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scene・15
しおりを挟む「見て見て!ペンギン可愛い!」
私の腕を引っ張ってペンギンに指をさす澄海に思わず笑みが溢れる。
「見てる、見てる。ちゃんと見えてるから!引っ張らないで」
笑いながら言う私に、澄海は
「あ!あっち!白熊居るよ!白熊!」
とまた私の腕を引っ張って行く。
結局、澄海が水族館に行きたいと言ったので、私達は2人で水族館に来ていた。
澄海はとにかく、はしゃいでいる。
私はそんな彼に苦笑しながらも引っ張られるまま、色んな魚や動物を見て歩く。
周りはカップルや家族連ればかりだ。
私達って周りからどう見られてるんだろう。…姉弟?にしては、ちょっと歳が離れてるか…まさか親子…はないよね…多分…大丈夫な筈…。
「お姉さん、イルカのショーまでまだ時間あるね。お土産見に行かない?」
「お土産?誰に?」
「自分達に!ほら、記念、記念!」
とまた澄海は私を引っ張って歩く。
私はまたもや苦笑しながらも、彼にされるがままだ。
「お姉さん、それ欲しいの?」
ショップに入って、澄海から少し離れて、商品の棚を見て回る。
ふと目に入った小さなガラス細工のイルカを眺めていると、いつの間にか、隣に澄海がやって来ていた。
「可愛いなって思って。でもガラス細工は壊れそうで…」
と私が言えば、
「大丈夫だよ、そんな簡単には壊れないって。見て、このイルカ対になってる」
と彼は私の見ていたイルカの隣に向かい合うように置かれていたイルカをつまみ上げた。
「本当だ。2頭で対なら、片割れだけ買うの可哀想かな」
と私が言えば、
「2つとも買えば良いじゃん。俺が1つ持っとく!ね、買おう!」
と彼は対のイルカのガラス細工を持ってレジへと並ぶ。
私は少し強引な彼の、その後ろを急いでついて行った。
「楽しかったね!水族館!」
澄海が満面の笑みで私に言った。
「そうだね。何年ぶりかなぁ~水族館なんて」
と私が言えば、
「俺も久しぶりだった!ねぇ、お姉さんは何が1番可愛かった?俺はねぇ、やっぱりイルカかなぁ」
「私は…そうだなぁ…白熊かな」
「白熊も可愛かったよね!」
他愛もない話が楽しい。1人で居る事に慣れていたつもりだったけど、私…寂しかったのかな…。
2人でバス停まで歩いていると、後ろから、
「乃愛?」
と私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
聞き慣れた、少し低くて掠れた声。
あぁ…こんな所で、会いたくなかったな…。
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