パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ

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第一章

20.因縁に決着を

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「もうすぐ着くぞ~」
「……うん」
「シータ、いつまでそこにいるつもり?」
「あははは……」

 馬車の中、シータは座席ではなく俺の膝の上に頭をごろんと寝転がっていた。
 アルファはむすっとした顔で注意する。

「もう起きなさい。ラスト様に失礼でしょ」
「うーん……ここすごく落ち着く」
「そんなこと聞いてないわ。いいから起きなさい」
「嫌だよぉ~ めんどくさいもん」
 
 どうやらシータは面倒くさがりみたいだ。
 移動中ずっと気だるそうにしていたし、俺の膝でほとんど眠っていた。
 魔力が足りなかったんじゃないかと心配になるくらい。

「姉上も諦めろって。シータに言っても無駄だ」
「そうそう。デルタお姉ちゃんはわかってるね~」
「駄目よ。しっかりしなさい! ラスト様の前でだらしない」
「お兄ちゃんは気にしないでしょ~」

 ごろごろと膝の上で頭を転がし、俺のことを見上げる。
 なんだこの可愛い生き物は。

「そうだな。到着するまでだぞ?」
「わーい……お兄ちゃん優しい~」

 アルファには悪いが、この可愛さにあらがえない。
 頭を撫でるとゴロゴロ喉をならすし、猫みたいだな。
 
「ラスト様!」
「まぁまぁ、もうすぐ着くんだし」
「……もう、優しすぎるんですよ」

 そう言ってそっぽを向く。
 拗ねられてしまったらしい。

 と、そうこうしているうちに馬車は見慣れた街並みに入る。
 
「帰ってきたな」

 俺たちの街に。
 雪も降っていないし寒さも感じない。
 ちょうどいい気候でホッとする。
 街へ帰還した俺たちは馬車を返却した。

「歩くのー? お兄ちゃん、抱っこして~」

 そう言ってシータが背中に引っ付いてくる。
 アルファがそれを強引にはがす。

「駄目です。ちゃんと歩きなさい」
「うぅ……アルファお姉ちゃん……うるさい」
「うるっ! シータが甘えてばかりだからでしょ!」
「ちょっと姉上ここで喧嘩すんなよ。目立つじゃんか」

 デルタが仲裁に入る。
 アルファがここまで感情的になるのは初めてみる。
 なんだか生き生きとしていて、これはこれで悪くない光景だ。

「三人……そろったんだな」

 しみじみ感じる。
 やり遂げたという達成感も。
 そして、これから四人でたくさんの冒険をすることを夢想して、わくわくする。
 最高の気分のまま帰宅できれば……。

 本当によかったのに。

「ラスト」
「――!」
 
 聞きたくなかった声が響く。
 頭に、心に。
 何度も聞いた……呼ばれたことを思い出す。

「ドイル……」

 振り返ると彼らがいた。
 俺を追放した元パーティーが。

「なんだこいつら?」
「知らない人ー」
「そりゃそうだろ」
「……もしかして、ラスト様の以前の……」

 できれば会いたくなかった。
 会わせたくなかった。
 彼女たちには……。
 今さら遅いけど。

「久しぶり、元気にしてた?」
「お前は随分と楽しそうじゃねーか。ラストの分際で」
「いきなりか」

 まるで挨拶みたいに暴言を吐かれた。
 慣れていたはずなのに、こうして改めて聞くと胸の奥がきゅっと締め付けられる。
 苦しいな。

「ラスト、お前こっち戻ってこい」
「……は?」
「聞こえなったか? 戻れって言ってるんだよ」
「……聞き間違えだよね?」

 戻れといったのか?
 俺に、ドイルたちのパーティーに?

「何度も言わせんなよ。さっさと戻ってこい。また仲間にしてやるよ」
「……本当に」

 勝手な人たちだ。
 一度追放しておいて、今更戻れって?
 どういう風の吹き回しだ。
 何を考えている?
 いや、そんなことどうでもいい。
 理由なんて関係なく、俺の返答は一つしかないんだから。

「嫌だよ」
「なんだと?」
「当たり前じゃないか。どうして今さら、戻らなきゃいけないんだ? そっちが追放したくせにさ。俺なんていなくても平気だったんでしょ?」
「……っ、いいから戻れ、これは命令だ」
「そんな命令聞く気はないし、お前に命令される筋合いはない。行こう、みんな」

 無視して立ち去ろうとする。
 しかしドイルが道を塞ぐ。

「どいて」
「てめぇ、調子に乗りすぎだぜ。一人じゃ何もできない癖に」
「一人じゃ……そうか。そこまでは気づいたんだね」
「くっ、てめぇ!」

 ドイルが胸倉をつかもうとする。
 その手を叩き落とした……のは、俺ではなくアルファだった。

「ラスト様に触れないでください」
「なんだお前は……」
「お前こそなんだよ。うちのマスターの邪魔してんじゃねーよ」

 今度はデルタが前に出た。
 彼女は目つきで威嚇している。
 二人とも、いつになく苛立っているように見えた。

「ありがとう二人とも。けど気にしないで。もう、関係ない人たちだから」
「……いい加減調子のんじゃねーよ!」

 怒りに身を任せ、ドイルが魔剣を抜く。
 仲間たちが止めようとしたがそれを無視して。
 ドイルの性格だから、こう来ることは予想できた。
 先に剣を抜いたのはあっちだ。
 ならこれは、正当防衛だろう?

「燃えやがれ!」

 魔剣から炎が放たれる。
 たけだけしい炎だが、今の俺には可愛く見える。
 片手で消してしまえるんだから。

「な……素手で?」
「ごめんね」

 刀を抜く。
 剣術の最速に、俺の肉体の最速を合わせて放つのは――

 居合。

 俺の刀は魔剣を斬り裂いた。

「ば、馬鹿な……こんな……」
「これで勝負ありだ。もう俺に関わらないで」
「っ、この野郎が!」
「――氷天」

 折れた剣で襲い掛かろうとしたドイルを、氷の柱がつなぎとめる。
 やったのはシータだ。

「もう終わったでしょ? 帰ろ、お兄ちゃん」
「そうだな。ありがとう」

 俺は彼女の頭を撫でてあげた。
 そして最後に、ドイルの顔を見る。

「お前の言う通りだよ。俺は一人じゃ何もできない。だから、彼女たちと一緒にいる。そうすれば、俺にもできることがあるから」

 それが答えだとまっすぐ伝える。
 俺はドイルたちじゃなく、三姉妹を選んだ。
 選ばせてもらえた。
 だからもう、これっきりだ。

「さよなら」

 俺の古巣。

 そして――

「ただいま」

 俺たちの新しい我が家。
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