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第拾弐話-監禁

監禁-19

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「失礼しまぁ~す」
 長四郎は個室の病室のドアを開けると、一川警部がベッドで寝ていた。
 表裏がカン落ちし、送検の準備で忙しい絢巡査長に代わって長四郎と燐がその報告兼見舞いに来たのだ。
「あ、寝てる」同行していた燐が長四郎に小声で話しかけると「起きとぉ~よ」とベッドを起こす一川警部。
「起こして良かったんですか?」
 長四郎は持ってきたフルーツバスケットを机の上に置きながら、問い掛ける。
「良かよ。退屈しとったけん」
「退屈なんですか?」
「退屈も退屈よ。ラモちゃん、あたしは退院しても良いんやけど。うちのオニが退院なんぞさせんっていうから」一川警部はそう言いながら、オニのジェスチャーをする。
「オニ?」燐は意味が分からず首を傾げる。
「オニ嫁って事でしょ」
「ああ」
 長四郎の説明を受けて納得していると、病室のドアが開く。
「誰が鬼嫁ですってぇ~」
 すごい剣幕で入ってくる女性を見て、一川警部の顔が一気に青ざめる。
「それは、言葉の絢というか何というか」
「俺、知らなぁ~い」
「私もぉ~」
 長四郎と燐はそっぽ向き、2人に干渉しないような態度をとる。
「人が忙しい家事の合間に来てやったというのにお前はぁ~そんなんだから、犯人に監禁されるんだよ!」
 女性に綺麗なスキンヘッドを何度もペチペチと叩かれ続ける。
「あの人、誰?」燐は小声で質問する。
「ラモちゃんは知らなかったな。あの人は二山 玲ふたやま れいさん。あの人と結婚していたなんて知らなかったわ」
 玲が何者なのかは、また今度の話という事で。
「あれ? もしかして、長さん?」玲はここで長四郎の存在に気づいた。
「お久しぶりです。玲さん」
「え~なんか見ない合間に大人になったね」
「いや~玲さんも変わらず、お綺麗で驚きましたよ」
「長さんが気障なセリフを言うようになったよ」
「ああ」顔を引きつらせながら、一川警部は答える。
「所で、その隣に居る娘は?」
「初めまして。私、このバカ探偵の助手をやっている羅猛燐と言います」
「自称助手です」補足説明を入れる長四郎の足の甲を踏みつける燐。
「私、一川の妻の玲です」
 長四郎と一川警部は出会ってはいけない2人が出会ってしまったと時を同じくしてそう思った。

  第拾弐話・完
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