18 / 52
第17話 職員室で叫ばれる
しおりを挟む
私達の教室は二階だったけど、職員室は渡り廊下を渡った隣の校舎の一階にあった。
扉を開けてみると、雰囲気や机の配置などは日本の学校と変わらないけど、広さと机の多さがすごかった。
在学生が多いから、先生の数が多いのも当たり前の話なんだろうけど。
先生も交代で昼休みをとっているようで、机の多さに比べて、人は少ない。
担任の先生でも探すのかな、と思っていたら、哲平は私を連れて中に入ってから職員室の扉をしめると、私の手首をつかんでいた手をはなし、今度はその手で私の肩を抱き寄せると叫んだ。
「せんせー、昼休み中にすいません! この度、イグス・イッシュバルドとアリス・キュレルは婚約いたしました!」
え?
何を言ってんの。
そんなの知ってるんじゃないの?
イッシュバルド家ってかなり有名なはずよね?
何にしても先に何をするつもりなのかを哲平から聞いておけば良かった。
どうしたらいいかわからないわ。
笑ってたらいいの?
全くわからないから、とりあえず笑っておく。
人が少ないのもあり、静かだった職員室に哲平の声が響き渡ったので、中にいる先生達の視線がこちらに集まったのを確認して、哲平は続ける。
「なので、俺の可愛い婚約者に手をだすような輩がいたら、イッシュバルド家が相手になるって、皆に伝えておいていただけますか」
抱き寄せられたままの状態なので、私も作り笑顔のまま、頭を哲平の胸に寄せてみる。
ああ、ちゃんと笑えてるかしら。
引きつった笑いになってたらどうしよう。
最初は先生達も呆気にとられていたけれど、一番近くにいた先生が、無言でこくこくと首を縦にふると、波紋が広がるように、周りの先生も首を縦に振っていく。
なんか、恥ずかしくなってきたわ。
そう思うのが遅いかもしれないけど!
「では、失礼します」
ぐい、と哲平に頭をおされる形で、彼と一緒に頭を下げてから職員室を出る。
扉をしめてすぐに、職員室の中がざわめいているのがわかったので、先生達にとっても、かなり衝撃の出来事だったみたい。
「はー、疲れた」
哲平が隣で大きく息を吐いた。
やっぱり緊張はしてたのね。
事前に説明は欲しかったけど、ここはちゃんと礼を言わないといけないところなのだろうし言っておく。
「ありがとう」
「どういたしまして。少しは牽制にはなるだろ。だけど、ラス兄さんが言ってたとおり、あんま無茶すんなよ」
後頭部をぽんぽんと撫でられた。
普段は子供っぽいのに、こういう時は哲平が余裕ぶるから、なんだか癪に障る。
と思ったけど、せっかくの厚意なんだから、そういう気持ちは駄目よね。
それにこれでだいぶ動きやすくなったわ。
私が公爵家の次男と婚約している事を先生達がホームルームで話をしてくれるだろうから。
「さて、次は誰をやっつけよっかな!」
「なんでそんなに好戦的なんだよ…。とりあえず、まずは昼飯だ。腹減った」
「腹が減っては戦はできぬ、よね」
「なんでもかんでも戦いに繋げるな」
食堂の場所は哲平がキースから聞いているらしく、そちらに向かって歩きながら、どうして私が好戦的になっているかという話をすると、哲平が訝しげな顔をして聞いてくる。
「なんで、アリスはそんな目に合ってるんだ。なんか、ターゲットにされる理由でもあるのか?」
「わからない。わからないけど、チラッと見たのよね。机の中に入っていたゴミの中に気になるものを」
「なんだよ」
「キースに近づくなって書かれた紙があった」
その言葉を聞いて、哲平が真剣な表情で私を見た。
正確には、キースくんに近づくな。
だったけど、意味は同じでしょ。
ノアと仲が良いせいで、キースとの距離がアリスは他の女性より飛び抜けて近かったのだと考えられる。
それに、思ったよりもキースはイケメンだった。
しかも、辺境伯の息子。
体型もモデル体型だし、性格もそんなに悪くなさそうだった。
となるとモテるわよね。
「……やっかみかよ」
「はっきりそうだとはわからないけど」
「くだらね。そういうのキースは嫌いそうだけどな」
「そういうのを好きっていう男だったら腹パン食らわせたい」
「やめろ」
話しているうちに食堂に着いたので、人でごった返す食堂の中でキースとノアの姿を探す事にした。
扉を開けてみると、雰囲気や机の配置などは日本の学校と変わらないけど、広さと机の多さがすごかった。
在学生が多いから、先生の数が多いのも当たり前の話なんだろうけど。
先生も交代で昼休みをとっているようで、机の多さに比べて、人は少ない。
担任の先生でも探すのかな、と思っていたら、哲平は私を連れて中に入ってから職員室の扉をしめると、私の手首をつかんでいた手をはなし、今度はその手で私の肩を抱き寄せると叫んだ。
「せんせー、昼休み中にすいません! この度、イグス・イッシュバルドとアリス・キュレルは婚約いたしました!」
え?
何を言ってんの。
そんなの知ってるんじゃないの?
イッシュバルド家ってかなり有名なはずよね?
何にしても先に何をするつもりなのかを哲平から聞いておけば良かった。
どうしたらいいかわからないわ。
笑ってたらいいの?
全くわからないから、とりあえず笑っておく。
人が少ないのもあり、静かだった職員室に哲平の声が響き渡ったので、中にいる先生達の視線がこちらに集まったのを確認して、哲平は続ける。
「なので、俺の可愛い婚約者に手をだすような輩がいたら、イッシュバルド家が相手になるって、皆に伝えておいていただけますか」
抱き寄せられたままの状態なので、私も作り笑顔のまま、頭を哲平の胸に寄せてみる。
ああ、ちゃんと笑えてるかしら。
引きつった笑いになってたらどうしよう。
最初は先生達も呆気にとられていたけれど、一番近くにいた先生が、無言でこくこくと首を縦にふると、波紋が広がるように、周りの先生も首を縦に振っていく。
なんか、恥ずかしくなってきたわ。
そう思うのが遅いかもしれないけど!
「では、失礼します」
ぐい、と哲平に頭をおされる形で、彼と一緒に頭を下げてから職員室を出る。
扉をしめてすぐに、職員室の中がざわめいているのがわかったので、先生達にとっても、かなり衝撃の出来事だったみたい。
「はー、疲れた」
哲平が隣で大きく息を吐いた。
やっぱり緊張はしてたのね。
事前に説明は欲しかったけど、ここはちゃんと礼を言わないといけないところなのだろうし言っておく。
「ありがとう」
「どういたしまして。少しは牽制にはなるだろ。だけど、ラス兄さんが言ってたとおり、あんま無茶すんなよ」
後頭部をぽんぽんと撫でられた。
普段は子供っぽいのに、こういう時は哲平が余裕ぶるから、なんだか癪に障る。
と思ったけど、せっかくの厚意なんだから、そういう気持ちは駄目よね。
それにこれでだいぶ動きやすくなったわ。
私が公爵家の次男と婚約している事を先生達がホームルームで話をしてくれるだろうから。
「さて、次は誰をやっつけよっかな!」
「なんでそんなに好戦的なんだよ…。とりあえず、まずは昼飯だ。腹減った」
「腹が減っては戦はできぬ、よね」
「なんでもかんでも戦いに繋げるな」
食堂の場所は哲平がキースから聞いているらしく、そちらに向かって歩きながら、どうして私が好戦的になっているかという話をすると、哲平が訝しげな顔をして聞いてくる。
「なんで、アリスはそんな目に合ってるんだ。なんか、ターゲットにされる理由でもあるのか?」
「わからない。わからないけど、チラッと見たのよね。机の中に入っていたゴミの中に気になるものを」
「なんだよ」
「キースに近づくなって書かれた紙があった」
その言葉を聞いて、哲平が真剣な表情で私を見た。
正確には、キースくんに近づくな。
だったけど、意味は同じでしょ。
ノアと仲が良いせいで、キースとの距離がアリスは他の女性より飛び抜けて近かったのだと考えられる。
それに、思ったよりもキースはイケメンだった。
しかも、辺境伯の息子。
体型もモデル体型だし、性格もそんなに悪くなさそうだった。
となるとモテるわよね。
「……やっかみかよ」
「はっきりそうだとはわからないけど」
「くだらね。そういうのキースは嫌いそうだけどな」
「そういうのを好きっていう男だったら腹パン食らわせたい」
「やめろ」
話しているうちに食堂に着いたので、人でごった返す食堂の中でキースとノアの姿を探す事にした。
344
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
婚約者の命令で外れない仮面を着けた私は婚約破棄を受けたから、仮面を外すことにしました
天宮有
恋愛
婚約者バルターに魔法が上達すると言われて、伯爵令嬢の私シエルは顔の半分が隠れる仮面を着けることとなっていた。
魔法は上達するけど仮面は外れず、私達は魔法学園に入学する。
仮面のせいで周囲から恐れられていた私は、バルターから婚約破棄を受けてしまう。
その後、私を恐れていなかった伯爵令息のロランが、仮面の外し方を教えてくれる。
仮面を外しても魔法の実力はそのままで、私の評判が大きく変わることとなっていた。
悪役令嬢まさかの『家出』
にとこん。
恋愛
王国の侯爵令嬢ルゥナ=フェリシェは、些細なすれ違いから突発的に家出をする。本人にとっては軽いお散歩のつもりだったが、方向音痴の彼女はそのまま隣国の帝国に迷い込み、なぜか牢獄に収監される羽目に。しかし無自覚な怪力と天然ぶりで脱獄してしまい、道に迷うたびに騒動を巻き起こす。
一方、婚約破棄を告げようとした王子レオニスは、当日にルゥナが失踪したことで騒然。王宮も侯爵家も大混乱となり、レオニス自身が捜索に出るが、恐らく最後まで彼女とは一度も出会えない。
ルゥナは道に迷っただけなのに、なぜか人助けを繰り返し、帝国の各地で英雄視されていく。そして気づけば彼女を慕う男たちが集まり始め、逆ハーレムの中心に。だが本人は一切自覚がなく、むしろ全員の好意に対して煙たがっている。
帰るつもりもなく、目的もなく、ただ好奇心のままに彷徨う“無害で最強な天然令嬢”による、帝国大騒動ギャグ恋愛コメディ、ここに開幕!
婚約破棄された私。大嫌いなアイツと婚約することに。大嫌い!だったはずなのに……。
さくしゃ
恋愛
「婚約破棄だ!」
素直であるが故に嘘と見栄で塗り固められた貴族社会で嫌われ孤立していた"主人公「セシル」"は、そんな自分を初めて受け入れてくれた婚約者から捨てられた。
唯一自分を照らしてくれた光を失い絶望感に苛まれるセシルだったが、家の繁栄のためには次の婚約相手を見つけなければならず……しかし断られ続ける日々。
そんなある日、ようやく縁談が決まり乗り気ではなかったが指定されたレストランへ行くとそこには、、、
「れ、レント!」
「せ、セシル!」
大嫌いなアイツがいた。抵抗するが半ば強制的に婚約することになってしまい不服だった。不服だったのに……この気持ちはなんなの?
大嫌いから始まるかなり笑いが入っている不器用なヒロインと王子による恋物語。
15歳という子供から大人へ変わり始める時期は素直になりたいけど大人に見られたいが故に背伸びをして強がったりして素直になれないものーーそんな感じの物語です^_^
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる