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第10話 客が来る
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この国の一年の日数は、なんと都合の良い事に日本と同じで、曜日や時間も同じだった。
つい最近の事を曜日で表せば、木曜日に哲平と再会、金曜は婚約祝としてイッシュバルド家のお金で服やアクセサリーなど、これでもかというくらいお買い物をさせてもらい、土曜に私だけ先に屋敷に帰り、婚約内定を大喜びする両親に盛大に祝われた。
イッシュバルド家の方から哲平がキュレル家にお世話になるという話は連絡がいっていて、私がその話を伝えた時にはすでに哲平の住む部屋の用意がされていた。
週があけて火曜の朝、キュレル家にやってきた哲平を迎えたのは、私と両親とロッカ、そして、アリスのお母さん付きの侍女が二人、メイド服を着た見たことのない女性が三人、あとは使用人の男性が数人だった。
哲平の為に用意された部屋には私が案内する事になった。
メイドでもいいんだけど、彼が女性が苦手だから止めたのだ。
案内しながら女性のメイドに見たことがある人間がいないので不思議に思って悩んでいると、哲平に頬をつねられる。
「すっげぇ顔してんぞ」
「うるさいわね。見たことのないメイドしかいないから、どうしてかなと思ってただけよ!」
言い返すと、哲平は私の頬から手を離して言う。
「ああ、そいつらには今日から別の屋敷に行ってもらう事になった」
「は?!」
「いや、俺は女が苦手だし、公爵家から俺の事を理解してくれてるメイドを連れてきたんだよ。それに、お前の話では今までのメイドはアリスって子をいじめてた奴らだろ? いなくてもいいじゃねぇか」
「そういう奴等だからこそ手元に置いて根性を叩き直すつもりだったのに…。違う場所でメイド仲間とかをいじめたらどうするのよ」
「しょうがねえだろ。距離感を保ってくれるかわかんねぇんだから」
哲平は不服そうな顔をして言った。
彼が嫌がる気持ちもわからなくない。
転生前もそうだったけど、転生後も整った顔立ちの為、女性に人気があるみたい。
けれど、哲平は女性が苦手。
だから、必要以上に近寄ってこないメイドじゃないと駄目という事ね。
新顔だなと思ったメイドは年配の人って感じだったし、変な感情を持って彼に近付く事はなさそうに思えた。
哲平の部屋は私の隣の部屋で、元々、アリスのお兄さんが使っていたという部屋だった。
なぜ私の隣の部屋なのかというと、理由は婚約者だから、という訳のわからない理由を言われた。
お兄さんの部屋に残されていた家具などを、わざわざ空いている部屋に移し、哲平の使う家具の配置まで、全て公爵家から派遣された人間がやってくれたのだからすごい。
しかも、哲平を居候させるというお礼に月々、決まったお金がキュレル家に入ってくるのだから、良いことばかりだった。
「休み明けから、俺も一緒に行くから」
「どこへ?」
「学校に決まってんだろ」
「ああ、リトグル学園ね」
私と哲平は学生時代は学校と呼んでいたから、学園という言葉にあまり馴染みがない。
もちろん日本でもよく聞くけれど、私達の通っていたのは学校だった。
アリスが通っているのは、10歳から18歳までが通う学園で、貴族も平民も分け隔てなく一緒に学ぶ、というスローガンを掲げていて、とても大きな学園らしく、遠く離れた地域からも通えるように、なんと寮もあるらしい。
アリスは17歳クラスで、哲平も同じ学年に転入できるようになった。
辺境伯の息子も17歳クラスだったので、哲平はそのクラスに入るらしい。
アリスとは違うクラスだ。
「そういえば制服はあるの?」
「ある。ラス兄さんが手配してくれた」
「あんたのお兄さん、まだ公爵になってないのに、すごい権力者ね」
「そりゃそうだろ。友人が王子だから」
哲平はさらっととんでもない事を言った。
王子が友達って、すごい事なんじゃないの?
部屋の入口で立ったまま会話していると、執事のロッカが焦った顔をしてやって来た。
「お嬢様、ご友人だとおっしゃる方がみえられましたので、とりあえず応接間にお通ししたのですが」
「友人? ノアの事?」
日記を読んだかぎり、アリスに友達といえばノアくらいしか思いつかないんだけど。
「いえ、ノア様ではなく、アズール男爵令嬢と名乗られたのですが・・・・・」
アズール男爵令嬢…?
記憶にないわ。
「誰だ?」
「知らない」
哲平に聞かれて、首を何度も横に振ってから、ロッカに言う。
「ありがとう。待たせているのなら行くわ。あ、てっぺ、じゃなくて、テツ」
「ん?」
「暇だろうし、これでも読んでて」
一度部屋に戻り、日本語で色々と走り書きしたノートを持ってきて差し出すと、哲平は素直に受け取ってくれた。
「一人でも大丈夫か」
気遣う素振りをみせる哲平に「大丈夫」と頷いてから、ロッカに連れられて、応接間に向かう事にした。
さあ、アズール男爵令嬢というのが、どんな子かはわからないけど、休みの日にわざわざやって来る、という事は大物ではなさそうね。
一体、何をしに来たのかわからないけれど、今までのアリスだと思ったら大間違いだからね。
つい最近の事を曜日で表せば、木曜日に哲平と再会、金曜は婚約祝としてイッシュバルド家のお金で服やアクセサリーなど、これでもかというくらいお買い物をさせてもらい、土曜に私だけ先に屋敷に帰り、婚約内定を大喜びする両親に盛大に祝われた。
イッシュバルド家の方から哲平がキュレル家にお世話になるという話は連絡がいっていて、私がその話を伝えた時にはすでに哲平の住む部屋の用意がされていた。
週があけて火曜の朝、キュレル家にやってきた哲平を迎えたのは、私と両親とロッカ、そして、アリスのお母さん付きの侍女が二人、メイド服を着た見たことのない女性が三人、あとは使用人の男性が数人だった。
哲平の為に用意された部屋には私が案内する事になった。
メイドでもいいんだけど、彼が女性が苦手だから止めたのだ。
案内しながら女性のメイドに見たことがある人間がいないので不思議に思って悩んでいると、哲平に頬をつねられる。
「すっげぇ顔してんぞ」
「うるさいわね。見たことのないメイドしかいないから、どうしてかなと思ってただけよ!」
言い返すと、哲平は私の頬から手を離して言う。
「ああ、そいつらには今日から別の屋敷に行ってもらう事になった」
「は?!」
「いや、俺は女が苦手だし、公爵家から俺の事を理解してくれてるメイドを連れてきたんだよ。それに、お前の話では今までのメイドはアリスって子をいじめてた奴らだろ? いなくてもいいじゃねぇか」
「そういう奴等だからこそ手元に置いて根性を叩き直すつもりだったのに…。違う場所でメイド仲間とかをいじめたらどうするのよ」
「しょうがねえだろ。距離感を保ってくれるかわかんねぇんだから」
哲平は不服そうな顔をして言った。
彼が嫌がる気持ちもわからなくない。
転生前もそうだったけど、転生後も整った顔立ちの為、女性に人気があるみたい。
けれど、哲平は女性が苦手。
だから、必要以上に近寄ってこないメイドじゃないと駄目という事ね。
新顔だなと思ったメイドは年配の人って感じだったし、変な感情を持って彼に近付く事はなさそうに思えた。
哲平の部屋は私の隣の部屋で、元々、アリスのお兄さんが使っていたという部屋だった。
なぜ私の隣の部屋なのかというと、理由は婚約者だから、という訳のわからない理由を言われた。
お兄さんの部屋に残されていた家具などを、わざわざ空いている部屋に移し、哲平の使う家具の配置まで、全て公爵家から派遣された人間がやってくれたのだからすごい。
しかも、哲平を居候させるというお礼に月々、決まったお金がキュレル家に入ってくるのだから、良いことばかりだった。
「休み明けから、俺も一緒に行くから」
「どこへ?」
「学校に決まってんだろ」
「ああ、リトグル学園ね」
私と哲平は学生時代は学校と呼んでいたから、学園という言葉にあまり馴染みがない。
もちろん日本でもよく聞くけれど、私達の通っていたのは学校だった。
アリスが通っているのは、10歳から18歳までが通う学園で、貴族も平民も分け隔てなく一緒に学ぶ、というスローガンを掲げていて、とても大きな学園らしく、遠く離れた地域からも通えるように、なんと寮もあるらしい。
アリスは17歳クラスで、哲平も同じ学年に転入できるようになった。
辺境伯の息子も17歳クラスだったので、哲平はそのクラスに入るらしい。
アリスとは違うクラスだ。
「そういえば制服はあるの?」
「ある。ラス兄さんが手配してくれた」
「あんたのお兄さん、まだ公爵になってないのに、すごい権力者ね」
「そりゃそうだろ。友人が王子だから」
哲平はさらっととんでもない事を言った。
王子が友達って、すごい事なんじゃないの?
部屋の入口で立ったまま会話していると、執事のロッカが焦った顔をしてやって来た。
「お嬢様、ご友人だとおっしゃる方がみえられましたので、とりあえず応接間にお通ししたのですが」
「友人? ノアの事?」
日記を読んだかぎり、アリスに友達といえばノアくらいしか思いつかないんだけど。
「いえ、ノア様ではなく、アズール男爵令嬢と名乗られたのですが・・・・・」
アズール男爵令嬢…?
記憶にないわ。
「誰だ?」
「知らない」
哲平に聞かれて、首を何度も横に振ってから、ロッカに言う。
「ありがとう。待たせているのなら行くわ。あ、てっぺ、じゃなくて、テツ」
「ん?」
「暇だろうし、これでも読んでて」
一度部屋に戻り、日本語で色々と走り書きしたノートを持ってきて差し出すと、哲平は素直に受け取ってくれた。
「一人でも大丈夫か」
気遣う素振りをみせる哲平に「大丈夫」と頷いてから、ロッカに連れられて、応接間に向かう事にした。
さあ、アズール男爵令嬢というのが、どんな子かはわからないけど、休みの日にわざわざやって来る、という事は大物ではなさそうね。
一体、何をしに来たのかわからないけれど、今までのアリスだと思ったら大間違いだからね。
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