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4 専属騎士

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離宮に移り住んで10日程が過ぎた頃ランバートから、専属護衛を置いたらどうかと進言された。

「どういうこと?」

「マリアンヌ様の結界でここはある程度は防御されていますが、最近頻繁に外出されていますよね、ロイとメイの戦闘力もかなり高いですが、外出するならやはりもう1人いた方がよろしいかと思いますよ」

「そうね、この国の事に詳しい人がいた方が動きやすいかもしれないわね、」

「専属として私のおすすめの騎士がいます。危険察知能力に長けているこの国最強騎士でもちろん腕も人格も保証します、ここに住み込みになりますので勝手ながら既に手配させて頂きました。部屋はマリアンヌ様の隣の部屋になります」

「……ランバート…あなた…それは提案ではなく決定事項よね…しかも事後報告?……まぁ、あなたの事は信頼しているから間違いはないと思うけど、……ただのお飾り王妃に…王妃とも言えない私にそんなに優秀な護衛つけて大丈夫なの?その方は私の護衛に配属されて不満はないのかしら?」

「全く問題ありませんよ、護衛のこと相談したら、自ら志願してきましたし私の信頼のおける友でもありますので安心して守られてください。」

「そう、なの…それじゃ遠慮なく守ってもらおうかしら?」

__コンコン____

応接室の扉をノックする音が聞こえロイが対応しランバートが呼ばれ二言三言話した後、こちらに戻ってきた。

ランバートの後ろに騎士の格好をした長身の男性が控えていた。

燃えるような赤い髪、強い意志を感じさせるキリリとした切れ長な赤茶の瞳の美青年

「マリアンヌ様、この男が先ほどお話しした専属護衛騎士となるギスラン、獅子の獣人です。」

ランバートに紹介されたギスランはマリアンヌの前で膝を突き頭を垂れて挨拶をした。

「王妃様、私ギスランはこれより王妃様ただ1人の騎士として我が剣を捧げ誠心誠意お支えする事を誓います。」

ランバートに専属護衛と紹介されたがギスランの突然の騎士の誓いにマリアンヌは思考が一瞬停止したがそこはさすが王族と誉めていいだろう、動揺を気取られる事なくほぼ無意識の行動であるが……いや、つい反射的にと言った方が正しいかもしれない…普通は右手を差し出すがなぜかこの時マリアンヌは左手を差し出していた。

ギスランは差し出されたマリアンヌの手をそっと取り額につけ、その後手の甲ではなく薬指にはめてある番認識阻害の指輪に口付けた。

「……あの、できれば王妃ではなくマリアンヌと名前で呼んでもらえるかしら、それと…騎士の誓いを受けてからこんなこと言うのは憚れるのですが…誓いの宣誓までして貰ったギスランには私も誠実であるべきよね?……実は私は今のところ書類上では王妃とういことになっていますけど、2年後には離縁しますので王妃ではなくなりただのマリアンヌとなります、そんな私にこの国の騎士であるあなたが騎士の誓いをしてまで仕えるに値しないと思うのですが、そんな私に仕えてよろしいの?私の事情を知らなかったのですから今なら先ほどの誓いを撤回できますよ」

「いいえ、撤回はしません。私は我が主人としてマリアンヌ様にお仕えしたく思います。」

戸惑いのあったマリアンヌはギスランの言葉と瞳に籠る強い意志を感じ嬉しさで頬が緩み自然と笑顔になっていた。

「…それでは…私も主人として恥じぬよう精進致しましょう。ギスラン、私の騎士として仕えなさい」

「生涯、お仕えし命に変えてもお守りいたします。」

「ふふ、ありがとう、でも命は大切にしてね、命なくては私を守れないでしょ。どんなに強くても時には逃げる事も必要だと言うことを忘れないでね。」

マリアンヌの笑顔にギスランも少し頬を染め自然な笑顔が溢れていた。

そんな2人のやり取りを見ていたランバートは予想だにしなかったギスランの突然の騎士の誓いに驚きを隠せないでいた。

それもそのはず、この国の最強騎士と言われたこの男は今まで誰にも騎士の誓いをすることがなかった。旧知の友であったギスランは

『生涯私が剣を捧げるのはただ1人と決めている、この剣を捧げるに相応しい人にいつか出会える日までに腕を磨くんだ』

と騎士になりたての頃から言っていた、騎士の頂点に立った今でも同僚や部下が次々国王に剣を捧げる最中頑なにそれを拒んでいた。その彼が初対面の他国の王女にあっさり剣を捧げる姿を目の当たりにした、これを驚くなと言う方が無理である。

そんな事情を知らないマリアンヌでさえ当然驚いていたが、それ以上に幼い頃からギスランを見て知っているランバートは腹黒の仮面がすっかり剥がれていた、それほど驚いていた……この友の行動と……初めてみる……ギスランの笑顔に…。


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