悪女と呼ばれた淀殿ですが、今世の石田三成だけは私を責めません
大阪城で、私は思い出した。
前世の私は――
“悪女”と呼ばれた淀殿だった。
三十二歳の会社員・浅井千紗。
仕事では結果を出しているのに、なぜか社内の実力者・羽柴専務から執拗に目をかけられていた。
「俺のそばにいれば、もっと上へ引き上げてやる」
その言葉を聞くたび、胸を締めつける理由が分からなかった。
――前世を思い出すまでは。
羽柴秀明。
彼は、かつて茶々を自分のそばに置いた“あの男”を思わせる存在だった。
そして今世でもまた、
千紗は権力者に「選ばれる女」にされようとしていた。
けれど、そんな彼女の前に一人の男が現れる。
冷静すぎると恐れられる監査室主任・石田成哉。
彼だけは知っていた。
千紗がかつて誰だったのか。
そして、自分自身が――石田三成だったことも。
「あなたが悪女だったのではありません」
誰もが淀殿を責めた歴史の中で、
彼だけは彼女を責めなかった。
前世では守れなかった女。
今世では、もう誰のものにもさせない。
ただし彼は、千紗を自分のものにしようともしない。
「逃げる道は作ります。でも、最後に歩くのはあなたです」
淀殿でもない。
秀吉の女でもない。
“悪女”でもない。
今度こそ、自分の人生は自分で選ぶ。
現代に転生した淀殿と石田三成。
前世の因縁を越えた先で、二人が選ぶ関係とは――。
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