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ダンス
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私はランスに、舞踏会についての話をした。
「ランス、舞踏会に行きたくない?」
「舞踏会?」
「国王陛下主催のダンスパーティなの。貴族の面々が集まって社交ダンスをするのよ。男女2人1組になって参加して、一緒にダンスをするの」
「でも、君には一応正式な婚約者がいるだろ」
と、ランスは言った。
「それでも良いのか?」
「私はランスの方が良いの――ううん、ランスが良いのよ」
私は正直に伝える。
「お、俺?」
「ええ。でも、私はリアムと一緒に行かなくちゃ」
嫌だ。
だけど、そういうものだ。
仕方がないという面もある。
「だけど、もし彼に断られたら一緒に行ってほしいの」
「お、俺が」
「うん。保険みたいな扱いになっちゃって申し訳ないんだけど」
これ以上謝ると二股をする最低人間みたいな感じになってしまうので、私はこれ以上言葉を重ねることは辞めた。
「俺が良いのか」
「ええ」
ランスは少し照れたように頭を掻いた。
「そういうことなら、全然良い。大丈夫だ。だが、俺は踊れない。教えてもらわなきゃいけない」
「その辺は大丈夫、私が教えるから」
「助かる」
「でも、本当に大丈夫?」
「どういうことだ?」
「ランスはこれ以上忙しくなっても大丈夫なの? お願いした私が言うのもなんだけど、ランスは一日中勉強しているのに、それに加えてダンスの練習を入れるなんて」
「ああ。君は気にしなくて良い。どうせ社交ダンスは覚える必要がある。貴族の常識なんだろう?」
私は頷く。
「なら構わない」
「良かったわ。ご」
ごめんなさい、と癖で言おうとして、前の会話を思い出し、私は慌てて言葉を変えた。
「ありがとう」
「いいや、全然気にしないでくれ」
私たちはぎこちなく微笑み合う。
それにしても、溝が埋まらないのはどうしてだろう。
そんな深いものではなく、切羽詰まっていて深刻な問題というわけではないけれど、それでも私たちの間には、未だ気まずさがあった。
彼が来てから、もう数週間が経過している。
私たちは幼馴染だから、すぐにでも打ち解けられるのではないかと思っていたのに。
まだ何か、彼は私に遠慮している様子だった。
このダンスのことで。
私は思う。
ダンスの練習で、もっとランスと仲良くなれれば良いな。
「ランス、舞踏会に行きたくない?」
「舞踏会?」
「国王陛下主催のダンスパーティなの。貴族の面々が集まって社交ダンスをするのよ。男女2人1組になって参加して、一緒にダンスをするの」
「でも、君には一応正式な婚約者がいるだろ」
と、ランスは言った。
「それでも良いのか?」
「私はランスの方が良いの――ううん、ランスが良いのよ」
私は正直に伝える。
「お、俺?」
「ええ。でも、私はリアムと一緒に行かなくちゃ」
嫌だ。
だけど、そういうものだ。
仕方がないという面もある。
「だけど、もし彼に断られたら一緒に行ってほしいの」
「お、俺が」
「うん。保険みたいな扱いになっちゃって申し訳ないんだけど」
これ以上謝ると二股をする最低人間みたいな感じになってしまうので、私はこれ以上言葉を重ねることは辞めた。
「俺が良いのか」
「ええ」
ランスは少し照れたように頭を掻いた。
「そういうことなら、全然良い。大丈夫だ。だが、俺は踊れない。教えてもらわなきゃいけない」
「その辺は大丈夫、私が教えるから」
「助かる」
「でも、本当に大丈夫?」
「どういうことだ?」
「ランスはこれ以上忙しくなっても大丈夫なの? お願いした私が言うのもなんだけど、ランスは一日中勉強しているのに、それに加えてダンスの練習を入れるなんて」
「ああ。君は気にしなくて良い。どうせ社交ダンスは覚える必要がある。貴族の常識なんだろう?」
私は頷く。
「なら構わない」
「良かったわ。ご」
ごめんなさい、と癖で言おうとして、前の会話を思い出し、私は慌てて言葉を変えた。
「ありがとう」
「いいや、全然気にしないでくれ」
私たちはぎこちなく微笑み合う。
それにしても、溝が埋まらないのはどうしてだろう。
そんな深いものではなく、切羽詰まっていて深刻な問題というわけではないけれど、それでも私たちの間には、未だ気まずさがあった。
彼が来てから、もう数週間が経過している。
私たちは幼馴染だから、すぐにでも打ち解けられるのではないかと思っていたのに。
まだ何か、彼は私に遠慮している様子だった。
このダンスのことで。
私は思う。
ダンスの練習で、もっとランスと仲良くなれれば良いな。
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