた。
しかし───次の言葉は全くの予想外だった。
「好きです、兄さん」
身じろぐと、ベットが鈍く軋む。
「あなたのことが好きすぎて、狂ってしまいそうだ」
「·····へ·····?」
好きなんですと、澄んだ低音が繰り返すのを、自分はうろたえながら無視するしかなくなる。
頭の中は大混乱だった。
そんな馬鹿なことが、あるわけ無い。
彼は弟で、イケメンロマンスの攻略対象だ。
「う、嘘」
「·····」
咄嗟に言い返す。
見上げた美青年の瞳孔は、すっと細められた。
「嘘かどうか、試してみましょうか?」
体重をかけてきたアレクシスのせいで、更に脚が押し広げられる。
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