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呼び出し ~リアム視点~

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 俺は父に呼び出され、父の部屋へ向かう。


 一体なんの話だろうか。


 前回呼び出されたときは、ろくな話じゃなかった。


 腹の立つままにシャーロットを殴ろうとしたあの日、教師に見つかって俺はこっぴどく叱られた。

 俺はあいつのせいで恥をかかされたのだ。


 あの件をシャーロットは両親に告げ口したのだろう、数日後送られてきたのは婚約破棄の手紙だった。


「……なんだこれは?」


 父は鬼のような形相で俺を睨みつける。

「お前、何をした?」

「……何を、というのは?」

「婚約破棄を提示されるようなことをお前はしたのか?」

「……」


 父の怒りは凄まじく、自分の身を守るために俺は黙り込むしかなかった。


 返事のない息子に対して、なぜか父はいつものように怒鳴りつけることをしなかった。


 それどころか、満面の笑みを浮かべて言い放つ。

「良くやったな」

「えっ」


 俺は驚いて目を丸くした。

「ちょっと早いが、良いタイミングだった」

「……一体どういうことでしょうか?」

 俺は尋ねる。

「あの家は、我々にとってもう用済みだということだ」

「はあ」

「我が家がなぜ、あのような連中と関わりを持とうという気になったか、わかるか?」

「それは……」


 慈善活動。

 そう言えばきっと、ぶっ飛ばされるだろう。


「我々は公爵家で、地位も名誉もある。しかし問題は、王族から離れた存在であったことだ」

「あの家と交流を持てば、王家に近づけると?」

「そうだ。あの家は一応王族の親族だからな。そうして我が家はお前をシャーロットと婚約させることにしたわけだ」


 父は続ける。

「私の計画はうまく行った。我々は王族との関係を持ち、お前の妹と王子との婚約もあと1歩のところまで来ている。婚約に漕ぎ着けるためにかなりの金を使ったが、それはあの家から借りれば問題はない」

「借りても、返す必要がありますよね?」

「お前は馬鹿か――借りるだけ借りて、あとは適当に濡れ衣を着せれば良いだろう」

「濡れ衣って例えば?」

「王家を乗っ取るとかな――我々の行動の責任を全部、あいつらに押し付けてしまえば一石二鳥だ」


 そう言えば、と父は尋ねる。

「お前と仲の良い女子生徒がいるようだな。この手紙に書いてあったぞ」

「あっ、はい。ジニーという男爵令嬢です」

「彼女のことを調べておいた。さすがは私の息子だ。あの家は大商会らしい。シャーロットと婚約破棄した暁には、ジニーと婚約させてやる」

「ですが彼女は」


 彼女はこの世界で数少ない清らかな人間だ。

 そんな人を、貴族のいざこざに巻き込みたくない。


「何を言う。お前も彼女と婚約出来るんだ。それ以上に嬉しいことはないだろう」


 前回の話はそうだった。

 今回は、一体どんな内容なのだろうか。


 
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