田舎の秘密の地下にて、彼は狂い彼女らを狂わせる。

転校(その2)

間もなく～〇〇駅、〇〇駅～お出口は一番前の扉からお下りください。

1車両の電車を下りる、田舎と言うこともあり無人駅だ。
切符を入れる用のポストがあり、そこに切符を入れて通る様だ。
「タダ乗りし放題じゃんか………」

着いた………着いてしまった。

新しい環境。最悪な毎日だったあの学校から逃げ、辿り着いた場所。

楽しみ…………

とは言えない。






此方で、周りと馴染めるだなんて確証はないのだ。
何らかの理由でまた虐めの的にされてしまうかも知れない。

だから、僕はずっと心臓が緊張で鳴り続けている…。

「……ふぅ、とにかく家に荷物置いてこないと…」



これから住む家は駅から十分の所にあり、そこから更に30分程歩いた所に通う学校がある。

少し遠い距離だが、後に自転車が宅配で届く。
こちらの村にも、一応自転車屋がある様だが、ある物は使っていかなければ節約にもならない。

「…走るか………」

のんびりと、景色があまり変わらない一本道を歩きながら呟いた。
ゆっくりとこの田んぼや畑に囲まれてる道を歩くのはいいか……どんどんと不安が込み上がってくるのだ。

住む家はどんな家で、村の人たちと馴染めるのか、学校の雰囲気はどんな感じか……………



虐められなさそうか…………。






怖い気持ちがある中、早く知ってしまいたいという気持ちがあったんだ。


「……っ…………ふぅ…ふぅ…」
肩に背負っているリュックを揺らしながらジョギング程度に走る。
何も無いこの田舎道…それがとても心地良く、暖かく感じる。

すると、道沿いに一軒家を見つけた。
「…ここじゃないな………」

立ち止まり家の様子を見るが、ここではない。
聞いていた形と違うし、こんなに裕福そうな家では無いはずだ。

「住所も違うしな…」
スマホを取り出しマップを開く。

「あ、でももうちょっとか……」
再度走り出す。
スマホによると少し木に囲まれた所の家みたいだ。
















「ここか………森の中の小屋って感じ…ありがとう母さん‥‥‥」
今まで通っていた一本道から左に逸れた森道の先に、何処かの森にいる熊の親子が住んでいそうな家を見つけた。
決して住みやすそうな家では無い。
窓は少し隙間が空いてしまっていて、木で出来ている屋根は雨を通してしまいそうだ。


だけど、僕には心が落ち着く家、場所に感じた。
何も害が無く、余計な人間がいない空間……とても綺麗に見えた。


「一応鍵はあるんだね……あ、あった。」
家の扉には鍵穴があったが、鍵は閉まってないようだ。
扉を開けると、すぐそばの壁に鍵がかけてあった。

「危ないな……まぁ、盗むものも無いからいいか……」

リュックを、下ろす。
家の中には、木製の椅子と机、ベッドにキッチンがあった。一つドアがありその先はシャワーとトイレがある。
コンセントを挿す箇所もある事から電気もちゃんと来ているようだ。

床においたリュックから物を取り出していく。
ベッドに敷くための布団と毛布、真空袋に入れてる為かなり小さくなっている。
残りは数日分の着替えとカップ麺、そして小型のフライパン。
その他、日用品だ。

持ってきたものは以上だ。
他にも色々と明日宅配で届く様になっている。





「他のものは後で買いに行かなきゃな…」
この村にも小さいが店が何店かある。
スーパーに衣服店、コンビニも二十四時間とは言わないが、あるにはある。

「取りあえず挨拶だな…」

挨拶、今までの二の舞にならない様にするには重要だ。
大人達は礼儀を気にする者達だ。特にお年寄り相手と言うと普通より気を付けないといけない。

ある程度家の中に物を置き終わった後、服を着替えて家を出た。















「あらぁ、どうぞぉ…何も無いけどゆっくりしていってねぇ？」
最初に挨拶に伺った家にはお爺さんとお婆さんの二人で暮らしている家だった。
僕を見るなり嬉しそうに家に上がるように言ってきたが、「他の家にも挨拶をしたいので」と言うと礼儀正しいのねぇと微笑んで見送ってくれた。

それからは気分が良かった。

お年寄りばかりの村で、皆若者が来てくれたことにより喜んでくれていて、歓迎されている空気だった。

行く家行く家、それぞれ違った歓迎の仕方をされ、久し振りに感じる他人からの好意に喜びが隠せなかった。




「道を教えてくれてありがとうございます。これからよろしくお願いします！」

最後に伺った家の者に、学校への道のりを教えてもらった。
スマホもあり道は分かっていたが、優しさのある気持ちをくれた事に感謝して、学校に向かった。