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第5話 今ならまだ間に合うわ
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ローリーにあんな事を聞かされたせいか、授業に全然、集中できなかった。
ジェインがわたしの事を好き?
それは子供の頃の話でしょう?
それに、そんな事を言われたら、わたしが余計にジェインを意識してしまうという事をローリーは考えなかったのかしら?
もちろん、それだけでジェインを好きになったりしないし、ジェインが本当にわたしを好きなのかもわからない。
何より、わたしとローリーが婚約して何年も経つのだから、ジェインのわたしへの恋心が消え去っていてもおかしくない。
ジェインには浮いた話は聞かないけれど、かといって、わたし以外の女子ともまんべんなく話をしているし、友人達からもジェインについてからかわれた事もない。
あと、気になったのは、ローリーが読んでいた本だ。
タイトルには『背徳の恋』と書かれていた。
まさかローリー、先生に声をかけようとしているんじゃないわよね…?
もしくは婚活パーティーで知り合った熟女とか…?
婚約者や既婚者との恋をしてみようだなんて思ってるんじゃないわよね?
……こんな事を心配しないといけない婚約者と、このまま婚約をし続けてもいいの?
やはり条件を付けて、それが守れない様なら、婚約を解消するという事にした方が良いのかしら…。
わたしは歯が浮くようなセリフを言うローリーの事が好きだった。
愛情を疑う事なんて今までなかった。
今までのローリーで良いのに、どうしたらわかってくれるの?
人によっては、ここまでわかってもらえない時点で、ローリーの事は切り捨ててしまうのかしら…?
でも、わたしの場合は、今まで以上に、婚約解消をしにくくなってしまった。
ローリーからジェインの話聞いてしまったせいで、今、私がローリーとの婚約を断ったら、ジェインとの仲を疑われてしまう気がする。
私の家とローリーの家は仲が良いけど、ジェインの家とも同様に仲が良い。
ローリーと私が婚約を解消したと聞いたら、ジェインの家族はわたしの事を可愛がってくださっているから、きっとジェインの婚約者になってほしいと申し出てくれそうな気がする。
だって、この国では、婚約解消してしまったり、破棄されてしまった女性は欠陥品扱いされる。
だから、婚約者になりたいという男性って、そういないと思うから、ジェインのご家族は気を遣ってくれそうなのよね。
まさか、ローリーはわたしがここまで悩む事を考えて、ジェインの気持ちを口にしたの?
あああ、ちょっと待って。
本当にジェインがわたしの事を好きかどうかもわからないわ。
それに、そうであったとしても、今のわたしはどうしてあげる事も出来ない。
ローリーが元に戻ってくれたら、わたしは今まで通りの関係で良いんだから。
「可愛いリリアーナ。どうしたの? 次は移動教室だよ」
悩んでいる内に、1限目の授業が終わってしまっていた。
ローリーはわたしの顔を覗き込んで、にこりと微笑む。
「眉間にシワが寄っているリリアーナも可愛いよ。色んなリリアーナが見たくなってきたな。悲しむ顔は見たくないけど、困ってる顔も可愛いから、ちょっと困らせたくなってきた」
「意味がわからないわ。わたしはこれ以上、変な事で頭を悩ませたくないのよ」
「変な事じゃないよ。大切な事だ。この出来事をきっかけに、僕と君との絆を深く強めていかないと」
「ローリー、もしかしたら、このままだと婚約が解消される事になるかもしれないのよ? ジェインと自分を比べるのはやめて、今まで通りのローリーに戻って! 今ならまだ間に合うわ」
懇願する様に胸の前で指を組み合わせて、ローリーを見上げた。
すると、ローリーは困った様に微笑む。
「それは出来ないよ。この試練を乗り越えたらいいだけだから」
「ローリー! あなたのやっている事はわたしとあなただけの感情で済む問題じゃないわ。あなたが他の女性と仲良くすればするほど、わたし達の関係には良くないの! この調子でいけば、わたしのお父様は、あなたとの婚約を解消するつもりよ!」
「そんなの駄目だ! 何とかしてくれ、リリアーナ。君が僕と結婚したいと言い続けてくれたら、君のお父上は婚約を解消なんてしないはずだ」
声を荒げるつもりはなかったけれど、ローリーが大きな声を出してしまった為、わたしが動くのを待ってくれていた友人や、ジェインを含むローリーが動くのを待っていたローリーの友人達の視線が、一斉にわたし達の方に向けられるのがわかった。
すると、ローリーはジェインの方に振り返って叫ぶ。
「ジェイン! 君が思わせぶりな態度を取るせいで、リリアーナの心が揺れているんだ。だけど、リリアーナの心が揺れてしまう様な不甲斐なさを僕自身にも感じている」
「……何を言ってるの?」
「何を言ってるんだ? 思わせぶりな態度ってどんなのだよ」
わたしとジェインが同時に聞き返すと、ローリーは両拳を握りしめ、床に視線を落として答える。
「ジェインがいつまでも婚約者を作らずにいるから、リリアーナの心は揺れるんだ!」
「俺に婚約者がいないのは、両親にその気がないだけだ。両親が決めたらすぐに決まるよ。俺達の年齢で自分で婚約者を決めれる人間の方が少ないと思うぞ」
ジェインに呆れ顔で答えを返されて、ローリーは馬鹿にされたと思ったのか顔を真っ赤にした。
ジェインの言葉についてはわたしも同感だ。
だって、ローリーとわたしの婚約だって、元々はお互いの両親の合意なのだから。
「う、う、う、うるさーい!!」
ローリーは突然、大声で叫ぶと、教科書を持って教室を飛び出していってしまった。
ジェインがわたしの事を好き?
それは子供の頃の話でしょう?
それに、そんな事を言われたら、わたしが余計にジェインを意識してしまうという事をローリーは考えなかったのかしら?
もちろん、それだけでジェインを好きになったりしないし、ジェインが本当にわたしを好きなのかもわからない。
何より、わたしとローリーが婚約して何年も経つのだから、ジェインのわたしへの恋心が消え去っていてもおかしくない。
ジェインには浮いた話は聞かないけれど、かといって、わたし以外の女子ともまんべんなく話をしているし、友人達からもジェインについてからかわれた事もない。
あと、気になったのは、ローリーが読んでいた本だ。
タイトルには『背徳の恋』と書かれていた。
まさかローリー、先生に声をかけようとしているんじゃないわよね…?
もしくは婚活パーティーで知り合った熟女とか…?
婚約者や既婚者との恋をしてみようだなんて思ってるんじゃないわよね?
……こんな事を心配しないといけない婚約者と、このまま婚約をし続けてもいいの?
やはり条件を付けて、それが守れない様なら、婚約を解消するという事にした方が良いのかしら…。
わたしは歯が浮くようなセリフを言うローリーの事が好きだった。
愛情を疑う事なんて今までなかった。
今までのローリーで良いのに、どうしたらわかってくれるの?
人によっては、ここまでわかってもらえない時点で、ローリーの事は切り捨ててしまうのかしら…?
でも、わたしの場合は、今まで以上に、婚約解消をしにくくなってしまった。
ローリーからジェインの話聞いてしまったせいで、今、私がローリーとの婚約を断ったら、ジェインとの仲を疑われてしまう気がする。
私の家とローリーの家は仲が良いけど、ジェインの家とも同様に仲が良い。
ローリーと私が婚約を解消したと聞いたら、ジェインの家族はわたしの事を可愛がってくださっているから、きっとジェインの婚約者になってほしいと申し出てくれそうな気がする。
だって、この国では、婚約解消してしまったり、破棄されてしまった女性は欠陥品扱いされる。
だから、婚約者になりたいという男性って、そういないと思うから、ジェインのご家族は気を遣ってくれそうなのよね。
まさか、ローリーはわたしがここまで悩む事を考えて、ジェインの気持ちを口にしたの?
あああ、ちょっと待って。
本当にジェインがわたしの事を好きかどうかもわからないわ。
それに、そうであったとしても、今のわたしはどうしてあげる事も出来ない。
ローリーが元に戻ってくれたら、わたしは今まで通りの関係で良いんだから。
「可愛いリリアーナ。どうしたの? 次は移動教室だよ」
悩んでいる内に、1限目の授業が終わってしまっていた。
ローリーはわたしの顔を覗き込んで、にこりと微笑む。
「眉間にシワが寄っているリリアーナも可愛いよ。色んなリリアーナが見たくなってきたな。悲しむ顔は見たくないけど、困ってる顔も可愛いから、ちょっと困らせたくなってきた」
「意味がわからないわ。わたしはこれ以上、変な事で頭を悩ませたくないのよ」
「変な事じゃないよ。大切な事だ。この出来事をきっかけに、僕と君との絆を深く強めていかないと」
「ローリー、もしかしたら、このままだと婚約が解消される事になるかもしれないのよ? ジェインと自分を比べるのはやめて、今まで通りのローリーに戻って! 今ならまだ間に合うわ」
懇願する様に胸の前で指を組み合わせて、ローリーを見上げた。
すると、ローリーは困った様に微笑む。
「それは出来ないよ。この試練を乗り越えたらいいだけだから」
「ローリー! あなたのやっている事はわたしとあなただけの感情で済む問題じゃないわ。あなたが他の女性と仲良くすればするほど、わたし達の関係には良くないの! この調子でいけば、わたしのお父様は、あなたとの婚約を解消するつもりよ!」
「そんなの駄目だ! 何とかしてくれ、リリアーナ。君が僕と結婚したいと言い続けてくれたら、君のお父上は婚約を解消なんてしないはずだ」
声を荒げるつもりはなかったけれど、ローリーが大きな声を出してしまった為、わたしが動くのを待ってくれていた友人や、ジェインを含むローリーが動くのを待っていたローリーの友人達の視線が、一斉にわたし達の方に向けられるのがわかった。
すると、ローリーはジェインの方に振り返って叫ぶ。
「ジェイン! 君が思わせぶりな態度を取るせいで、リリアーナの心が揺れているんだ。だけど、リリアーナの心が揺れてしまう様な不甲斐なさを僕自身にも感じている」
「……何を言ってるの?」
「何を言ってるんだ? 思わせぶりな態度ってどんなのだよ」
わたしとジェインが同時に聞き返すと、ローリーは両拳を握りしめ、床に視線を落として答える。
「ジェインがいつまでも婚約者を作らずにいるから、リリアーナの心は揺れるんだ!」
「俺に婚約者がいないのは、両親にその気がないだけだ。両親が決めたらすぐに決まるよ。俺達の年齢で自分で婚約者を決めれる人間の方が少ないと思うぞ」
ジェインに呆れ顔で答えを返されて、ローリーは馬鹿にされたと思ったのか顔を真っ赤にした。
ジェインの言葉についてはわたしも同感だ。
だって、ローリーとわたしの婚約だって、元々はお互いの両親の合意なのだから。
「う、う、う、うるさーい!!」
ローリーは突然、大声で叫ぶと、教科書を持って教室を飛び出していってしまった。
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