7 / 42
第1章
陰口
しおりを挟む
私は殿下からいただいた金平糖を持ち、ほくほくと自分の部屋に戻った。
相変わらず殺風景で、物は何もない。
言ってしまえば、独房みたいな作り。
でもまあ、住めば都って言うし。
――って、1回だけでも良いから思ってみたかった。
私は木材で出来た椅子に腰かける。
1日中固い椅子に座っているせいで、腰とおしりが痛い。
太もももおかげで浮腫みまくっている。
これをなんて言うんだっけ?
エコノミー症候群?
せっかく羽があるのにこの国じゃ隠すしかないから、文字通り羽を伸ばすことも出来ない。
実に窮屈な生活。
机の上に置いてある魔法具を触り、仕事を再開する。
仕事の中で、特に大事なのはこの国に張り巡らせている結界だ。
この世界には、2つの種族に加えて魔物というものも存在する。
もともと魔族の手下のような存在だったが、上司である魔族が別の地に移住したため、彼らは晴れて自由の身となり、人間族に襲い掛かるようになった。
国の中に入ってこないようにするために、こうして私は魔法具を用いて結界を生み出しているわけだ。
それに、一応は我が妖精族も魔族の類。
魔族がいなくなったことで人間族に迷惑をかけているなら、それ相応の対処は必要だと思っている。
しばらく目を瞑って、魔法具に魔力を送り続けていると。
ガサッ。
扉の下の小窓が動いた。
食事の時間だ。
私は魔法具から手を離し、扉の方へ向かう。
……今日もパサパサのパンと冷たいスープだ。
私は屈んでお盆を取り、自分の机にもっていこうとした。
――そのとき。
「あら、何してるの?」
扉の向こう側で、女の人の声が聞こえた。
「こんなところにわざわざ来るなんて。珍しい」
どうやら、給仕係に話しかけているらしい。
私は黙って、扉に耳を当てる。
「だって、あの子今日休みなのよ」
給仕係は、不満の声を漏らした。
「だからこの私が、わざわざこんな意味わかんない場所まで食事を運ばされて」
「うわぁ。最悪ね。だってここ、あの『聖女』の部屋じゃない」
「聖女」という言葉に、侮蔑が含まれていた。
「そう、あの偽物の」
「何様なのよ、あの人。自分がただの魔力の多い人間なだけなのに、聖女様ぶっちゃって」
「性格悪そう」
くすくすと、意地の悪い笑い声が聞こえる。
「それに、あの人王子様に色目使っているわよ」
と、給仕係。
「私たまに見るもの。殿下が話しかけてくると、ベタベタした話し方で」
「やだ、気持ち悪い。自分ごときが殿下とどうにかなれると思ってんのかしら」
「思ってるんじゃない? だって、あの『聖女様』だし」
キャハハハハという甲高い笑い声が、だんだんと遠のいていった。
相変わらず殺風景で、物は何もない。
言ってしまえば、独房みたいな作り。
でもまあ、住めば都って言うし。
――って、1回だけでも良いから思ってみたかった。
私は木材で出来た椅子に腰かける。
1日中固い椅子に座っているせいで、腰とおしりが痛い。
太もももおかげで浮腫みまくっている。
これをなんて言うんだっけ?
エコノミー症候群?
せっかく羽があるのにこの国じゃ隠すしかないから、文字通り羽を伸ばすことも出来ない。
実に窮屈な生活。
机の上に置いてある魔法具を触り、仕事を再開する。
仕事の中で、特に大事なのはこの国に張り巡らせている結界だ。
この世界には、2つの種族に加えて魔物というものも存在する。
もともと魔族の手下のような存在だったが、上司である魔族が別の地に移住したため、彼らは晴れて自由の身となり、人間族に襲い掛かるようになった。
国の中に入ってこないようにするために、こうして私は魔法具を用いて結界を生み出しているわけだ。
それに、一応は我が妖精族も魔族の類。
魔族がいなくなったことで人間族に迷惑をかけているなら、それ相応の対処は必要だと思っている。
しばらく目を瞑って、魔法具に魔力を送り続けていると。
ガサッ。
扉の下の小窓が動いた。
食事の時間だ。
私は魔法具から手を離し、扉の方へ向かう。
……今日もパサパサのパンと冷たいスープだ。
私は屈んでお盆を取り、自分の机にもっていこうとした。
――そのとき。
「あら、何してるの?」
扉の向こう側で、女の人の声が聞こえた。
「こんなところにわざわざ来るなんて。珍しい」
どうやら、給仕係に話しかけているらしい。
私は黙って、扉に耳を当てる。
「だって、あの子今日休みなのよ」
給仕係は、不満の声を漏らした。
「だからこの私が、わざわざこんな意味わかんない場所まで食事を運ばされて」
「うわぁ。最悪ね。だってここ、あの『聖女』の部屋じゃない」
「聖女」という言葉に、侮蔑が含まれていた。
「そう、あの偽物の」
「何様なのよ、あの人。自分がただの魔力の多い人間なだけなのに、聖女様ぶっちゃって」
「性格悪そう」
くすくすと、意地の悪い笑い声が聞こえる。
「それに、あの人王子様に色目使っているわよ」
と、給仕係。
「私たまに見るもの。殿下が話しかけてくると、ベタベタした話し方で」
「やだ、気持ち悪い。自分ごときが殿下とどうにかなれると思ってんのかしら」
「思ってるんじゃない? だって、あの『聖女様』だし」
キャハハハハという甲高い笑い声が、だんだんと遠のいていった。
3
あなたにおすすめの小説
美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ
さら
恋愛
会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。
ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。
けれど、測定された“能力値”は最低。
「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。
そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。
優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。
彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。
人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。
やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。
不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
冤罪で山に追放された令嬢ですが、逞しく生きてます
里見知美
ファンタジー
王太子に呪いをかけたと断罪され、神の山と恐れられるセントポリオンに追放された公爵令嬢エリザベス。その姿は老婆のように皺だらけで、魔女のように醜い顔をしているという。
だが実は、誰にも言えない理由があり…。
※もともとなろう様でも投稿していた作品ですが、手を加えちょっと長めの話になりました。作者としては抑えた内容になってるつもりですが、流血ありなので、ちょっとエグいかも。恋愛かファンタジーか迷ったんですがひとまず、ファンタジーにしてあります。
全28話で完結。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる