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第25話 教えてあげる
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後ろに避けたけれど全部は避けられなかった。
中身は紅茶だったのか、うっすら茶色のシミが白いシャツに胸元からお腹あたりまで広がっていく。
熱くなくて良かった。
火傷したら最悪だもの。
腹が立って殴ろうとしたかもしれない。
「そんなの、まだわからないでしょう!?」
人にお茶をかけても悪い事をしたという気持ちがないようで、ミラベル伯爵令嬢が叫んだ。
「まあ、キースに聞いてみないとわからないでしょうね」
「そうよ! ちゃんとお父様の方からキース様に聞いてもらうつもりよ!」
自分で聞きなさいよ、それくらい。
と、心の中ではツッコミを入れつつ、思ったよりもカップの中身が残っていたのか、シャツの大部分が素肌にはりついて気持ち悪い。
まったく、腹が立ったからって、お茶を人にぶっかけるなんてどうなのよ。
ドラマかなんかの見過ぎじゃないの?
って、この国にはドラマはないか…。
貴族の作法なんかより、気持ちを落ち着かせる方法を学んだほうがいい気がするわ。
……私も人の事を言えないけどね。
「あの、私、この格好で帰らないと駄目なんですけど、待ってくれている彼にはなんと言えば?」
冷めた表情で聞くと、まだ怒りが冷めやらない様子でミラベル伯爵令嬢は睨んでくる。
「手が滑っただけよ」
「すごいですね。わざわざ、ガゼボの中からカップ持って出てきて、その言い訳ですか」
「うるさいわね!あなたは私の言うことを黙って聞いていればいいのよ!」
「嫌ですよ」
なんで、私が自分に納得のいかない事で、彼女の言うことをきかないといけないの?
無言で彼女に近付いていくと、彼女を守るように騎士達が前に立ちはだかるけど、横を通り過ぎてガゼボの中に入る。
中に残されていた子達が唖然とした表情で私を見るから、笑顔で言う。
「こちら、いただきますね」
彼女達の前に出されていた、おそらく手のつけられていないであろうカップをとると、彼女達に有無を言わせない内に持っていく。
そして、そのままミラベル伯爵令嬢の元へ向かうと、また、騎士達が邪魔をする前に、階段で躓いたフリをして、カップの中に入った紅茶を彼女の足元にぶちまけた。
もったいないけど許してほしい。
あとで、ちゃんと掃除もするんで。
「何するんですの?!」
「ごめんなさい。躓きそうになっちゃいましたぁ」
「あなた、何をふざけて!」
「どうでした? されて、嫌な気分になりませんでした?」
尋ねると、ミラベル伯爵令嬢は私の質問の意味がわからなかったのか眉をひそめた。
なので、わかるように、ちゃんと説明してさしあげる。
「あなたは私にそんな事をされて嫌じゃなかったですか? ああ、躓きそうになっちゃったの、しょうがないわね、って、私を許してくれます?」
「そんな訳ないでしょう!」
「じゃあ、どう思ったんです?」
「腹が立ったに決まってるでしょう!」
そうよね。
本当に手が滑っただけで服にかかっちゃっただけでも、一瞬はうわって気持ちになるのに、わざとやられた日にはイラッとするわよね。
「私もそうなんですけど? あなたが私にやった事を、こっちは控えめにやり返しただけですが?」
しかも、こっちは制服が汚れて気持ち悪い事この上ないし。
だけど、何度も思うけど、精神が低レベルの人間と同じ土俵に立つ気はない。
苛立ってお茶をかけるなんて、私にはドラマかなんかの世界で十分。
ただ、ちゃんと彼女にわからせなければいけない。
あんたがなめきってる相手は、今までとは違うし、何より相手が誰であっても、こんな事はしてはいけないって事を。
「やり返すだなんて低俗な」
「いじめを正当化するような人に言われても、痛くも痒くもないわね」
「あなた、さっきから誰を相手にしていると思ってるの!」
敬語をなくしたのが気に食わなかったのか、すごい剣幕で、ミラベル伯爵令嬢が私の方に向かってこようとした、その時だった。
彼女の背後に誰かがいる事に気が付いた。
「キース」
私がその人物の名を口に出すと、ミラベル伯爵令嬢が動きを止めた。
先程までの憤怒の表情は一瞬にして消え去り、みるみるうちに驚愕の表情に変わっていく。
「話に入っても良いか」
ばっちり視線が合い、キースが私に尋ねているのだとわかったから、私は無言で首を縦に振った。
中身は紅茶だったのか、うっすら茶色のシミが白いシャツに胸元からお腹あたりまで広がっていく。
熱くなくて良かった。
火傷したら最悪だもの。
腹が立って殴ろうとしたかもしれない。
「そんなの、まだわからないでしょう!?」
人にお茶をかけても悪い事をしたという気持ちがないようで、ミラベル伯爵令嬢が叫んだ。
「まあ、キースに聞いてみないとわからないでしょうね」
「そうよ! ちゃんとお父様の方からキース様に聞いてもらうつもりよ!」
自分で聞きなさいよ、それくらい。
と、心の中ではツッコミを入れつつ、思ったよりもカップの中身が残っていたのか、シャツの大部分が素肌にはりついて気持ち悪い。
まったく、腹が立ったからって、お茶を人にぶっかけるなんてどうなのよ。
ドラマかなんかの見過ぎじゃないの?
って、この国にはドラマはないか…。
貴族の作法なんかより、気持ちを落ち着かせる方法を学んだほうがいい気がするわ。
……私も人の事を言えないけどね。
「あの、私、この格好で帰らないと駄目なんですけど、待ってくれている彼にはなんと言えば?」
冷めた表情で聞くと、まだ怒りが冷めやらない様子でミラベル伯爵令嬢は睨んでくる。
「手が滑っただけよ」
「すごいですね。わざわざ、ガゼボの中からカップ持って出てきて、その言い訳ですか」
「うるさいわね!あなたは私の言うことを黙って聞いていればいいのよ!」
「嫌ですよ」
なんで、私が自分に納得のいかない事で、彼女の言うことをきかないといけないの?
無言で彼女に近付いていくと、彼女を守るように騎士達が前に立ちはだかるけど、横を通り過ぎてガゼボの中に入る。
中に残されていた子達が唖然とした表情で私を見るから、笑顔で言う。
「こちら、いただきますね」
彼女達の前に出されていた、おそらく手のつけられていないであろうカップをとると、彼女達に有無を言わせない内に持っていく。
そして、そのままミラベル伯爵令嬢の元へ向かうと、また、騎士達が邪魔をする前に、階段で躓いたフリをして、カップの中に入った紅茶を彼女の足元にぶちまけた。
もったいないけど許してほしい。
あとで、ちゃんと掃除もするんで。
「何するんですの?!」
「ごめんなさい。躓きそうになっちゃいましたぁ」
「あなた、何をふざけて!」
「どうでした? されて、嫌な気分になりませんでした?」
尋ねると、ミラベル伯爵令嬢は私の質問の意味がわからなかったのか眉をひそめた。
なので、わかるように、ちゃんと説明してさしあげる。
「あなたは私にそんな事をされて嫌じゃなかったですか? ああ、躓きそうになっちゃったの、しょうがないわね、って、私を許してくれます?」
「そんな訳ないでしょう!」
「じゃあ、どう思ったんです?」
「腹が立ったに決まってるでしょう!」
そうよね。
本当に手が滑っただけで服にかかっちゃっただけでも、一瞬はうわって気持ちになるのに、わざとやられた日にはイラッとするわよね。
「私もそうなんですけど? あなたが私にやった事を、こっちは控えめにやり返しただけですが?」
しかも、こっちは制服が汚れて気持ち悪い事この上ないし。
だけど、何度も思うけど、精神が低レベルの人間と同じ土俵に立つ気はない。
苛立ってお茶をかけるなんて、私にはドラマかなんかの世界で十分。
ただ、ちゃんと彼女にわからせなければいけない。
あんたがなめきってる相手は、今までとは違うし、何より相手が誰であっても、こんな事はしてはいけないって事を。
「やり返すだなんて低俗な」
「いじめを正当化するような人に言われても、痛くも痒くもないわね」
「あなた、さっきから誰を相手にしていると思ってるの!」
敬語をなくしたのが気に食わなかったのか、すごい剣幕で、ミラベル伯爵令嬢が私の方に向かってこようとした、その時だった。
彼女の背後に誰かがいる事に気が付いた。
「キース」
私がその人物の名を口に出すと、ミラベル伯爵令嬢が動きを止めた。
先程までの憤怒の表情は一瞬にして消え去り、みるみるうちに驚愕の表情に変わっていく。
「話に入っても良いか」
ばっちり視線が合い、キースが私に尋ねているのだとわかったから、私は無言で首を縦に振った。
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