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2章
2章45話(146話)
しおりを挟む出来上がったアミュレットをレイチェル様へ渡すと、彼女はとても嬉しそうに笑って、アミュレットを大事そうにハンカチに包んだ。
「ありがとう、大事にするよ」
「イヤリングのお礼ですもの、お気になさらずに……」
そんなやり取りを見ていたジーンが、じっと宝石に視線を向ける。どうしたのだろうと思い、ジーンに声を掛けると……。
「ねぇ、エリザベス、レイチェル様。純度の高い宝石なら、アミュレットと連絡機能を合わせられると思いますか?」
「お勧めはしないな。私が作ったイヤリングは、安価なものだから。試作品だしね」
「値段が釣り合わない、と?」
「と言うか、連絡機能は連絡機能として働かせておかないと……。アミュレットなら、役割を果たすと壊れることもあるからね」
「なるほど……連絡機能もろとも、壊れてしまうのですね」
「そういうこと」
……ジーンとレイチェル様の会話についていけない。アミュレットって壊れるんだ……。二年前に作ったアミュレット、まだ壊れていないから永久的に使えるのかと思っていたわ……。
「ジーンは本当に商売が好きなのねぇ……」
「新しいものが好きなだけよ。レイチェル様、男性用にもアクセサリー型の連絡機能があれば便利かと……」
「しかし男性用は中々難しくないかい? アクセサリーを身につける人って、大体シンプルなものを望むから……、これは貴族の伯爵以上の特徴のような気がするが……」
……伯爵以上はシンプルなアクセサリーを望むの……? 私が首を傾げていると、イヴォンがくすくすと笑った。そして、「確かに」と呟くのを聞いて、私はイヴォンの元に近付いて彼女の隣に座る。ソルとルーナも一緒に。私の肩にソル、膝の上にルーナが居る状態だ。ルーナのふわふわとした毛並みを撫でながら、イヴォンに尋ねる。
「どうして伯爵以上?」
「身分が下の人ほど、自分のことを大きく見せようとして、ごてごてのアクセサリーを身につけているのよ。男爵が大きな宝石を使った指輪を何個もはめていたりね。そして、身分が上になればなるほど、質の良いシンプルなものを好むようになるの」
言われてみれば、お父様とお母様が身につけているアクセサリーはシンプルなものが多く、ファロン家のお父様とお母様が身につけていたアクセサリーは大きな宝石が多かった。まぁ、そのアクセサリーの大半はお金に換金されて、ジュリーのアクセサリーと変わっていったのだけど……。
……子爵家とは言え、結構なお金を持っていたような気がする。今思えば不思議なことが多いわよね、ファロン家って……。
ファロン家の家系図って、どこにあるのかしら……?
「家系図ってどこで調べられるかな?」
「一般的にはその土地の教会じゃないかしら? 出生やら死亡やら管理しているのは教会のハズだから」
「教会が管理を?」
「名前のことがあるからね、特に貴族の名前は……」
呪われる可能性があるから……? ……私の場合、どういう届け出になっているのだろう? アル兄様が見せてくれた『血の記憶』の通り、ファロン家の娘として出されてはいるのだろうけど……。
「自分の家系図を見てみたくなった?」
「う、うん。私、アンダーソン家の養女だし、どんな風に書かれているのか気になるわ」
咄嗟に嘘をついてしまった。……ううん、まるっきり嘘と言うわけでもない。アンダーソン家の家系図も気になるもの……。
「それじゃあ、今度の休みに調べてみる?」
「調べられるの?」
「ええ。アンダーソン家なら教会でも神殿でも保管されていると思うしね」
イヴォンの申し出に、私は「是非!」と答えた。
……それにしても、教会と神殿の違いってなにかしら……?
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