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束の間の安泰

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案の定スマホには、真己からの折り返し電話をしろと返事があった。俺は光一に断ると、席を立ってあまり人の来ない静かな場所で電話を掛けた。待っていたのか、真己は直ぐに出た。

「下僕のくせに、僕を一人にしようなんておこがましいな。まぁ、昨日は必要以上にお前を堪能したせいで、お前が日和ってるのも分かるから、外泊してもいいぞ。そうだな、僕も学校帰りにクラスメイトを連れ込んで楽しんでもいいな。お誘いは多いから…。」

俺は思わず畳み掛けるように言った。

「知らない奴を入れるのはダメだ!あそこは俺の家なんだからな⁉︎」


するとクスッと笑う声がして、妙に甘い声で真己は言った。

「冗談だ。僕も良い子を続けるのは辛いものがあるからな。それに、あそこは僕と一誠だけの家だからな?」

俺は真己に揶揄われてる事に気づいて、乱暴に電話を切った。あいつ、浄化とか言って、その実俺を利用して楽しんだんだ。何か道具になった気がしてムカムカ腹が立ってきた。俺が光一の待ってるテーブルに戻ると、光一は目を見開いて言った。

「…よっぽど、気が合わないのか。今の電話従兄弟くんだろ?さっきより怒ってるじゃん。で?泊まれるか?」


俺は頷くと、黙って席を立った。光一には八つ当たりになってしまうけれど、俺の中の渦巻く感情がまとまらなかった。あぁ、もう何も考えたくないよ。そんな俺の目の前を黒い闇に覆われた学生が横切った。人間、願うことは大概叶えられないものだ。もう何も感じたくないのに、その禍々しいものは俺を捉えて離さない。

「一誠?」

光一の声にハッと我に帰った俺は、何も見なかったと自分に言い聞かせながら光一ににっこり笑って言った。

「ん。泊まれて良かった。よろしくお願いします。」


俺のクサクサした気持ちと裏腹に、その日の夜は光一とピザを食べながら軽いサワーを楽しんで、遅くまでゲームを楽しんだ。俺よりちょっと上手い光一に俺はムキになって対戦を挑んだが、ギリギリのところで負け続けた俺はラグの上にコントローラーを握ったまま倒れ込んだ。

そんな俺に光一は、さっさと部屋を片付けると俺の寝場所を作った。俺は人の家だと言うのに、真己が側に居ない事に気が緩んだのか、朝までぐっすりと眠ったんだ。おかげで1限目は遅刻してしまった。でも平和はそこまでだった。廊下に真己が待ってるのを見るまで…。







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