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第二部
第2話 元婚約者に声を掛けられる
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ノアの事を教えてもらってから、約一ヶ月が過ぎた。
その間は平穏な生活が続いていて学園生活にも慣れてきたので、そろそろアリスの元婚約者への対処を考えはじめていた時だった。
学園が休みの日の朝、目が覚めるとなぜか無性にパフェが食べたくなった。
「パフェが食べたい」
「……は?」
朝食時に真剣な表情で言ったからか、哲平は眉をひそめて聞き返してきたけれど、すぐに私の意図を理解してくれた。
「この家の料理人に作ってもらえばいいだろ」
「それ、ただのデザートじゃない」
「パフェはデザートじゃねぇのかよ…」
「いつもと違う雰囲気の所で食べたいのよ!」
「……しょうがねぇな」
「連れてってくれる!?」
「連れて行かなかったらしつこく言い続けるだろ!」
今日は朝から天気も良く、せっかくなのでいつもよりも気合を入れてお洒落をして、哲平というATM……ではなく、財布……でもなく素敵な婚約者と共に、近くの繁華街に出かけた。
目的地の店は庶民にも人気のある、白を基調とした可愛らしい外観のカフェで、メルヘンチックな小物も店内に飾ってあるからか、女性客やカップルが多く、私達が着いた時にはすでに店の中は満席だった。
並ぶのが好きではないのだけれど、ここまで来た以上、並んで待つしかないと諦めて、店の人から渡されたメニューを哲平と2人で見たりしながら、他愛のない話をしていると、すぐに順番が来た。
案内された席は窓際の4人掛けの席だった。
席に座って待っている間に決めていたパフェと飲み物を店員さんにオーダーしようと思い、声を発しようとした時だった
「おい、ありす」
「何よ」
「あれって…」
哲平が指さした先にいた人物を見て、私は思わず眉根を寄せた。
「何であいつがここにいんのよ。っていうか、メニュー貸して。顔隠したいから」
相手にバレる前にメニューで顔を隠そうとしたのだが、時すでに遅しだった。
「おや、そこにいるのはキュレル子爵令嬢じゃないか」
私の左隣の席に座っていた男は、さっきまでは彼の向かいに座っている可愛らしい女の子に夢中だったのに、私の存在に気が付くと、それはもう嬉しそうな顔をして、私の方に身体を向けて声を掛けてきた。
聞こえなかったふりをする。
だって、私と彼は他人であり、もう接点はないはずだから。
やり返してやるつもりではいたけれど、今日は何も考えてなかった。
ただ、パフェが食べたかっただけなのに…!
「キュレル子爵令嬢、僕だよ」
ああ、そうですか。
オレオレ詐欺の僕バージョン?
「僕の事、覚えてない?」
「……」
とりあえず無視して、メニューを見る。
「キュレル子爵令嬢、おーい、おーい」
わざわざ、私の目の前に手を出してきて、メニューを見るのを邪魔してきたので、我慢できなくなって口を開く。
「ごきげんよう。知らない人とは話さないように教育されてますの。ですから、声を掛けるのはやめて下さいます? そして、さようなら」
にっこりと微笑んでから、もう顔を隠すのは諦めて、メニューをテーブルの上に置いて哲平に尋ねる。
「テツは何食べるの?」
「とりあえずお前は好きなもん食えよ。俺は飲み物だけでいい。余ったら食うから」
「じゃあ多めに頼もうかな。色んなもの食べたいし」
「2人で食い切れる量にしろよ?」
「キュレル子爵令嬢」
諦めずに男は話しかけてくる。
うるさいな。
無視しよう。
「どうしようかな。フルーツパフェにするかチョコレートパフェにするか。いっその事、2つ頼んじゃう?」
「どうせ、お前はちょっとしか食わなくて、ほとんど俺に食わすんだから1つにしろ」
「ちょっと食べたら満足しちゃうんだから、しょうがないでしょ。だから、美味しいものをちょっとずつ食べたいのよ」
アリスはいじめられていたせいか、食事も喉をとおらなかったようで、かなりの少食になっていた。
だから、胃が小さくなっていて、転生してすぐは胃が食べ物を受け付けず、ほとんど食べられなかった。
今は、だいぶ食べられるようになってきて、今度は体重を気にしないといけなくなってきた…。
「キュレル子爵令嬢」
しつこいわね。
手が滑ったふりをして殴って黙らせようかしら。
「こいつに何か用?」
無視を決め込んでいた私だったけど、とうとう哲平が黙っていられずに、私にひたすら話しかけていた腰くらいまである金色の長い髪を一つにまとめた、見た目は好青年の男に話しかけた。
「ああ、彼女は僕の元婚約者でね」
見た目爽やか男は、哲平に向かって笑顔で答えた。
そう私達の席の隣に座っていたのは、アリスの元婚約者、ルーベン・ホットラードだった。
その間は平穏な生活が続いていて学園生活にも慣れてきたので、そろそろアリスの元婚約者への対処を考えはじめていた時だった。
学園が休みの日の朝、目が覚めるとなぜか無性にパフェが食べたくなった。
「パフェが食べたい」
「……は?」
朝食時に真剣な表情で言ったからか、哲平は眉をひそめて聞き返してきたけれど、すぐに私の意図を理解してくれた。
「この家の料理人に作ってもらえばいいだろ」
「それ、ただのデザートじゃない」
「パフェはデザートじゃねぇのかよ…」
「いつもと違う雰囲気の所で食べたいのよ!」
「……しょうがねぇな」
「連れてってくれる!?」
「連れて行かなかったらしつこく言い続けるだろ!」
今日は朝から天気も良く、せっかくなのでいつもよりも気合を入れてお洒落をして、哲平というATM……ではなく、財布……でもなく素敵な婚約者と共に、近くの繁華街に出かけた。
目的地の店は庶民にも人気のある、白を基調とした可愛らしい外観のカフェで、メルヘンチックな小物も店内に飾ってあるからか、女性客やカップルが多く、私達が着いた時にはすでに店の中は満席だった。
並ぶのが好きではないのだけれど、ここまで来た以上、並んで待つしかないと諦めて、店の人から渡されたメニューを哲平と2人で見たりしながら、他愛のない話をしていると、すぐに順番が来た。
案内された席は窓際の4人掛けの席だった。
席に座って待っている間に決めていたパフェと飲み物を店員さんにオーダーしようと思い、声を発しようとした時だった
「おい、ありす」
「何よ」
「あれって…」
哲平が指さした先にいた人物を見て、私は思わず眉根を寄せた。
「何であいつがここにいんのよ。っていうか、メニュー貸して。顔隠したいから」
相手にバレる前にメニューで顔を隠そうとしたのだが、時すでに遅しだった。
「おや、そこにいるのはキュレル子爵令嬢じゃないか」
私の左隣の席に座っていた男は、さっきまでは彼の向かいに座っている可愛らしい女の子に夢中だったのに、私の存在に気が付くと、それはもう嬉しそうな顔をして、私の方に身体を向けて声を掛けてきた。
聞こえなかったふりをする。
だって、私と彼は他人であり、もう接点はないはずだから。
やり返してやるつもりではいたけれど、今日は何も考えてなかった。
ただ、パフェが食べたかっただけなのに…!
「キュレル子爵令嬢、僕だよ」
ああ、そうですか。
オレオレ詐欺の僕バージョン?
「僕の事、覚えてない?」
「……」
とりあえず無視して、メニューを見る。
「キュレル子爵令嬢、おーい、おーい」
わざわざ、私の目の前に手を出してきて、メニューを見るのを邪魔してきたので、我慢できなくなって口を開く。
「ごきげんよう。知らない人とは話さないように教育されてますの。ですから、声を掛けるのはやめて下さいます? そして、さようなら」
にっこりと微笑んでから、もう顔を隠すのは諦めて、メニューをテーブルの上に置いて哲平に尋ねる。
「テツは何食べるの?」
「とりあえずお前は好きなもん食えよ。俺は飲み物だけでいい。余ったら食うから」
「じゃあ多めに頼もうかな。色んなもの食べたいし」
「2人で食い切れる量にしろよ?」
「キュレル子爵令嬢」
諦めずに男は話しかけてくる。
うるさいな。
無視しよう。
「どうしようかな。フルーツパフェにするかチョコレートパフェにするか。いっその事、2つ頼んじゃう?」
「どうせ、お前はちょっとしか食わなくて、ほとんど俺に食わすんだから1つにしろ」
「ちょっと食べたら満足しちゃうんだから、しょうがないでしょ。だから、美味しいものをちょっとずつ食べたいのよ」
アリスはいじめられていたせいか、食事も喉をとおらなかったようで、かなりの少食になっていた。
だから、胃が小さくなっていて、転生してすぐは胃が食べ物を受け付けず、ほとんど食べられなかった。
今は、だいぶ食べられるようになってきて、今度は体重を気にしないといけなくなってきた…。
「キュレル子爵令嬢」
しつこいわね。
手が滑ったふりをして殴って黙らせようかしら。
「こいつに何か用?」
無視を決め込んでいた私だったけど、とうとう哲平が黙っていられずに、私にひたすら話しかけていた腰くらいまである金色の長い髪を一つにまとめた、見た目は好青年の男に話しかけた。
「ああ、彼女は僕の元婚約者でね」
見た目爽やか男は、哲平に向かって笑顔で答えた。
そう私達の席の隣に座っていたのは、アリスの元婚約者、ルーベン・ホットラードだった。
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