気弱な令嬢ではありませんので、やられた分はやり返します

風見ゆうみ

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第14話  嫌がらせをされる

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「授業終わったら、お前のクラスに行くから。それまでに何かあったら、すぐに連絡しろ」
「心配しなくても大丈夫よ」
「相手の心配をしてるだけだ」
「相手を心配する必要あるの?」

 聞き返すと、哲平は視線を宙にさまよわせたあと「ないな」と呟いた。
 
 先生に紹介するから、とキースに促され、哲平は彼と一緒に行ってしまったので、残された私達は自分達の教室へと向かう事にした。

「休み中に色々とあったのね。婚約者が変わった話とか、キースから教えてもらった時には、かなり驚いたよ。相手がイッシュバルド公爵家とまでは教えてもらえてなかったから、余計に驚いたけど」
「ご、ごめんね。なんだかんだとバタバタしていたから」
「それはしょうがないと思うけど…」

 ノアはそこまで言って言葉を区切ってから、少し俯いて続ける。

「休み前の日にアリスと別れる時に、なんだか嫌な予感がして、アリスの家に行こうかなって、休みの間は何度も思ったりしてたの」
「………」

 ノアはアリスの様子がおかしい事に気付いてはくれていたのね…。

 アリスの日記ではノアの事は悪く書かれていなかったし、小瓶の話をノアにするつもりはないけど、つかなくてもいい嘘は、彼女にはつきたくない気がした。

 私の事を話すべきなんだろうか…。
 でも、中身は違う人間なんですと言われても、普通は信用しないわよね…。

「……アリス?」
「ごめん。ボーッとしてた」
「体調が悪いんじゃないならいいけど」

 教室の場所がわからないから、ノアについて歩く。
 まだ授業開始までに時間があるからか、馬車の乗降場から校舎に入るまでの道にはたくさんの人がいて、知り合いなのかはわからないけど、私の方をチラチラと盗み見てくる視線を感じた。
 
 信じてくれるかはわからないけど、自分の席もどこかわからないわけだし、記憶喪失、とまではいかなくても、記憶が抜け落ちてる、という風にノアには伝えておこうかな。

「……あのね、ノア。私、休み中に色々とあって、ところどころ記憶が抜けちゃってるの。少しずつ思い出していくと思うけど、それまでは色々と教えてほしいんだけど…」
「え?! 大丈夫なの?! お医者さんには行った?!」
「あ、うん。それは大丈夫よ。心配してくれてありがとう」
「本当に大丈夫なの…? 記憶が抜け落ちるだなんてよっぽどの事じゃない」

 ノアが心配そうな表情で見つめてくる。
 ごめんね、ノア。
 嘘をつきたくてついてる訳ではないの。
 
「……大丈夫だから気にしないで」
「……ならいいけど、無理はしないでね。あ、だから、キースが辺境伯の息子だってことも忘れてたのね」

 ノアは心配そうな表情はそのままで、納得したように頷く。

 そうこう話をしている内に教室に着いた。
 学園の敷地はとても広く、校舎の大きさは違えど、教室の中は私が昔通っていた学校と似たようなものだった。
 机の並べ方も同じ感じだけど、席替えはないらしく、新学年になる際にくじ引きを引いて席が決まると、一年中、その席になるんだそうだ。
 そして、私の席は廊下寄りの前の方の席だとノアが教えてくれた。

「ここだよ」

 笑顔でノアは私の席まで行くと、笑顔で軽く机を叩いた。

 すると、私の席の近くに椅子を寄せて円陣を組んでいた4人の女子グループが、なぜか一斉にノアを見た。
 そして、すぐに私に視線を移し、何か訴えるかのように、視線と顎で私に何か合図を送ってきた。

 一体、何を言おうとしてるのかわからないんだけど。
 ノアをどこかにやれって言ってるの?
 というか、そんな合図で理解できる様な仲でもないでしょうよ。

 とりあえず無視しとこう。
 大体、良い人間だったら、あんな合図の仕方はしないでしょ。

「ありがと」

 ノアにお礼を言って、机の横に鞄をかけるところがあったから、鞄をかけて椅子を引いた時に気が付いた。
 
 なんかマンガとかで見る典型的なやつが行われていた。
 これ、やったの誰よ。
 ただの暇人でしょ。

 そう思いながら、再度、机の中を確認する。

 普通なら教科書やノートを入れるスペースには大量のゴミが突っ込まれていた。

 生ゴミじゃなくて良かったわ。
 何日間も放置してたら大変だったろうし。

「アリス?」

 ノアは何も気が付いていないようで、座ろうとしない私を見て不思議そうにしている。

 今までアリスはこんな嫌がらせをどうやって隠してたのかしら。
 ノアがいない時にゴミを捨てたりしてたの?
 
 ごめん、アリス。
 あなたはノアに隠したかったから、こんな事をされても我慢できていたみたいだけど、私には無理だわ。
 だって、これをやったらしき、さっきの女子グループは、あなたと同じ様に、ノアにこういう事をやってるという事を知られたくなさそうだったから。
 だから、私に合図を送って、ノアをどこかへやれって指図してきたんだと思うのよね。

「……アリス?」
「ごめんね、ノア。ちょっと話をつけるから」

 ノアに詫びを入れてから、4人グループの方に体を向ける。

「ねえ、こんな事をした暇人はあんた達?」

 立ったまま、彼女達を見下ろして聞くと、4人が4人とも、ぽかんと口を開けて固まった。
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