眼鏡ちゃん、バンドやる。

眠ゐ犬

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ギターを買いに行きます!①

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「あれ?御園さん、どっか行くの?」

 軽音楽部の部室を出たところで、男の先輩から御園先輩が呼び止められた。

「後輩のギター選びに行くから今日はサボり」

「後輩?ああ、もしかして新入部員かな?」

 そう言った男の先輩に、絶賛錯乱中の私は首をガックンガックン縦に振った。
 10分も同じ動作を繰り返せば頸椎を損傷しそうな勢いが出ちゃってるよね。

「僕は部長の田宮。よろしくね。
 それにしても、御園さんが後輩の面倒を見るなんて珍しいねぇ」

 部長さんかぁ。見た目はこちら側の人っぽいから、部長なんて目立つポジションをやっているのは意外に感じる。

「ギターを教えて欲しいって頼まれた」

「へぇ!僕でも話掛けるのに2ヶ月掛かったのに!
 御園さんはこう見えて悪い人じゃないから、色々と教えて貰うといいよ」

 御園先輩を見て部長さんがニヤニヤしてるんだけど、それはどういう感情なんだろう?

「あ、はい。手取り足取りお願いします」

 何を言ってるんだ私は…。気が動転し過ぎてアホな子になっているのだろうか…。
 元からアホだろって言葉は禁句だよ!真実は時に人を傷付けるんだからね!

「あっはっは!君もなかなか面白い子だ」

 そう言って笑った田宮部長。
 部長さんは、何だか掴みどころがないって感じかな?
 御園先輩はそういうノリが苦手なのか、ちょっと嫌そうな顔をしてる。

「行こう」

「はい。あ、1年A組の真面莉子です。よろしくお願いします」

「はいはい。僕の引退まで末永くよろしくね真面さん」

 田宮部長との挨拶を終えた私は、御園先輩に腕を引かれたまま教室まで連れて行かれて鞄を回収しましたとさ。
 ここまでの展開が、あまりにもスピーディーで頭がついていけれないよ。

 残念ながら終了してしまった腕引きサービスタイム。
 けれど、斜め後ろから御園先輩を見てるんだけど、本当にイケメンと言うか美女と言うか。
 睫毛ながっ!鼻たかっ!って感じで目付きさえ悪くなかったら男女共にモテそうな顔をしてるんだよね。

 うーん、眼福眼福。
 それにすぐ後ろにいると御園先輩の新鮮な残り香が鼻を擽って素敵なかほりに頭が蕩けそうで…。

 そんな風に心の内に潜む変態が顔を出して、御園先輩を堪能する私の身に不幸な事故が起こった。
 先輩のお顔を凝視し過ぎて注意散漫になっていた私は、何もない廊下で前のめりに転びました。

「ふぎゃ!」

 ふわぁぁぁああ!やらかしたぁぁぁああ!恥ずかし過ぎて顔面ファイヤーボール(顔から火が出る)だよ!
 憧れの先輩に格好悪いところを見られるだなんて、情けなくて本当に恥ずかしいよ…。
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