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2章
2章23話(124話)
しおりを挟むひとりずつ呼ばれて、水晶に手を置き、自分の属性と現在のコントロール力を調べる。力強い文字が浮かび上がる人、崩れている人、弱々しい人……魔力のコントールを教わってこなかったのだろう。……もしかして、魔力がそんなに高くない人はアカデミーから習うのかもしれない。生活魔法はそんなに魔力を使わないし……。
「アルフレッド・アンダーソン」
「はい」
アル兄様が呼ばれて水晶に手を置く。星、と綺麗な文字が浮かび上がる。ヴィニー殿下も同様に。男子全員が終わり、女子の番になった。私の名が呼ばれたから椅子から立ち上がって水晶に手を置く。太陽と月。きちんと文字になっていた。
ざわっと教室内がざわついた。私のように二つ属性を持つ人は少ないから、珍しかったのだろう。
「ああ、やっぱり綺麗な字だな。うまくコントロール出来てる」
ぽつりとイーデン先生が呟く。……褒められちゃった。ちょっと……いや、かなり嬉しい。魔力のコントロール、がんばって覚えた甲斐があった。
その後にわかったことは、ディアが水の属性(コントロールはちょっと不安定)、ジーンが風の属性(コントロールバッチリ)と言うことだった。そして――個人的に気になっていたジェリーの属性は太陽のひとつのみ。太陽自体も珍しい属性だから、一瞬教室がざわついた。
「ひとつだけなんだ……」
「太陽も珍しいけどね……」
アル兄様とヴィニー殿下がそんなことを話していたのを聞いて、私は顔を向ける。アル兄様はひらりと手を振った。気にするな、ってことかな。
最後の人が水晶玉に触れて、この日の授業はそれで終わり……かと思ったら、パンッ、とイーデン先生が両手を叩いて自分に注目させた。
「魔法基礎を教える前に、これだけは伝えなくてはならない。触れなければならないことがあるんだ。――禁忌魔法についてだ」
イーデン先生の真剣な表情に、私たちはごくりと唾を飲み込む。……禁忌魔法。アカデミーでこの名を聞くとは……。いいえ、むしろ当然なのかもしれない。
「禁忌魔法を行うことは許されない。禁忌魔法は使うとその身を滅ぼすと言われている。実際禁忌魔法を行った人物を見たことはないが……、昔からの言い伝えだからな。魔法は便利だが、頼りすぎると身を滅ぼすことになると理解すること」
……ジュリーのことを、思い出した。あの子が禁忌魔法を使ったのかはわからない。ただ、精神を操作する魔法も禁忌魔法にあることを思い出した。……どうしてジュリーにばかりファロン家の人たちが優しかったのか……。……それはもう、過去のことと受け入れないといけないよね。今、私に優しくしてくれている人たちのためにも。
「そんな禁忌魔法だが、授業では絶対に教えないので割愛する。身を滅ぼしたくなかったら、禁忌魔法に興味を持つなよ、と言う先生からのとっても・ありがたい・アドバイス、だ!」
「先生は調べたことないんですかー?」
「種類が豊富過ぎて諦めた。あと、単純に自分の研究に忙しい」
……忙しい人で良かった、と思うのは……ダメなことかしら……?
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