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第16話 心配される
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ゴミを片付け終えてから手を洗いに行き、教室に戻ってきてすぐにチャイムが鳴ったので、ノアは急いで自分の席に戻っていった。
授業が始まっても、クラスメイトの私への好奇と疑心の目を常に感じて、さすがに気分が悪かった。
言いたいことがあるんなら言いなさいよ。
と言ってやりたいとこだけど、誰かれかまわずに喧嘩を売るのは違うし、授業に集中することにした……んだけど、やっぱり無理だった。
なぜなら教科書に色々と落書きされているせいで、気が散ってしまう。
全てのページにではないけれど、ブスだの痩せすぎだの色々と悪口が書かれていて、見ているだけで腹が立ってくる。
教科書を買ってもらわないと駄目ね。
そういえば、哲平は教科書はどうしてるのかしら。
今日の時間割もわからなかったはずだけど。
落書きされた教科書、使うかしら?
結局、午前の授業が全て終わるまで、ノアと学級委員長だという男子生徒のシエル・グローゼルが話しかけてきたくらいで、他の人間は終始、私が暴れ出さないか見守っているような感じだった。
そして、昼休み。
昼食は教室では食べてはいけなくて、全員、食堂で食べる事になっているらしい。
ただ、全学年が一度に行くと一杯になってしまうから、学年ごとに時間が決められていて、授業の時間も少しずつズラしてあるらしい。
いつも食堂のビュッフェを食べているというノアに合わせて、私もそうしようと思ったんだけど、来客が来てしまった。
開いていた教室の扉の向こうから、教室にちらほら残っている人間に聞こえるようにか、哲平が大きな声で私を呼んだ。
「俺の可愛い可愛い婚約者さん! あまりにも可愛すぎるから面かしてくれねぇかなぁ」
「あら、ダーリン! 私も会いたかったわ! なんのお話かしら!」
イヤミったらしく言ってくる時は、大体機嫌が悪いときだ。
だけど、なんで機嫌が悪いのかはわからないから、こっちはふざけて言葉を返した。
「あ、ノア。悪いけど、キースと一緒に先に行って俺らの席もとっといてくれね?」
「え! あ! はい!」
「敬語じゃなくていいって」
「あ、うん! 了解!」
哲平も私の扱いには慣れたものなので、近寄っていく私には目もくれず、私の後ろからついてきたノアと会話すると、何も言わずに私の手首をつかんで歩き出す。
「いだだだ、痛い、痛い」
「お前、何やらかした」
「何が」
「俺のクラスにまでお前がおかしくなったって話がまわってきてるぞ」
「おかしくなったっていうのは失礼なんじゃない?」
私は言いたい事を言っただけなんだけど…?
そう思って文句を言うと、哲平は私を横目で見たあと頷く。
「そうだな。お前はおかしいのがつうじょ」
何と言おうとしているかわかったので、私の手首をつかんでいる哲平の手の甲をつねる。
「いってーな、地味に痛いからやめろ!」
「もしかして、さっき婚約者って口に出したの、わざと?」
「ただ売られた喧嘩を買うだけじゃ駄目だろ。俺とお前が婚約者同士だっていうのを学園全員に知らせねぇと」
「私のバックに公爵家がいるというのを知らしめるって事ね? でも、どうやって?」
「教師を使う」
哲平は私の質問にきっぱりと答えた。
「じゃあ、今から職員室に行くの?」
「そういう事だ」
広い校舎なのに職員室の場所をもう知っているのか、哲平は早足で迷う素振りもなく進んでいくから、こっちは小走りでついていくしかない。
哲平が私の腕をつかんでいるからか、制服のリボンタイの色が違う生徒から、すれちがいざま好奇の目で見られた。
この学園は男子はネクタイ、女子はリボンタイの色で学年がわかるようにしているらしくて、私達の学年は赤色だ。
それにしても、掴まれている腕が痛い。
「ちょっと、なんで怒ってるのよ」
「……お前が勝手ばかりするからだろ」
「だって机の中にあんな事されてたら、腹が立ってもしょうがないと思うわ」
「お前が俺の婚約者だっていう事が知れ渡ってからなら好き勝手してもいい! だけど、公爵家の後ろ楯がなけりゃ、お前はただの子爵令嬢だぞ! どんな奴に目をつけられるかわかんねぇだろうが!」
私の手首を握る力が強くなった。
そっか。
哲平は心配してくれてるのね。
「ごめん。先走りすぎたわ」
「……いつもの事だけどな」
「お礼にちゅーしたげようか」
「いらねー」
機嫌を直してくれたのか、哲平は私の目を見て笑ってくれた。
授業が始まっても、クラスメイトの私への好奇と疑心の目を常に感じて、さすがに気分が悪かった。
言いたいことがあるんなら言いなさいよ。
と言ってやりたいとこだけど、誰かれかまわずに喧嘩を売るのは違うし、授業に集中することにした……んだけど、やっぱり無理だった。
なぜなら教科書に色々と落書きされているせいで、気が散ってしまう。
全てのページにではないけれど、ブスだの痩せすぎだの色々と悪口が書かれていて、見ているだけで腹が立ってくる。
教科書を買ってもらわないと駄目ね。
そういえば、哲平は教科書はどうしてるのかしら。
今日の時間割もわからなかったはずだけど。
落書きされた教科書、使うかしら?
結局、午前の授業が全て終わるまで、ノアと学級委員長だという男子生徒のシエル・グローゼルが話しかけてきたくらいで、他の人間は終始、私が暴れ出さないか見守っているような感じだった。
そして、昼休み。
昼食は教室では食べてはいけなくて、全員、食堂で食べる事になっているらしい。
ただ、全学年が一度に行くと一杯になってしまうから、学年ごとに時間が決められていて、授業の時間も少しずつズラしてあるらしい。
いつも食堂のビュッフェを食べているというノアに合わせて、私もそうしようと思ったんだけど、来客が来てしまった。
開いていた教室の扉の向こうから、教室にちらほら残っている人間に聞こえるようにか、哲平が大きな声で私を呼んだ。
「俺の可愛い可愛い婚約者さん! あまりにも可愛すぎるから面かしてくれねぇかなぁ」
「あら、ダーリン! 私も会いたかったわ! なんのお話かしら!」
イヤミったらしく言ってくる時は、大体機嫌が悪いときだ。
だけど、なんで機嫌が悪いのかはわからないから、こっちはふざけて言葉を返した。
「あ、ノア。悪いけど、キースと一緒に先に行って俺らの席もとっといてくれね?」
「え! あ! はい!」
「敬語じゃなくていいって」
「あ、うん! 了解!」
哲平も私の扱いには慣れたものなので、近寄っていく私には目もくれず、私の後ろからついてきたノアと会話すると、何も言わずに私の手首をつかんで歩き出す。
「いだだだ、痛い、痛い」
「お前、何やらかした」
「何が」
「俺のクラスにまでお前がおかしくなったって話がまわってきてるぞ」
「おかしくなったっていうのは失礼なんじゃない?」
私は言いたい事を言っただけなんだけど…?
そう思って文句を言うと、哲平は私を横目で見たあと頷く。
「そうだな。お前はおかしいのがつうじょ」
何と言おうとしているかわかったので、私の手首をつかんでいる哲平の手の甲をつねる。
「いってーな、地味に痛いからやめろ!」
「もしかして、さっき婚約者って口に出したの、わざと?」
「ただ売られた喧嘩を買うだけじゃ駄目だろ。俺とお前が婚約者同士だっていうのを学園全員に知らせねぇと」
「私のバックに公爵家がいるというのを知らしめるって事ね? でも、どうやって?」
「教師を使う」
哲平は私の質問にきっぱりと答えた。
「じゃあ、今から職員室に行くの?」
「そういう事だ」
広い校舎なのに職員室の場所をもう知っているのか、哲平は早足で迷う素振りもなく進んでいくから、こっちは小走りでついていくしかない。
哲平が私の腕をつかんでいるからか、制服のリボンタイの色が違う生徒から、すれちがいざま好奇の目で見られた。
この学園は男子はネクタイ、女子はリボンタイの色で学年がわかるようにしているらしくて、私達の学年は赤色だ。
それにしても、掴まれている腕が痛い。
「ちょっと、なんで怒ってるのよ」
「……お前が勝手ばかりするからだろ」
「だって机の中にあんな事されてたら、腹が立ってもしょうがないと思うわ」
「お前が俺の婚約者だっていう事が知れ渡ってからなら好き勝手してもいい! だけど、公爵家の後ろ楯がなけりゃ、お前はただの子爵令嬢だぞ! どんな奴に目をつけられるかわかんねぇだろうが!」
私の手首を握る力が強くなった。
そっか。
哲平は心配してくれてるのね。
「ごめん。先走りすぎたわ」
「……いつもの事だけどな」
「お礼にちゅーしたげようか」
「いらねー」
機嫌を直してくれたのか、哲平は私の目を見て笑ってくれた。
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