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15.鱗
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次の日、グレイは魔獣の世話を終えるとすぐに地上へと向かった。
コウモリの姿をしたグレイの首元には、ウォーターオパールの色をした鱗のペンダントが光っている。
それは、ルイの鱗を3枚剥がし終え、カバンの中へ丁寧にしまっていた時だった。
「ルイの鱗はすごく綺麗だね。水色のガラスの中にシャボン玉が入ってるみたいでキラキラしてる。」
「ふふ、ありがとう。グレイ、鱗二枚は必ず農園の人に渡すんだよ。でも、もう一枚はグレイにあげる。」
「え!?いいの?」
ルイは笑って頷いた。
「ああ。その鱗はお守りになるからずっと身に付けていて。私からのプレゼントだよ。」
「うん!ずっと身に付ける!ずっとずっと大切にする!
俺、プレゼント貰ったの初めてだ…。」
グレイは一枚の鱗を両手で握りしめた。
嬉しい…。
さっきは悲しくて涙が溢れたのに、今度は嬉しくて涙が溢れてくる。
「…ありがとう、ルイ。俺、本当に嬉しい…。」
「なんだよ、また泣いてるのか?グレイは泣き虫だなぁ。」
「泣いてないよ!」
グレイは乱暴に手で涙を拭って否定した。
ルイは「やっぱり泣いてるじゃないか。」と言ってクスクス笑った。
昨日の会話を思い出し、グレイの顔が熱くなる。
「うー、俺、なんであんなに泣いちゃったんだろ。バカみたいだ。恥ずかし…。」
ルイと一緒にいるとちょっとした事で嬉しくなったり、急に悲しくなったり、でもやっぱり楽しくて…。
これからもずっと一緒にいたいと願ってしまう。
でもルイは自分の国へ帰りたいんだろうな…。
グレイは複雑な気持ちで農園へ向かった。
農園に着くと、玄関には昨日グレイに石を投げてきた人間の男が何か作業をしていた。
あの男に見つかったらまた石を投げてくるだろうし、捕まったらボコボコにされるだろう。
それにルイからも「くれぐれも見つからないように置いてくるんだよ」と言われていたので、グレイは木の影に隠れて男がいなくなるのを待っていた。
しばらく様子を見ていたが、男はまだ玄関の前で作業をしている。
グレイもそろそろ戻らないと、城の仕事に間に合わなくなる。
どうしようかと周りを見渡すと、梨を収穫している年老いた女性を見つけた。
あの男に顔が似ているので、おそらく母親だろうか。
あの女だったら石を投げてもそこまで飛ばないだろうし、捕まっても逃げられそうだ。グレイはその女性の方へ飛んでいった。
女性の側には梨を収穫したカゴが置いてある。
あのカゴの中に鱗を落とせばいいかな。
でももし鱗に気付かなかったら?
対価を払うべきだ、と言って鱗を渡したルイの気持ちに背いてしまうかもしれない。
必ず鱗を渡さないと。
そうだ、人間の姿で渡せばいい。
もし魔族だとバレたらすぐに逃げればいい。
グレイは人間の姿になり、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
大丈夫、魔族だとバレなければ問題ない。
人間のフリをするのは簡単だ。
グレイはそう自分に言い聞かせて、収穫をしているその背中に声をかけた。
「おい、そこの人間。鱗だ、やる。」
女は振り返り、びっくりした表情でグレイを見た。
コウモリの姿をしたグレイの首元には、ウォーターオパールの色をした鱗のペンダントが光っている。
それは、ルイの鱗を3枚剥がし終え、カバンの中へ丁寧にしまっていた時だった。
「ルイの鱗はすごく綺麗だね。水色のガラスの中にシャボン玉が入ってるみたいでキラキラしてる。」
「ふふ、ありがとう。グレイ、鱗二枚は必ず農園の人に渡すんだよ。でも、もう一枚はグレイにあげる。」
「え!?いいの?」
ルイは笑って頷いた。
「ああ。その鱗はお守りになるからずっと身に付けていて。私からのプレゼントだよ。」
「うん!ずっと身に付ける!ずっとずっと大切にする!
俺、プレゼント貰ったの初めてだ…。」
グレイは一枚の鱗を両手で握りしめた。
嬉しい…。
さっきは悲しくて涙が溢れたのに、今度は嬉しくて涙が溢れてくる。
「…ありがとう、ルイ。俺、本当に嬉しい…。」
「なんだよ、また泣いてるのか?グレイは泣き虫だなぁ。」
「泣いてないよ!」
グレイは乱暴に手で涙を拭って否定した。
ルイは「やっぱり泣いてるじゃないか。」と言ってクスクス笑った。
昨日の会話を思い出し、グレイの顔が熱くなる。
「うー、俺、なんであんなに泣いちゃったんだろ。バカみたいだ。恥ずかし…。」
ルイと一緒にいるとちょっとした事で嬉しくなったり、急に悲しくなったり、でもやっぱり楽しくて…。
これからもずっと一緒にいたいと願ってしまう。
でもルイは自分の国へ帰りたいんだろうな…。
グレイは複雑な気持ちで農園へ向かった。
農園に着くと、玄関には昨日グレイに石を投げてきた人間の男が何か作業をしていた。
あの男に見つかったらまた石を投げてくるだろうし、捕まったらボコボコにされるだろう。
それにルイからも「くれぐれも見つからないように置いてくるんだよ」と言われていたので、グレイは木の影に隠れて男がいなくなるのを待っていた。
しばらく様子を見ていたが、男はまだ玄関の前で作業をしている。
グレイもそろそろ戻らないと、城の仕事に間に合わなくなる。
どうしようかと周りを見渡すと、梨を収穫している年老いた女性を見つけた。
あの男に顔が似ているので、おそらく母親だろうか。
あの女だったら石を投げてもそこまで飛ばないだろうし、捕まっても逃げられそうだ。グレイはその女性の方へ飛んでいった。
女性の側には梨を収穫したカゴが置いてある。
あのカゴの中に鱗を落とせばいいかな。
でももし鱗に気付かなかったら?
対価を払うべきだ、と言って鱗を渡したルイの気持ちに背いてしまうかもしれない。
必ず鱗を渡さないと。
そうだ、人間の姿で渡せばいい。
もし魔族だとバレたらすぐに逃げればいい。
グレイは人間の姿になり、深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。
大丈夫、魔族だとバレなければ問題ない。
人間のフリをするのは簡単だ。
グレイはそう自分に言い聞かせて、収穫をしているその背中に声をかけた。
「おい、そこの人間。鱗だ、やる。」
女は振り返り、びっくりした表情でグレイを見た。
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