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2章
2章70話(171話)
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「ソル、ルーナ。どうすればいい?」
「吹き飛ばすのだろう?」
「なら、やることは単純! でも、コントロールが大変かも?」
ソルとルーナはそう言って、私の肩に乗った。すると、私の頬に擦りついて来た。可愛いけれど、なにをしているんだろう……? と思っていたら、ぽかぽかと身体が温かくなった。……魔力だ。魔力を戻してくれたのだろう。
「エリザベスの御心のままに」
「祈って、エリザベス。ここから出て行け~って!」
……祈る、だけで良いの? ……いや、ソルとルーナがそう言っているのだから、私は信じるだけだ。
左右を見れば、ジーン、イヴォン、ディア、レイチェル様が私のことを心配そうに見ていた。私はゆっくりと息を吐いて、それから胸元で手を組んで目を閉じる。
――この濃い魔力が、吹き飛びますように――……。
私が祈っている間になにがあったのかはわからない。とにかく、祈りに祈った。
「……もう良いぞ」
「吹き飛んだよ!」
ソルとルーナの言葉を聞いて、ゆっくりと目を開く。ジーンとイヴォンが疲れた顔をしていた。ディアとレイチェル様はそんな二人を支えるように肩を抱いていた。
「……エリザベスの魔力は、すごいわね……」
ジーンのしみじみとした言葉に、みんながうなずいた。首を傾げると、ソルとルーナが「そうだろう、そうだろう」となぜか自慢げに胸を張っていた。
「だ、大丈夫……?」
「ジーンとイヴォンはちょっと疲れちゃったみたい。わたくしたちはなにも出来なかったけれど……」
「なにを言っているんだい、クラウディア王女。私たちの役割はここからだろう」
レイチェル様がイヴォンを、ディアがジーンを支えて部屋へと戻る。私たちも一緒に戻り、イヴォンとジーンをベッドに休ませると、私はディアとレイチェル様にお礼を言った。
「ありがとうございます、助かりました」
「いや、なんのこれしき。……しかし、一体どうやって吹き飛ばしたんだい?」
「それが、私にはさっぱり……」
「エリザベスの皆を思う気持ちが魔力に変わり」
「二人の属性を使い、寮内に風を巡らせて飛ばしたの!」
……そうだったんだ。二人の魔法で飛ばしてくれたのね……。レイチェル様が怪訝そうな表情を浮かべて、ソルとルーナを見ていた。
「それなら、イヴォンとジーンだけで良かったのではないか?」
「二人の魔力だけでは無理だ。エリザベスの魔力が加わることで、ようやく寮内のあの重苦しい魔力を吹き飛ばせた」
「リザに祈って、と言ったのは、そのため?」
「そう。エリザベスの魔力で軽くして、吹き飛ばしたのだ」
なるほど……? いや、よくわかっていないけれど……。私一人でも、ジーンとイヴォンの二人だけでもダメだったみたいね。
「お二人は、身体に異変はありませんか……?」
「わたくしは平気。ただ、寮内では体調を悪くして倒れている方が多かったみたい……」
「だね。……私たちが平気なのは、恐らく君がくれたアミュレットの効果だろう」
そう言って二人はそっとアミュレットに触れた。……私の作ったアミュレットが役立っているようで、心底ほっとした。
「女子寮だけなのかしら……?」
「恐らくね。ただ、これと似たような魔力がアカデミー内にも漂っているのが気にかかる」
……ディアが体調不良になった時よりも濃い魔力だった。アカデミー内に、こんなに濃い魔力が漂っていたら、ただ事ではない、よね……? 後でアル兄様やヴィニー殿下にも相談してみよう。
「……さて、それじゃあ動ける私たちは、アンの手伝いにでも行こうか」
「はい」
「わかりました」
そうして私たちは、体調を崩した人たちの看病をすることになった。マジックバリアを無意識で使える人は軽症で、使えない人はぐったりとしていて重症に見えた。……アカデミーから魔力の使い方を習う貴族も多いと聞いたから……、その人たちを狙って……?
でも……なぜそんな回りくどいことを……? そんなことを考えながら、みんなの看病をした。
「吹き飛ばすのだろう?」
「なら、やることは単純! でも、コントロールが大変かも?」
ソルとルーナはそう言って、私の肩に乗った。すると、私の頬に擦りついて来た。可愛いけれど、なにをしているんだろう……? と思っていたら、ぽかぽかと身体が温かくなった。……魔力だ。魔力を戻してくれたのだろう。
「エリザベスの御心のままに」
「祈って、エリザベス。ここから出て行け~って!」
……祈る、だけで良いの? ……いや、ソルとルーナがそう言っているのだから、私は信じるだけだ。
左右を見れば、ジーン、イヴォン、ディア、レイチェル様が私のことを心配そうに見ていた。私はゆっくりと息を吐いて、それから胸元で手を組んで目を閉じる。
――この濃い魔力が、吹き飛びますように――……。
私が祈っている間になにがあったのかはわからない。とにかく、祈りに祈った。
「……もう良いぞ」
「吹き飛んだよ!」
ソルとルーナの言葉を聞いて、ゆっくりと目を開く。ジーンとイヴォンが疲れた顔をしていた。ディアとレイチェル様はそんな二人を支えるように肩を抱いていた。
「……エリザベスの魔力は、すごいわね……」
ジーンのしみじみとした言葉に、みんながうなずいた。首を傾げると、ソルとルーナが「そうだろう、そうだろう」となぜか自慢げに胸を張っていた。
「だ、大丈夫……?」
「ジーンとイヴォンはちょっと疲れちゃったみたい。わたくしたちはなにも出来なかったけれど……」
「なにを言っているんだい、クラウディア王女。私たちの役割はここからだろう」
レイチェル様がイヴォンを、ディアがジーンを支えて部屋へと戻る。私たちも一緒に戻り、イヴォンとジーンをベッドに休ませると、私はディアとレイチェル様にお礼を言った。
「ありがとうございます、助かりました」
「いや、なんのこれしき。……しかし、一体どうやって吹き飛ばしたんだい?」
「それが、私にはさっぱり……」
「エリザベスの皆を思う気持ちが魔力に変わり」
「二人の属性を使い、寮内に風を巡らせて飛ばしたの!」
……そうだったんだ。二人の魔法で飛ばしてくれたのね……。レイチェル様が怪訝そうな表情を浮かべて、ソルとルーナを見ていた。
「それなら、イヴォンとジーンだけで良かったのではないか?」
「二人の魔力だけでは無理だ。エリザベスの魔力が加わることで、ようやく寮内のあの重苦しい魔力を吹き飛ばせた」
「リザに祈って、と言ったのは、そのため?」
「そう。エリザベスの魔力で軽くして、吹き飛ばしたのだ」
なるほど……? いや、よくわかっていないけれど……。私一人でも、ジーンとイヴォンの二人だけでもダメだったみたいね。
「お二人は、身体に異変はありませんか……?」
「わたくしは平気。ただ、寮内では体調を悪くして倒れている方が多かったみたい……」
「だね。……私たちが平気なのは、恐らく君がくれたアミュレットの効果だろう」
そう言って二人はそっとアミュレットに触れた。……私の作ったアミュレットが役立っているようで、心底ほっとした。
「女子寮だけなのかしら……?」
「恐らくね。ただ、これと似たような魔力がアカデミー内にも漂っているのが気にかかる」
……ディアが体調不良になった時よりも濃い魔力だった。アカデミー内に、こんなに濃い魔力が漂っていたら、ただ事ではない、よね……? 後でアル兄様やヴィニー殿下にも相談してみよう。
「……さて、それじゃあ動ける私たちは、アンの手伝いにでも行こうか」
「はい」
「わかりました」
そうして私たちは、体調を崩した人たちの看病をすることになった。マジックバリアを無意識で使える人は軽症で、使えない人はぐったりとしていて重症に見えた。……アカデミーから魔力の使い方を習う貴族も多いと聞いたから……、その人たちを狙って……?
でも……なぜそんな回りくどいことを……? そんなことを考えながら、みんなの看病をした。
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