なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

ねむ太朗

文字の大きさ
84 / 107

77

「リリアーナ、大丈夫か」

  少し焦ったようなクラウスの声を聞いて、私はすぐに返事をした。

「全然大丈夫ですよ。今、昔からのクラウス様とお知り合いの方と、お話をしていたんです」

「何の話?」

「えー、えーと……」

  私は言葉を濁したが、クラウスはもう一度聞いて来た。

「何を話していたの?」

  ここで人ならざるものについて、知らなかったです。と言ったら、クラウスは反応をしてしまうわよね。
  国の秘密がばれたら、私は婚約解消かしら?
  それは困るわ。私が話を逸らした事になっているから、それに関しては黙っておきましょう。
  私、黙秘をします!

「私がクラウス様の友人と勘違いをされていたので、婚約者だと伝えました。それから、リーベル公爵家は特別で、将来公爵夫人になる自信が無いのなら、クラウス様から身を引く事をおすすめされました。けれど大丈夫ですよ。私のクラウス様への愛を伝えたら、納得して頂けたようなので」

  私の話を聞いていたクラウスの顔がどんどん強ばっていった。
  クラウスは、令嬢達に話掛けた。

「今の話は本当ですか」

  つり目の令嬢が答える。

「私、クラウス様のご婚約者様だと知らなかったのです。それに公爵夫人になる自信が無いと、ご婚約者様が言っていたのです」

「リリアーナ嬢と私は、もう一年も前から婚約をしている。公の場での発表は、夜会に出られるようになってから、行いたかった為に七日後だが。知らないと言う事は、私達に興味が無かったのではないのか?  なのに今さら何の用だ。リリアーナ嬢に対する嫌がらせは、全てリーベル家に対して行っているものと同じだ。リリアーナ嬢は、母上がとても可愛がっている。もちろん、私もリリアーナ嬢を大切にしている」

  クラウスの口調が急に変わった。顔も恐ろしかった。

  あら?  私よけいな事を言ったかしら……

「ひっ!」

  つり目の令嬢は、クラウスの顔を見て怯えてしまった。
  つり目の令嬢に向かってクラウスがさらに話を続ける。

「知らなかったとはいえ、誤った事をして、謝罪すらまともに出来ないとはな。小さな子どもでも出来るぞ。幼児期からやり直した方が良いのではないか」

  それを聞いたつり目の令嬢が謝罪をした。

「も、申し訳ありませんでした」

  つり目の令嬢の隣に居た、茶髪の令嬢も一緒に頭を下げた。
  クラウスが二人に話し掛ける。

「リリアーナ嬢にもしっかり謝ってくれ」

「「申し訳ありませんでした」」

「いえ、私は気にしていないので大丈夫ですよ」

  クラウスは私の腰に手を回してその場を立ち去ろうとしたが、急に思い出したような顔をして、二人の令嬢に話し掛けた。

「それから私は、金髪の子豚ではない。くまだ」

  それを聞いた令嬢達は、顔色青くしていた。
  私は、クラウスにエスコートをされてその場を後にする。

「リリアーナ、一人にしてごめんな。怖かったよな」

  怖いと言うより、どちらかと言うと残念な感じよね。
  同世代の人で、人ならざるものについて語り合える方は居ないのかしら……

「大丈夫よ。怖くなかったわ。私は数ヶ月前に恐怖体験をして、強くなったのよ」

「何があったの?」

  クラウスは、驚いた顔をして聞いてきた。

「人ならざるものに見られているかもしれない恐怖よ」

「ああ、そうだったな。でも、もう一度謝らせて……ごめん」

「大丈夫よ」

  私は歩きながら大切な事を思い出したので、訂正をした。

「それからクラウスは、くまじゃなくてくまさんよ」

「どう違うんだ?」

「くまは動物のくまなのよ。熊!  って感じね。けれどくまさんは、想像の中のくまなのよ。ふわふわした感じね」

「俺は、動物のくまじゃないって事?」

「そうよ!  だって、本物のくまに抱きしめられたら怖いじゃない。命の危機よ。クラウスはくまさんみたい暖かくて、優しく私を包み込んでくれるのよ」

「なんだか、照れるな」

  少し顔を赤くして照れていたクラウスは、可愛かった。

あなたにおすすめの小説

ボロボロになるまで働いたのに見た目が不快だと追放された聖女は隣国の皇子に溺愛される。……ちょっと待って、皇子が三つ子だなんて聞いてません!

沙寺絃
恋愛
ルイン王国の神殿で働く聖女アリーシャは、早朝から深夜まで一人で激務をこなしていた。 それなのに聖女の力を理解しない王太子コリンから理不尽に追放を言い渡されてしまう。 失意のアリーシャを迎えに来たのは、隣国アストラ帝国からの使者だった。 アリーシャはポーション作りの才能を買われ、アストラ帝国に招かれて病に臥せった皇帝を助ける。 帝国の皇子は感謝して、アリーシャに深い愛情と敬意を示すようになる。 そして帝国の皇子は十年前にアリーシャと出会った事のある初恋の男の子だった。 再会に胸を弾ませるアリーシャ。しかし、衝撃の事実が発覚する。 なんと、皇子は三つ子だった! アリーシャの幼馴染の男の子も、三人の皇子が入れ替わって接していたと判明。 しかも病から復活した皇帝は、アリーシャを皇子の妃に迎えると言い出す。アリーシャと結婚した皇子に、次の皇帝の座を譲ると宣言した。 アリーシャは個性的な三つ子の皇子に愛されながら、誰と結婚するか決める事になってしまう。 一方、アリーシャを追放したルイン王国では暗雲が立ち込め始めていた……。

婚約者を譲れと姉に「お願い」されました。代わりに軍人侯爵との結婚を押し付けられましたが、私は形だけの妻のようです。

ナナカ
恋愛
メリオス伯爵の次女エレナは、幼い頃から姉アルチーナに振り回されてきた。そんな姉に婚約者ロエルを譲れと言われる。さらに自分の代わりに結婚しろとまで言い出した。結婚相手は貴族たちが成り上がりと侮蔑する軍人侯爵。伯爵家との縁組が目的だからか、エレナに入れ替わった結婚も承諾する。 こうして、ほとんど顔を合わせることない別居生活が始まった。冷め切った関係になるかと思われたが、年の離れた侯爵はエレナに丁寧に接してくれるし、意外に優しい人。エレナも数少ない会話の機会が楽しみになっていく。 (本編、番外編、完結しました)

【完結】妹ばかり愛され追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます

コトミ
恋愛
 セラフィナは、実の親と、妹によって、家から追い出されることとなった。セラフィナがまだ幼い頃、両親は病弱なカタリナのため設備環境が良い王都に移り住んだ。姉のセラフィナは元々両親とともに住んでいた田舎に使用人のマーサの二人きりで暮らすこととなった。お金のない子爵家な上にカタリナのためお金を稼がなくてはならないため、子供二人を王都で暮らすには無理があるとセラフィナだけ残されたのだ。そしてセラフィナが19歳の時、3人が家へ戻ってきた。その理由はカタリナの婚約が上手くいかず王宮にいずらくなったためだ。やっと家族で暮らせると心待ちにしていたセラフィナは帰宅した父に思いがけないことを告げられる。 「お前はジェラール・モンフォール伯爵と結婚することになった。すぐに荷物をまとめるんだ。一週間後には結婚式だ」  困惑するセラフィナに対して、冷酷にも時間は進み続け、結婚生活が始まる。

私を溺愛している婚約者を聖女(妹)が奪おうとしてくるのですが、何をしても無駄だと思います

***あかしえ
恋愛
薄幸の美少年エルウィンに一目惚れした強気な伯爵令嬢ルイーゼは、性悪な婚約者(仮)に秒で正義の鉄槌を振り下ろし、見事、彼の婚約者に収まった。 しかし彼には運命の恋人――『番い』が存在した。しかも一年前にできたルイーゼの美しい義理の妹。 彼女は家族を世界を味方に付けて、純粋な恋心を盾にルイーゼから婚約者を奪おうとする。 ※タイトル変更しました  小説家になろうでも掲載してます

いつも隣にいる

はなおくら
恋愛
心の感情を出すのが苦手なリチアには、婚約者がいた。婚約者には幼馴染がおり常にリチアの婚約者の後を追う幼馴染の姿を見ても羨ましいとは思えなかった。しかし次第に婚約者の気持ちを聞くうちに変わる自分がいたのだった。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

【完結】私のことを愛さないと仰ったはずなのに 〜家族に虐げれ、妹のワガママで婚約破棄をされた令嬢は、新しい婚約者に溺愛される〜

ゆうき
恋愛
とある子爵家の長女であるエルミーユは、家長の父と使用人の母から生まれたことと、常人離れした記憶力を持っているせいで、幼い頃から家族に嫌われ、酷い暴言を言われたり、酷い扱いをされる生活を送っていた。 エルミーユには、十歳の時に決められた婚約者がおり、十八歳になったら家を出て嫁ぐことが決められていた。 地獄のような家を出るために、なにをされても気丈に振舞う生活を送り続け、無事に十八歳を迎える。 しかし、まだ婚約者がおらず、エルミーユだけ結婚するのが面白くないと思った、ワガママな異母妹の策略で騙されてしまった婚約者に、婚約破棄を突き付けられてしまう。 突然結婚の話が無くなり、落胆するエルミーユは、とあるパーティーで伯爵家の若き家長、ブラハルトと出会う。 社交界では彼の恐ろしい噂が流れており、彼は孤立してしまっていたが、少し話をしたエルミーユは、彼が噂のような恐ろしい人ではないと気づき、一緒にいてとても居心地が良いと感じる。 そんなブラハルトと、互いの結婚事情について話した後、互いに利益があるから、婚約しようと持ち出される。 喜んで婚約を受けるエルミーユに、ブラハルトは思わぬことを口にした。それは、エルミーユのことは愛さないというものだった。 それでも全然構わないと思い、ブラハルトとの生活が始まったが、愛さないという話だったのに、なぜか溺愛されてしまい……? ⭐︎全56話、最終話まで予約投稿済みです。小説家になろう様にも投稿しております。2/16女性HOTランキング1位ありがとうございます!⭐︎

妹の身代わりに殺戮の王太子に嫁がされた忌み子王女、実は妖精の愛し子でした。嫁ぎ先でじゃがいもを育てていたら、殿下の溺愛が始まりました・長編版

まほりろ
恋愛
 国王の愛人の娘であるアリアベルタは、母親の死後、王宮内で放置されていた。  食事は一日に一回、カビたパンやまふ腐った果物、生のじゃがいもなどが届くだけだった。  しかしアリアベルタはそれでもなんとか暮らしていた。  アリアベルタの母親は妖精の村の出身で、彼女には妖精がついていたのだ。  その妖精はアリアベルタに引き継がれ、彼女に加護の力を与えてくれていた。  ある日、数年ぶりに国王に呼び出されたアリアベルタは、異母妹の代わりに殺戮の王子と二つ名のある隣国の王太子に嫁ぐことになり……。 「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。 ※中編を大幅に改稿し、長編化しました。2025年1月20日 ※長編版と差し替えました。2025年7月2日 ※コミカライズ化が決定しました。商業化した際はアルファポリス版は非公開に致します。 ※表紙イラストは猫様からお借りしています。