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2章
2章24話(125話)
しおりを挟む次の授業まで時間があるから、ディアとジーン、アル兄様とヴィニー殿下で少し話すことになった。教室に残り、ディアが頬に片手を添えてはぁ、と小さくため息を吐く。
「わたくし、コントロールが出来ていませんのね……」
「君の国では習わないの?」
「十四番目の王女に構う人はいませんわよ……」
おばあさまくらいしか、と小声で付け足すディアに、私とジーンは顔を見合わせた。ジーンがぽんとディアの肩に手を置き、慰めるように声を掛ける。
「今からでも充分コントールを覚えられるわ。きっとディアの魔力は高いのよ」
「高いのと、不安定なのには何か関係が……?」
アル兄様がディアの疑問に答えた。
「あるよ。魔力は低いほどコントロールしやすいんだ。まぁ、君の場合はちょっと高いくらいだから、コツさえ掴めばすぐにコントロール出来ると思うよ。そしてコントロールを覚えたらマジックバリアを常に意識しておくと良いよ」
「だね、身の安全、大事」
ヴィニー殿下が同意した。そして、周りに人が居なくなったのを見計らって、ヴィニー殿下が言葉を紡ぐ。
「……ジェリー・ブライトのことなんだけど……」
私は思わずヴィニー殿下に顔を向ける。彼は、私を安心させるために微笑んで、それから手を組んでそこに顎を乗せるように机に肘をついた。
「ちょっと調べてみようかなって思うんだ」
「調べる……ですか?」
ジーンがちょっと不安そうに私たちを見た。ヴィニー殿下は少しだけ首を縦に動かす。すっと目を細めると、微笑みから一転、真剣な表情を浮かべた。
「魔力の流れが二つ見えるのに、属性は太陽のひとつだけ。それだけでも充分に怪しいと思うし……、『ブライト』ってブライト商会だろうし、その商会、今とても変な動きをしているんだ」
「変な動き……?」
「……そう。以前はとても活気のある商会だったんだけど、今は隠れて何かをやっているみたい……。杞憂なら良いんだけどさ。それで、だ。アル、エリザベス嬢、……君たちにとってはあまり気乗りしないかもしれないけれど、『ファロン家』について調べてくれない?」
私は大きく目を見開き、アル兄様はぴくりと眉を動かした。
「ファロン家の何を調べるのさ?」
訝しむようにアル兄様がヴィニー殿下を見る。ヴィニー殿下は小さく肩をすくめて、それから目を閉じた。
「――ファロン家の家系図が欲しい」
「……家系図……?」
「二年前に一度探しては見たんだけど、三代目からくらいしか見つからなくて……。まるで意図的に隠されているかのように。……何を隠しているのか、気にならない?」
目を開けて口角を上げ、ゆったりとした動きで首を傾げて問いかけるヴィニー殿下に、私とアル兄様は顔を見合わせて――同時にうなずいた。
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