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第拾伍話-異人

異人-5

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「ねぇ、ホントにあの子で大丈夫なの?」
 変蛇内高校の制服に身を包んだミシェルは、商業ビルに入る燐を見ながら不安そうに尋ねる。
「多分、大丈夫。ラモちゃんは、自称・探偵助手だから」
「そうなの」
 ミシェルは天に燐の潜入捜査が上手くいくように、心の中で祈るであった。
 それから、数分後。
 燐は何食わぬ顔でビルから出てきて、長四郎達の元へ戻ってきた。
「どうだった?」ミシェルが真っ先に成果を聞く。
「道前に急な仕事が入ったとかで、明日のお昼前までには戻ってくるって言われました」
 その言葉を聞いて安堵するミシェルを他所に話は進んで行く。
「で、なんて言って出てきたの?」長四郎のその質問に燐は「出直してきます。って言ってきたけど」と答えた。
「ラモちゃんの割には、無難な回答だったね」
「何、それ。まるで、私が問題を起こしてくるみたいな言い方じゃん」
「だって、中で問題起こしてくると思ってたから」
 そう言った途端、長四郎は燐に絞めあげられる。
「た、助けてぇ~」
 今にも消えそうな声で長四郎は許しを請う。
 しかし、燐は「ダメだ。貴様は、私を怒らせた。最後に言い残すことはないか?」という始末。
「ありがとう。貴方達はここまでで良いわ」
 ミシェルにそう言われ、燐は絞め上げる手を止め「最後まで手伝いますよ」と提案した。
「大丈夫。報酬はどうすれば良いかしら?」
「ああ、今回は良いすよ。大したことしてないから」
「でも」
「あ、ホントに大丈夫なんで。気にしないでください」
「なんで、ラモちゃんが言うわけ?」
 依頼を受けたわけでもないのに堂々と答える燐に、長四郎は不服を申し立てる。
「ごちゃごちゃ、うるさいわね」そう言って、長四郎の足の甲を思いっきり踵で踏みつける。
「痛っ!!」
 長四郎はケンケン飛びをして、痛みを紛らわそうとする。
「ねぇ、あなた達って、いつもこうなの?」
「そうですけど」
 ミシェルからの思いもよらぬ質問に燐は不思議そうに答えた。
「面白い関係ね」
「はぁ」
「あ、これ返さなきゃね」ミシェルは燐の制服スカートを少し引っ張りながら言うと「それ、国に持って帰ったら? 正直言って、現役のラモちゃんより似合っているし」と長四郎は進言する。
 長四郎の言う通り、ミシェルの制服姿はかなり似合っていた。
「似合ってなくて悪かったわね!」燐はすぐ様、長四郎のこめかみをぐりぐり攻撃する。
 その光景を見て、ミシェルは呆れているというジェスチャーをするのだった。

 翌日、ミシェルは東京に帰ってきた道前を会社から尾行し自宅を突き止めることに成功した。
 道前は港区にあるタワーマンションの40階の部屋に住んでおり部屋番号も特定したミシェルはマンション近くで、突入する頃合いを見計らっていた。
 道前は帰宅してから、マンションから一歩も出る様子はなかったので旅疲れを癒しているのだろうとミシェルは踏み突入に向けて動き出した。
 タワーマンションの地下駐車場から潜入することにし、マンションの住人が来るのを待つ。
 30分後、1台のベンツが地下駐車場に入って来て駐車され、マンションの住人が車から降りたタイミングでミシェルは物陰から出てくると気づかれないように後をつける。
 そして、住人がロック解除の暗証番号を入力するのを盗み見し、番号を覚えるミシェル。
 住人がエレベーターで上がってから、暗記した暗証番号を入力してロックを解除しマンションに侵入する。
 道前の部屋は、40階の4010号室。
 エレベーターを降りたミシェルは、その部屋へ一直線に向かった。
 インターホンを鳴らすが反応はない。
「おかしい。居るはずなのに」
 ドアに耳を当て生活音が聞こえないか、確認するのだが生活音は聞こえない。
 ドアノブを引いて見ると、ガチャっと音を立ててドアが開く。
 母国のアメリカでは考えられないような事だが、ミシェルはお構いなしに部屋の中へと入る。
 音をたてないように廊下を歩き、リビングに入ってすぐの所に道前が仰向けで倒れており、道前の身体は血まみれであった。
「そんな・・・・・・」
 ミシェルが絶句していると、玄関の方から「道前さぁ~ん、入りますよぉ~」という声が聞こえてきた。
 ミシェルは咄嗟にキッチンへと身を隠した。
「道前さぁ~ん」そう言いながら、何者かがリビングへと入ってきた。
 ミシェルは気づかれないよう、その人物が誰なのか確認すると制服警官であった。
「道前さん!!」
 警官はすぐ様、道前の元へ駆け寄り状況を確認し、無線で応援を呼ぶ。
「おい! そこで何してるっ!!」
 声がした方を見ると、もう1人の警官と目が合ってしまった。
「Shit!!」
 ミシェルは諦めた感じで両手を上げて、警官に投降した。
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