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本編2 試される男
15・出逢ったその時から恋の奴隷 俯瞰視点
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二か月前にやって来た自称勇者と違って、多少は話が通じそうな異世界人……泉州からの、力一杯の好意を。
気持ちを捧げられた当人であるロイズが容赦なく突っ返した。神官長イーシャや周囲にいる他の神官兵が指示をする前に、……返してしまった。
冷たい態度をされた泉州が屈辱感に怒り狂う。……のではないか、と。
最悪なシナリオを予想した周囲の緊張感を他所に、泉州はロイズ一人だけに向けて笑顔を浮かべた。
「ふっ…流石はロイズ、身持ちが固いな。ますます惚れたぜ。」
「……気持ち悪い上にポジティブ過ぎるだろ、お前。」
引き続き、塩対応なロイズの態度にも負けず、泉州は嬉しそうな様子だ。
全く甘くないロイズの態度を、いつ改めさせるべきかとタイミングを窺っていたイーシャは、少し迷ったがもうしばらくはこのままで行かせる事にした。
異世界人が気にしないのであれば、自分が余計な注意をしない方が良いと。つい先程の泉州との遣り取りを思い出し、イーシャは判断したのだ。
「まぁ確かに、出逢って早々に受け入れて貰えるとは思ってなかったしな。」
「じゃあ、なんで言ったんだっ?」
「ロイズが好きだって気持ちを伝えたくて、我慢出来なかったんだ。それに……いつ、何があって、言いたくても言えないような事態にならんとも分からねぇからな。」
「お前、どういう事態を想像してるんだよ……。」
浮き浮きした声で話す泉州に対して、ロイズは呆れたように呟いた。
ロイズから助けを求める顔で見られたイーシャは、ロイズに釣られて泉州もイーシャを見た事を確認した。
それから一歩だけ泉州に近付き、慎重に声を掛ける。
もしも二か月前の自称勇者と同じように、ロイズ以外の声を無視するようであれば深追いはしない。そう決めていた。
「あー、会話を邪魔して済まないんだが。……センシュウ、だったな?」
名を確認する問い掛けに泉州は頷きで返答した。
どうやらこの異世界人は、目当ての人物以外とも多少はコミュニケーションを取る意思がありそうだ。
気持ちが明らかにホッとしたのを、出来るだけ顔に出さないよう注意しながら、イーシャは言葉を続ける。
会話が続けられるのであれば、イーシャには時間を稼ぐ必要があった。
「一応、前もって言っとくぞ? 確認するだけで、反対しようってツモリじゃないんだが……その…、ロイズの事が好き、なんだな?」
「好きだ。愛してる。」
「そっ……そ、そうか。」
堂々と言い切った泉州に、関係無いはずのイーシャが恥ずかしい気持ちになる。
当のロイズは迷惑そうな表情を浮かべた。
「つまり……なんだ? ロイズに一目惚れしたのか?」
「つまンねぇ言い方だな、オッサン。もっと浪漫を感じろよ。……オレとロイズはそんな陳腐なモンじゃねぇよ。もっと衝撃的で、運命的なヤツだ。」
「神官長、これ……聞く必要無いっすよ。たぶん。」
「出逢った瞬間のから、オレは目が離せなくなってた。オレを見る、ロイズの熱い眼差し……光り輝くような天使の髪……スラリと伸びた生足……官能的にオレを招く腕……。」
「おれを変な風に見るなっ!」
「変じゃねぇよ。男なんだから、好きな奴の事はそういう風に見るだろ。オレは、あっという間に虜にされたんだっ。もうロイズの事しか考えられねぇ。オレはまさに、ロイズの、恋の奴隷…」
「あああぁぁ~~~~っ! 黙れえぇぇっ!」
嫌々ながらも、ついつい言い返してしまうロイズだったが。流石に気持ち悪さが限界に来たのだろう。
大声で泉州を怒鳴り付けた。
「ウルサイ! 気持ち悪いし、腹立つ! この、変態ぃっ!」
ロイズは顔が赤くなるぐらいに喚き散らす。
罵声を浴びる泉州には怒り出しそうな気配は感じないものの、この辺りが頃合いだろうと、大聖堂がある建物の方を確認してイーシャは判断した。
建物の出入口付近に、泉州のプロポーズをロイズが断った頃から司教の姿があった。
他の司祭に支えられながら、司教も異世界人の言動を見守っていたのだ。
「その辺にしとけ、ロイズ。お前の気持ちは分かるし、俺も概ね同意だがな? そろそろ……異世界人に対する言葉遣いを、ちょっと考えようか?」
「待てやオッサン、余計な説教は要らねぇ。ロイズがよそよそしくなったら、ど~してくれンだよ。」
「おれは今後もずうっと、お前には、余所余所しい予定だっ。」
イーシャに文句を言う泉州に、文句を言うロイズ。の流れが定番になりつつある。
思わずイーシャは苦笑いを浮かべた。
「俺の耳には、長い付き合いの友人みたいな遣り取りに聞こえるんだがなぁ。」
「友人じゃねぇ! ……好きだ、ロイズ、付き合ってくれっ。」
「違うっすよっ! ……黙れ、いい加減にしろ、二度と言うなっ。」
「はいはい、息もピッタリ合ってるようじゃないか。……なぁ、異世界人サマ? 立ち話もなんだし、せっかくだから何処かでゆっくり腰を落ち着けて話そうか。良かったらロイズと一緒に、茶の一つでもどうだい?」
さっそく文句を言いそうなロイズから顔を背け、上司に逆らう事は許さないという態度を取るイーシャ。
その視線の先では、司教と、司教を支える司祭が満足そうに頷いているのが見えた。
気持ちを捧げられた当人であるロイズが容赦なく突っ返した。神官長イーシャや周囲にいる他の神官兵が指示をする前に、……返してしまった。
冷たい態度をされた泉州が屈辱感に怒り狂う。……のではないか、と。
最悪なシナリオを予想した周囲の緊張感を他所に、泉州はロイズ一人だけに向けて笑顔を浮かべた。
「ふっ…流石はロイズ、身持ちが固いな。ますます惚れたぜ。」
「……気持ち悪い上にポジティブ過ぎるだろ、お前。」
引き続き、塩対応なロイズの態度にも負けず、泉州は嬉しそうな様子だ。
全く甘くないロイズの態度を、いつ改めさせるべきかとタイミングを窺っていたイーシャは、少し迷ったがもうしばらくはこのままで行かせる事にした。
異世界人が気にしないのであれば、自分が余計な注意をしない方が良いと。つい先程の泉州との遣り取りを思い出し、イーシャは判断したのだ。
「まぁ確かに、出逢って早々に受け入れて貰えるとは思ってなかったしな。」
「じゃあ、なんで言ったんだっ?」
「ロイズが好きだって気持ちを伝えたくて、我慢出来なかったんだ。それに……いつ、何があって、言いたくても言えないような事態にならんとも分からねぇからな。」
「お前、どういう事態を想像してるんだよ……。」
浮き浮きした声で話す泉州に対して、ロイズは呆れたように呟いた。
ロイズから助けを求める顔で見られたイーシャは、ロイズに釣られて泉州もイーシャを見た事を確認した。
それから一歩だけ泉州に近付き、慎重に声を掛ける。
もしも二か月前の自称勇者と同じように、ロイズ以外の声を無視するようであれば深追いはしない。そう決めていた。
「あー、会話を邪魔して済まないんだが。……センシュウ、だったな?」
名を確認する問い掛けに泉州は頷きで返答した。
どうやらこの異世界人は、目当ての人物以外とも多少はコミュニケーションを取る意思がありそうだ。
気持ちが明らかにホッとしたのを、出来るだけ顔に出さないよう注意しながら、イーシャは言葉を続ける。
会話が続けられるのであれば、イーシャには時間を稼ぐ必要があった。
「一応、前もって言っとくぞ? 確認するだけで、反対しようってツモリじゃないんだが……その…、ロイズの事が好き、なんだな?」
「好きだ。愛してる。」
「そっ……そ、そうか。」
堂々と言い切った泉州に、関係無いはずのイーシャが恥ずかしい気持ちになる。
当のロイズは迷惑そうな表情を浮かべた。
「つまり……なんだ? ロイズに一目惚れしたのか?」
「つまンねぇ言い方だな、オッサン。もっと浪漫を感じろよ。……オレとロイズはそんな陳腐なモンじゃねぇよ。もっと衝撃的で、運命的なヤツだ。」
「神官長、これ……聞く必要無いっすよ。たぶん。」
「出逢った瞬間のから、オレは目が離せなくなってた。オレを見る、ロイズの熱い眼差し……光り輝くような天使の髪……スラリと伸びた生足……官能的にオレを招く腕……。」
「おれを変な風に見るなっ!」
「変じゃねぇよ。男なんだから、好きな奴の事はそういう風に見るだろ。オレは、あっという間に虜にされたんだっ。もうロイズの事しか考えられねぇ。オレはまさに、ロイズの、恋の奴隷…」
「あああぁぁ~~~~っ! 黙れえぇぇっ!」
嫌々ながらも、ついつい言い返してしまうロイズだったが。流石に気持ち悪さが限界に来たのだろう。
大声で泉州を怒鳴り付けた。
「ウルサイ! 気持ち悪いし、腹立つ! この、変態ぃっ!」
ロイズは顔が赤くなるぐらいに喚き散らす。
罵声を浴びる泉州には怒り出しそうな気配は感じないものの、この辺りが頃合いだろうと、大聖堂がある建物の方を確認してイーシャは判断した。
建物の出入口付近に、泉州のプロポーズをロイズが断った頃から司教の姿があった。
他の司祭に支えられながら、司教も異世界人の言動を見守っていたのだ。
「その辺にしとけ、ロイズ。お前の気持ちは分かるし、俺も概ね同意だがな? そろそろ……異世界人に対する言葉遣いを、ちょっと考えようか?」
「待てやオッサン、余計な説教は要らねぇ。ロイズがよそよそしくなったら、ど~してくれンだよ。」
「おれは今後もずうっと、お前には、余所余所しい予定だっ。」
イーシャに文句を言う泉州に、文句を言うロイズ。の流れが定番になりつつある。
思わずイーシャは苦笑いを浮かべた。
「俺の耳には、長い付き合いの友人みたいな遣り取りに聞こえるんだがなぁ。」
「友人じゃねぇ! ……好きだ、ロイズ、付き合ってくれっ。」
「違うっすよっ! ……黙れ、いい加減にしろ、二度と言うなっ。」
「はいはい、息もピッタリ合ってるようじゃないか。……なぁ、異世界人サマ? 立ち話もなんだし、せっかくだから何処かでゆっくり腰を落ち着けて話そうか。良かったらロイズと一緒に、茶の一つでもどうだい?」
さっそく文句を言いそうなロイズから顔を背け、上司に逆らう事は許さないという態度を取るイーシャ。
その視線の先では、司教と、司教を支える司祭が満足そうに頷いているのが見えた。
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