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鬼との遭遇
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寝坊した俺は、息を切らして祠に近づいた。途端に目の前に現れたソレは何だろうか。人間?人間かもしれない。目の前のソレを人間と言うのならだけど。ソレは俺を見上げて何か喋ったみたいだ。声が小さいので、よく聞こえなかった。俺は恐る恐る、その人間のようなものに近づいた。
座り込んだソレは俺を睨みつけながら、薄い唇をパクパクと開けたり閉めたりしながら、何か言いたげだった。けれど喉が渇くのか喉に手を当ててケホケホと咽込んだ。俺は慌てて手に持っていたペットボトルを何も考えずにソレの口元に差し出した。
ソレは両手を伸ばして二リットルサイズのペットボトルを抱え上げると、ゴクゴクとこちらが心配になるくらい勢いよく飲み始め、ついには飲み干してしまった。
そして、口のはじから水を垂らしながら満足げな表情で俺を見上げて、怖いくらいにっこり笑った。俺はそれが怖い様な、逃げられない様な、背中がゾクゾクする様な何とも言えない気分で座り込んだソレを見下ろしていた。
その人間の様なソレは頭のてっぺんにツノのような尖ったものが見えていたし、白い着物みたいな格好をしていた。そしてソレはしわがれた声で俺にこう言った。
「お前のせいで、目が覚めた。我は青鬼ぞ。お前は誰だ?」
目の前の人間もどきは、もしかしたらと思っていたけれど、やっぱり鬼だった。冷静になれば鬼にしか見えないじゃないか。俺が頭の中でぐるぐる考え込んでいると、その鬼は俺に手を伸ばして言った。
「ほれ、おんぶせい。我は眠りから目覚めたばかりで、まだ眠い。」
俺は気怠い鬼に無意識に手を伸ばしたものの、ハッと気づいた。もしかして、おんぶしたら取り憑かれて離れなくなってしまうのじゃないのか?鬼って妖怪みたいなものだよな?あり得る。ここは警戒しないと。
俺は一歩下がって色白で切長の鋭い眼差しの鬼から離れると、用心深く、でも意識して敵意のない口調で話しかけた。
「…おんぶして、取り憑くつもりですか。」
「…人間、我を無理矢理に起こしたくせに、生意気を言うやつだな。一度起きたらしばらく眠れぬのだ。まさか、我をここに置き去りにする気じゃあるまいな?もう一度眠るには時が必要だぞ?」
俺より多少幼い風貌の割に、言ってることは中々大人びた内容だった。確かに、着の身着のままの座り込んだ少年の風貌の者を野晒しにするわけもいかないと思った。…頭にツノが生えていたとしても。俺は諦めて、再び手を伸ばしている機嫌の悪い鬼をおんぶすると、爺さんの家まで山を慎重に下った。
見かけより重い鬼は俺の背中で、キョロキョロと周囲を見渡している様だった。喋ると偉そうだが、黙っていると線の細いこ綺麗な高校生くらいに見える鬼は、女子高生に高い声で「きゃー、カッコイイ~♡」って言われるだろう。俺は女子高生じゃないから言わないけどな。それにおぶわれててカッコ悪いしな。
座り込んだソレは俺を睨みつけながら、薄い唇をパクパクと開けたり閉めたりしながら、何か言いたげだった。けれど喉が渇くのか喉に手を当ててケホケホと咽込んだ。俺は慌てて手に持っていたペットボトルを何も考えずにソレの口元に差し出した。
ソレは両手を伸ばして二リットルサイズのペットボトルを抱え上げると、ゴクゴクとこちらが心配になるくらい勢いよく飲み始め、ついには飲み干してしまった。
そして、口のはじから水を垂らしながら満足げな表情で俺を見上げて、怖いくらいにっこり笑った。俺はそれが怖い様な、逃げられない様な、背中がゾクゾクする様な何とも言えない気分で座り込んだソレを見下ろしていた。
その人間の様なソレは頭のてっぺんにツノのような尖ったものが見えていたし、白い着物みたいな格好をしていた。そしてソレはしわがれた声で俺にこう言った。
「お前のせいで、目が覚めた。我は青鬼ぞ。お前は誰だ?」
目の前の人間もどきは、もしかしたらと思っていたけれど、やっぱり鬼だった。冷静になれば鬼にしか見えないじゃないか。俺が頭の中でぐるぐる考え込んでいると、その鬼は俺に手を伸ばして言った。
「ほれ、おんぶせい。我は眠りから目覚めたばかりで、まだ眠い。」
俺は気怠い鬼に無意識に手を伸ばしたものの、ハッと気づいた。もしかして、おんぶしたら取り憑かれて離れなくなってしまうのじゃないのか?鬼って妖怪みたいなものだよな?あり得る。ここは警戒しないと。
俺は一歩下がって色白で切長の鋭い眼差しの鬼から離れると、用心深く、でも意識して敵意のない口調で話しかけた。
「…おんぶして、取り憑くつもりですか。」
「…人間、我を無理矢理に起こしたくせに、生意気を言うやつだな。一度起きたらしばらく眠れぬのだ。まさか、我をここに置き去りにする気じゃあるまいな?もう一度眠るには時が必要だぞ?」
俺より多少幼い風貌の割に、言ってることは中々大人びた内容だった。確かに、着の身着のままの座り込んだ少年の風貌の者を野晒しにするわけもいかないと思った。…頭にツノが生えていたとしても。俺は諦めて、再び手を伸ばしている機嫌の悪い鬼をおんぶすると、爺さんの家まで山を慎重に下った。
見かけより重い鬼は俺の背中で、キョロキョロと周囲を見渡している様だった。喋ると偉そうだが、黙っていると線の細いこ綺麗な高校生くらいに見える鬼は、女子高生に高い声で「きゃー、カッコイイ~♡」って言われるだろう。俺は女子高生じゃないから言わないけどな。それにおぶわれててカッコ悪いしな。
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