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回答②

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「おい」


 リアムは、私の机を思いきり手のひらで叩く。

 大きな音が響き、私は驚いて少し飛び上がった。


 ――が。

 私は彼を無視して、クラスメイトたちと話を続ける。


「――それで、今日の小テスト対策した?」

「う、うん。まあ」

「でも、今日の範囲難しいよな」

「そうなの。だから、みんなに教えてもらいたくって」


 私は自習ノートを開き、みんなに見せる。

「ここの問題なんだけど……」

「うん」

「公式、これで合ってるわよね? だけど何回解いても、答えがおかしなことになっちゃって」

「ああ。それ、計算式がこうなるんだよ」

「あー」

「で、こっちをこうすれば、ちゃんとした答えが出てくる」

「なるほど。ありがとう」


 その間もリアムは、

「おい」

 だの、

「聞いてんのか」

 だの、色々と喚いてきたが、私はそれをことごとく全部無視した。


「おい!」

 最終的に、ブチ切れたリアムが私の肩を強引に掴んだ。


「きゃあっ」

 私は悲鳴をあげる。

「痛っ」


「おい、何をする!」


 ランスがその腕を引き剥がし、私を庇うように立ち上がった。

「シャーロット、大丈夫か?」

「うん……。ありがとう」


 私は、冷たい視線をリアムに向ける。

「一体どういうこと? 急に何?」

「それはこっちのセリフだ!」

 リアムは、完全に怒り狂っていた。

「婚約者である俺を無視するとは、良い度胸だな。一体なんの権限があって、そんな無礼な振る舞いをするんだ?」


「あらまあ」

 私は意地悪く微笑んだ。

に話しかけていたんですね。ごめんなさい、気づかなかったもので。なんせ、挨拶せずに急に、

『おい』

 なんて言い出すんですもの。てっきり、その辺の虫に話しかけているのか、それとも独り言を大声でおっしゃっているのかと」

「……なんだと?」

 リアムは目を怒らせた。

「誰が虫に話しかけているだって? 誰が独り言を言っているだって?」

「だって、そうではありませんか? 挨拶は基本中の基本。挨拶がなければ、誰も自分に話しかけられているなんて思いませんもの」


 挨拶は、貴族のマナーの中でも最重要、超当たり前のものだ。


 それがなければ、本来会話出来る段階にすら入れない。

「そんなこと、公爵家の御子息様には十分おわかりかと思っておられましたが。そうですか、これは大変失礼しました。も、いちいち教えてさしあげないといけなかったんですね」


 くすくすと、笑い出すクラスメイトたち。

 自分が馬鹿にされていると悟ったリアムは、顔を真っ赤にした。


 
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