10 / 181
レベルシステム
10 検証
しおりを挟む
レベルシステム
あの大厄災の日から、俺達には新しい名前が付けられ、レベルという数字が割り当てられた。
割り当てられたと言っても、全員平等に1だったんだけど。
いや、世界のどこかには最初から100の奴もいたのかも知れないけど、少なくとも俺の周りは全員レベル1だった。
レベルや能力値については自分のものしか見ることができない。
ただ、触った人間のレベルによって色が変わる水晶が発見されて、それからは探索者は管理局にレベルを開示しないとダンジョンに入れなくなった。
ダンジョンには階層渡りのための扉以外に、管理局が作った鍵付き扉や、管理局の人間の詰所があって、管理局が許可した階層までしか潜れないようになっている、らしい。
なんで管理局がここまでの権限を持ってるかは分からないけど、今のところ、俺らは管理局には助けられっぱなしなので特に不満はない。個人的には。
ちなみに、この水晶が発見されてからはレベル詐称をする人間は減ることになった。
レベル詐称と言うのは、レベルを詐称して護衛の職などに就く時に使われることをいう。
元々、大厄災前から格闘技などをやってて、レベルシステム関係なしに強い人がそう言った詐称をするそうだ。
元から強い人はレベル1になっても元の強さを持っているわけだ。
結局、世の中は平等じゃないんだよなぁ、と思う。いや、そういった人たちも才能だけじゃなくて努力があって強さを手に入れてきたんだろうけど、さ。
おっ、ようやっと魔物のお出ましだ。
ここ1階層ではこのジャイアントラットや、ジャイアントバット、ブルースネークなどが出てくる。
ジャイアントラットはその名の通り、体高60センチほどの大きなカピバラのような魔物だ。
最近は見かけても戦わずに駆け抜けたりしてたけど……
「よしこいっ!」
今日はこいつと戦うのも一つの目的だ。
俺は声を出してネズミの注意をひいた。
ネズミは予想通り、というかいつも通りの突進攻撃を仕掛けてくる。
いつもなら避けるんだけど……
「パキーン」
俺の腹にネズミの頭が当たる寸前、そんな音を響かせて、ネズミは壁に突っ込んでしまったかのように跳ね返って倒れた。
俺に痛みはまったくないし、生命力も減ってない。
やっぱりか。
レベルが上がったことで、低階層の魔物の攻撃は俺には効かなくなっているようだ。
気絶してしまったのか、動かなくなったネズミにとどめを刺して2階層に向かった。
2階層、3階層でも、出会った魔物の攻撃を受けてもダメージを喰らわないことが確認できた。
ただ、ジャイアントワームの吐いた溶解液と、ゴブリンキャスターの魔法は効いた。痛かった。
つまり、俺が強くなったのは物理的な打撃攻撃に対してだけのようだ。
溶解液で負った火傷と、《マジックミサイル》で減ってしまった生命力はナマポで回復済みだ。
2つ合わせて6点のダメージを受けていた。
俺の生命力は最大値が低いので、6点でも油断できないダメージだ。
でも、前に……レベル8くらいの時だったか。あの時に《マジックミサイル》を喰らったときには確か9点減ったはずだ。そう考えると魔法に対する防御力も少しは上がっているんだろうと思う。
あの時は初めてのゴブリンキャスターとの戦闘で、正直、死を意識したっけな、と思い出してしまった。
茶髪がいなくなって少しした時の事だったっけ。
治癒系統のスキルや魔法は本当に重要だってことを理解した瞬間でもあったな。
なんとか撤退して地上に戻ってから、カズたちと対ゴブリンキャスターの作戦会議を開いたっけな……
そこまで思い出してから、頭を軽く振って意識をダンジョンに戻した。
今は一人なんだ。
これからも暫くは一人で潜るつもりなんだ。
仲間がいた時のことを思い出しても仕方ないんだぞ、俺。
そして今、更に進んで4階層でゴブリン2匹と対峙している。
既にそれぞれから一発ずつ攻撃をされてみた。
3階層でもそうだったけど、剣や棍棒で襲われるのを無防備に受けるっていうのはなかなかに怖いものだ。
ちなみに、3階層までは、自分の攻撃が効かないことを悟ると逃げ出す魔物が多くて、検証できなかったことがあった。今はそれを試しているところだ。
そう、何発喰らっても攻撃を弾けるかどうか、ってことだ。
「よしよしよしよし! 次来いっ!」
攻撃が弾かれたことで驚いて逃げ腰になっていたゴブリンたちだけど、俺の挑発と数的有利があるからか逃げ出さずに飛びかかってきた。
3、4!
オーケー、4発は行ける、と。
「そんなもんか!? ほら来いよ!」
更に挑発を続けたんだけど。
「痛っ!」
5、6発目はダメージを食らってしまったのだった。
左腕で受けた剣が腕に少し喰い込んで血が出る。後ろから叩きつけられた棍棒のせいで「けほっ」と息が出てしまう。
ダメージは合わせて3だ。
まだ大丈夫だけどこれ以上は油断できない。
距離をとってナマポを出……いや、今は飲めないか。一人だと戦闘中に回復するのは難しい。
調子に乗って更に追撃を仕掛けてくるゴブリンたちの攻撃をなんとか躱し、通路に向かってダッシュする。
ゴブリンの足はそれほど速くないので、他の魔物との挟撃に合わなければ大抵は逃げられる。
でも、今の目的は逃げることじゃない。
高さも幅も3メートル程度の通路でハンマーを振るのはなかなか難しいはずなんだけど、《鎚鉾3》のおかげか、俺にとっては比較的簡単なことだ。
走りながら急ブレーキを掛けて、そこを起点にグルッと体を横回転させる。そしてその勢いのまま、右手一本で持ったハンマーを、剣を持ったゴブリンにぶん投げる。
ゴッという音とともに、腹にハンマーを喰らったゴブリンが体をくの字にして吹っ飛んでいった。
だが、もう一匹のゴブリンの突撃は喰らってしまった。ゴブリンのクセに考えて戦ってんのか?
棍棒を叩きつけてきたら避けるつもりだったんだけど、タックルは想定してなかった。
またもや「かはっ」と空気が口から漏れる。
体が地面に叩きつけられるが頭はなんとか打たずにすんだ。
ゴブリンはいやらしく嗤ったような顔で俺の腹の上でマウントポジションを取り、そして両手で棍棒を振り上げた。
あの大厄災の日から、俺達には新しい名前が付けられ、レベルという数字が割り当てられた。
割り当てられたと言っても、全員平等に1だったんだけど。
いや、世界のどこかには最初から100の奴もいたのかも知れないけど、少なくとも俺の周りは全員レベル1だった。
レベルや能力値については自分のものしか見ることができない。
ただ、触った人間のレベルによって色が変わる水晶が発見されて、それからは探索者は管理局にレベルを開示しないとダンジョンに入れなくなった。
ダンジョンには階層渡りのための扉以外に、管理局が作った鍵付き扉や、管理局の人間の詰所があって、管理局が許可した階層までしか潜れないようになっている、らしい。
なんで管理局がここまでの権限を持ってるかは分からないけど、今のところ、俺らは管理局には助けられっぱなしなので特に不満はない。個人的には。
ちなみに、この水晶が発見されてからはレベル詐称をする人間は減ることになった。
レベル詐称と言うのは、レベルを詐称して護衛の職などに就く時に使われることをいう。
元々、大厄災前から格闘技などをやってて、レベルシステム関係なしに強い人がそう言った詐称をするそうだ。
元から強い人はレベル1になっても元の強さを持っているわけだ。
結局、世の中は平等じゃないんだよなぁ、と思う。いや、そういった人たちも才能だけじゃなくて努力があって強さを手に入れてきたんだろうけど、さ。
おっ、ようやっと魔物のお出ましだ。
ここ1階層ではこのジャイアントラットや、ジャイアントバット、ブルースネークなどが出てくる。
ジャイアントラットはその名の通り、体高60センチほどの大きなカピバラのような魔物だ。
最近は見かけても戦わずに駆け抜けたりしてたけど……
「よしこいっ!」
今日はこいつと戦うのも一つの目的だ。
俺は声を出してネズミの注意をひいた。
ネズミは予想通り、というかいつも通りの突進攻撃を仕掛けてくる。
いつもなら避けるんだけど……
「パキーン」
俺の腹にネズミの頭が当たる寸前、そんな音を響かせて、ネズミは壁に突っ込んでしまったかのように跳ね返って倒れた。
俺に痛みはまったくないし、生命力も減ってない。
やっぱりか。
レベルが上がったことで、低階層の魔物の攻撃は俺には効かなくなっているようだ。
気絶してしまったのか、動かなくなったネズミにとどめを刺して2階層に向かった。
2階層、3階層でも、出会った魔物の攻撃を受けてもダメージを喰らわないことが確認できた。
ただ、ジャイアントワームの吐いた溶解液と、ゴブリンキャスターの魔法は効いた。痛かった。
つまり、俺が強くなったのは物理的な打撃攻撃に対してだけのようだ。
溶解液で負った火傷と、《マジックミサイル》で減ってしまった生命力はナマポで回復済みだ。
2つ合わせて6点のダメージを受けていた。
俺の生命力は最大値が低いので、6点でも油断できないダメージだ。
でも、前に……レベル8くらいの時だったか。あの時に《マジックミサイル》を喰らったときには確か9点減ったはずだ。そう考えると魔法に対する防御力も少しは上がっているんだろうと思う。
あの時は初めてのゴブリンキャスターとの戦闘で、正直、死を意識したっけな、と思い出してしまった。
茶髪がいなくなって少しした時の事だったっけ。
治癒系統のスキルや魔法は本当に重要だってことを理解した瞬間でもあったな。
なんとか撤退して地上に戻ってから、カズたちと対ゴブリンキャスターの作戦会議を開いたっけな……
そこまで思い出してから、頭を軽く振って意識をダンジョンに戻した。
今は一人なんだ。
これからも暫くは一人で潜るつもりなんだ。
仲間がいた時のことを思い出しても仕方ないんだぞ、俺。
そして今、更に進んで4階層でゴブリン2匹と対峙している。
既にそれぞれから一発ずつ攻撃をされてみた。
3階層でもそうだったけど、剣や棍棒で襲われるのを無防備に受けるっていうのはなかなかに怖いものだ。
ちなみに、3階層までは、自分の攻撃が効かないことを悟ると逃げ出す魔物が多くて、検証できなかったことがあった。今はそれを試しているところだ。
そう、何発喰らっても攻撃を弾けるかどうか、ってことだ。
「よしよしよしよし! 次来いっ!」
攻撃が弾かれたことで驚いて逃げ腰になっていたゴブリンたちだけど、俺の挑発と数的有利があるからか逃げ出さずに飛びかかってきた。
3、4!
オーケー、4発は行ける、と。
「そんなもんか!? ほら来いよ!」
更に挑発を続けたんだけど。
「痛っ!」
5、6発目はダメージを食らってしまったのだった。
左腕で受けた剣が腕に少し喰い込んで血が出る。後ろから叩きつけられた棍棒のせいで「けほっ」と息が出てしまう。
ダメージは合わせて3だ。
まだ大丈夫だけどこれ以上は油断できない。
距離をとってナマポを出……いや、今は飲めないか。一人だと戦闘中に回復するのは難しい。
調子に乗って更に追撃を仕掛けてくるゴブリンたちの攻撃をなんとか躱し、通路に向かってダッシュする。
ゴブリンの足はそれほど速くないので、他の魔物との挟撃に合わなければ大抵は逃げられる。
でも、今の目的は逃げることじゃない。
高さも幅も3メートル程度の通路でハンマーを振るのはなかなか難しいはずなんだけど、《鎚鉾3》のおかげか、俺にとっては比較的簡単なことだ。
走りながら急ブレーキを掛けて、そこを起点にグルッと体を横回転させる。そしてその勢いのまま、右手一本で持ったハンマーを、剣を持ったゴブリンにぶん投げる。
ゴッという音とともに、腹にハンマーを喰らったゴブリンが体をくの字にして吹っ飛んでいった。
だが、もう一匹のゴブリンの突撃は喰らってしまった。ゴブリンのクセに考えて戦ってんのか?
棍棒を叩きつけてきたら避けるつもりだったんだけど、タックルは想定してなかった。
またもや「かはっ」と空気が口から漏れる。
体が地面に叩きつけられるが頭はなんとか打たずにすんだ。
ゴブリンはいやらしく嗤ったような顔で俺の腹の上でマウントポジションを取り、そして両手で棍棒を振り上げた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
28
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる