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「リリアーナ、大丈夫か」
少し焦ったようなクラウスの声を聞いて、私はすぐに返事をした。
「全然大丈夫ですよ。今、昔からのクラウス様とお知り合いの方と、お話をしていたんです」
「何の話?」
「えー、えーと……」
私は言葉を濁したが、クラウスはもう一度聞いて来た。
「何を話していたの?」
ここで人ならざるものについて、知らなかったです。と言ったら、クラウスは反応をしてしまうわよね。
国の秘密がばれたら、私は婚約解消かしら?
それは困るわ。私が話を逸らした事になっているから、それに関しては黙っておきましょう。
私、黙秘をします!
「私がクラウス様の友人と勘違いをされていたので、婚約者だと伝えました。それから、リーベル公爵家は特別で、将来公爵夫人になる自信が無いのなら、クラウス様から身を引く事をおすすめされました。けれど大丈夫ですよ。私のクラウス様への愛を伝えたら、納得して頂けたようなので」
私の話を聞いていたクラウスの顔がどんどん強ばっていった。
クラウスは、令嬢達に話掛けた。
「今の話は本当ですか」
つり目の令嬢が答える。
「私、クラウス様のご婚約者様だと知らなかったのです。それに公爵夫人になる自信が無いと、ご婚約者様が言っていたのです」
「リリアーナ嬢と私は、もう一年も前から婚約をしている。公の場での発表は、夜会に出られるようになってから、行いたかった為に七日後だが。知らないと言う事は、私達に興味が無かったのではないのか? なのに今さら何の用だ。リリアーナ嬢に対する嫌がらせは、全てリーベル家に対して行っているものと同じだ。リリアーナ嬢は、母上がとても可愛がっている。もちろん、私もリリアーナ嬢を大切にしている」
クラウスの口調が急に変わった。顔も恐ろしかった。
あら? 私よけいな事を言ったかしら……
「ひっ!」
つり目の令嬢は、クラウスの顔を見て怯えてしまった。
つり目の令嬢に向かってクラウスがさらに話を続ける。
「知らなかったとはいえ、誤った事をして、謝罪すらまともに出来ないとはな。小さな子どもでも出来るぞ。幼児期からやり直した方が良いのではないか」
それを聞いたつり目の令嬢が謝罪をした。
「も、申し訳ありませんでした」
つり目の令嬢の隣に居た、茶髪の令嬢も一緒に頭を下げた。
クラウスが二人に話し掛ける。
「リリアーナ嬢にもしっかり謝ってくれ」
「「申し訳ありませんでした」」
「いえ、私は気にしていないので大丈夫ですよ」
クラウスは私の腰に手を回してその場を立ち去ろうとしたが、急に思い出したような顔をして、二人の令嬢に話し掛けた。
「それから私は、金髪の子豚ではない。くまだ」
それを聞いた令嬢達は、顔色青くしていた。
私は、クラウスにエスコートをされてその場を後にする。
「リリアーナ、一人にしてごめんな。怖かったよな」
怖いと言うより、どちらかと言うと残念な感じよね。
同世代の人で、人ならざるものについて語り合える方は居ないのかしら……
「大丈夫よ。怖くなかったわ。私は数ヶ月前に恐怖体験をして、強くなったのよ」
「何があったの?」
クラウスは、驚いた顔をして聞いてきた。
「人ならざるものに見られているかもしれない恐怖よ」
「ああ、そうだったな。でも、もう一度謝らせて……ごめん」
「大丈夫よ」
私は歩きながら大切な事を思い出したので、訂正をした。
「それからクラウスは、くまじゃなくてくまさんよ」
「どう違うんだ?」
「くまは動物のくまなのよ。熊! って感じね。けれどくまさんは、想像の中のくまなのよ。ふわふわした感じね」
「俺は、動物のくまじゃないって事?」
「そうよ! だって、本物のくまに抱きしめられたら怖いじゃない。命の危機よ。クラウスはくまさんみたい暖かくて、優しく私を包み込んでくれるのよ」
「なんだか、照れるな」
少し顔を赤くして照れていたクラウスは、可愛かった。
少し焦ったようなクラウスの声を聞いて、私はすぐに返事をした。
「全然大丈夫ですよ。今、昔からのクラウス様とお知り合いの方と、お話をしていたんです」
「何の話?」
「えー、えーと……」
私は言葉を濁したが、クラウスはもう一度聞いて来た。
「何を話していたの?」
ここで人ならざるものについて、知らなかったです。と言ったら、クラウスは反応をしてしまうわよね。
国の秘密がばれたら、私は婚約解消かしら?
それは困るわ。私が話を逸らした事になっているから、それに関しては黙っておきましょう。
私、黙秘をします!
「私がクラウス様の友人と勘違いをされていたので、婚約者だと伝えました。それから、リーベル公爵家は特別で、将来公爵夫人になる自信が無いのなら、クラウス様から身を引く事をおすすめされました。けれど大丈夫ですよ。私のクラウス様への愛を伝えたら、納得して頂けたようなので」
私の話を聞いていたクラウスの顔がどんどん強ばっていった。
クラウスは、令嬢達に話掛けた。
「今の話は本当ですか」
つり目の令嬢が答える。
「私、クラウス様のご婚約者様だと知らなかったのです。それに公爵夫人になる自信が無いと、ご婚約者様が言っていたのです」
「リリアーナ嬢と私は、もう一年も前から婚約をしている。公の場での発表は、夜会に出られるようになってから、行いたかった為に七日後だが。知らないと言う事は、私達に興味が無かったのではないのか? なのに今さら何の用だ。リリアーナ嬢に対する嫌がらせは、全てリーベル家に対して行っているものと同じだ。リリアーナ嬢は、母上がとても可愛がっている。もちろん、私もリリアーナ嬢を大切にしている」
クラウスの口調が急に変わった。顔も恐ろしかった。
あら? 私よけいな事を言ったかしら……
「ひっ!」
つり目の令嬢は、クラウスの顔を見て怯えてしまった。
つり目の令嬢に向かってクラウスがさらに話を続ける。
「知らなかったとはいえ、誤った事をして、謝罪すらまともに出来ないとはな。小さな子どもでも出来るぞ。幼児期からやり直した方が良いのではないか」
それを聞いたつり目の令嬢が謝罪をした。
「も、申し訳ありませんでした」
つり目の令嬢の隣に居た、茶髪の令嬢も一緒に頭を下げた。
クラウスが二人に話し掛ける。
「リリアーナ嬢にもしっかり謝ってくれ」
「「申し訳ありませんでした」」
「いえ、私は気にしていないので大丈夫ですよ」
クラウスは私の腰に手を回してその場を立ち去ろうとしたが、急に思い出したような顔をして、二人の令嬢に話し掛けた。
「それから私は、金髪の子豚ではない。くまだ」
それを聞いた令嬢達は、顔色青くしていた。
私は、クラウスにエスコートをされてその場を後にする。
「リリアーナ、一人にしてごめんな。怖かったよな」
怖いと言うより、どちらかと言うと残念な感じよね。
同世代の人で、人ならざるものについて語り合える方は居ないのかしら……
「大丈夫よ。怖くなかったわ。私は数ヶ月前に恐怖体験をして、強くなったのよ」
「何があったの?」
クラウスは、驚いた顔をして聞いてきた。
「人ならざるものに見られているかもしれない恐怖よ」
「ああ、そうだったな。でも、もう一度謝らせて……ごめん」
「大丈夫よ」
私は歩きながら大切な事を思い出したので、訂正をした。
「それからクラウスは、くまじゃなくてくまさんよ」
「どう違うんだ?」
「くまは動物のくまなのよ。熊! って感じね。けれどくまさんは、想像の中のくまなのよ。ふわふわした感じね」
「俺は、動物のくまじゃないって事?」
「そうよ! だって、本物のくまに抱きしめられたら怖いじゃない。命の危機よ。クラウスはくまさんみたい暖かくて、優しく私を包み込んでくれるのよ」
「なんだか、照れるな」
少し顔を赤くして照れていたクラウスは、可愛かった。
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