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調査 ~ウィル視点~

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 私はラッキーだった。


 大事な、自分たちの運命を決めるほど大切な商談をドタキャンしてまで私を助けてくれる人がいたのだから。


 だが、どうしても私の心は晴れなかった。

 私を助け、路頭に迷ってしまったあの人たちのことを思って。


 いやそもそも、私なんかを助けようと思ったあの優しいお嬢様を思って。


 私は幸運だった。

 年齢を誤魔化して入った教会。

 そこでたまたま、三代目聖女選別会が行われるということ。

 そこにミアが参加することを。


 運命の歯車とはこうも上手く回るものなのか。


 私は様々な手を使って、聖女のお付きという立場を手に入れた。

 それと同時期に、ミアも三代目聖女に選ばれる。


 私はここで覚悟を決めたのだ。


 今度こそ、彼女の役に立とう。

 彼女のために、生きて行こうと。


 ――だからこそ。


 バコッ。


「ぎゃっ」

「痛っ!」


 聖女の靴箱にカエルの死骸を入れるような野蛮な連中を、放置しておくわけにはいかなかった。


 私に鳩尾を蹴られ、壁に激突する貴族子息。

 
 確かこいつらは、先々代側の貴族の子どものはずだ。

 あのピートとかいうクソの友人でもある。


 私の独自の調査によると、こいつらが聖女の靴箱近辺でウロウロしているのを見かけた者が何人もいた。


 こいつらが犯人かどうかはまだ断定出来ないが、何か知っている可能性は当然捨て切れない。


 ――ということで。


 をすることにしたのだ。

 知っていることがあれば、全部話してくれと。

 少々な手ではあると思ったが、致し方ない。


「それで?」

 私は蹲っている連中に向かって言った。

「何を知ってらっしゃるんです? 良ければ教えていただきたいのですけど」


 しかし、子息は答えない。

 それどころか、


「お、お前……! 先々代に言いつけてやるからな!」

「暴力を振るう神官など聞いたことがない!」


 と、自分たちを棚に上げて私を罵ってくる。


「先に殴ろうとしてきたのはそちらでは?」

 私はため息をついた。

「私のは正当防衛です。ほら、ここにきちんとデータがありますし」


 私は耳につけていた小型カメラを見せる。


「あっ」


 子息たちは気まずそうに顔を見合わせる。


 そもそもこの連中から、1人でうろついている私に向かって突然殴りかかったのだ。

 まさかこんなに簡単に釣れるとは思っていなかったが。


「まあ、そこまでおっしゃるならどうぞ私を訴えてください。その場合、私も当然応戦するので。この映像は教会に提出いたしますが」


 ああ、と私は嘆く。


「みなさん、驚くでしょうね。まさか貴族子息が神に仕える神官に向かって暴力を振るおうとするだなんて。なんて罰当たりなんでしょうかね」


 連中に向かってウィンクする。


「ただまあ神官の私は慈悲深いので、こちらの映像をもみ消すことも出来ます。当然、交換条件はありますが――」
 
 
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