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2章
2章71話(172話)
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翌日、アカデミーの授業に向かうと、ちらほらと欠席している人がいることに気付いた。そのことに関して、先生はなにも言わなかった。
今日の授業は魔法の実践だ。まばらになったからか、クラス合同になった。先生は二人。女性の先生だ。マクシーン先生とシャノン先生。魔法の実践はそれぞれの属性に合わせた魔法を教えてもらい、実践する。……四大属性、光や闇はともかく……私の属性は太陽と月。どういう魔法が得意なのか、自分でもわからない。それなりにすべての属性を使えるようだけど……。
「珍しい属性を持っている二人は、一番使う属性を試してみて」
……その二人とは、私とジェリーのことだ。ジェリーへと視線を向けると、彼女も私を見ていたようでにこりと微笑んだ。そして、魔法の実践のために「先に試しても良いかしら?」と聞いて来たので、こくりと首を縦に動かした。
ジェリーはすっと目を閉じて魔力を溜めて、目を開けるとゆっくりと炎を出した。目の前の的に向けて炎を放つと、炎は的に当たり燃え尽き、灰が舞った。……すごい威力ね。彼女の魔力を身近で受けても、あの重苦しいほどの魔力とは別のようだ。……ただ……やっぱり彼女には、なにかがあるような気がする。
「……では、エリザベス様、どうぞ」
「……ええ」
先生が新しい的を用意してくれたので、私は彼女と同じように炎を選択した。そして、的に向けて放つ。炎は的に当たり、散った。それを見たマクシーン先生が「素晴らしいコントロールね」と褒めてくれた。その言葉に反応したかのように、ジェリーが私を見る。
「それはどういう意味でしょうか? 私には、エリザベス様の放った魔法はあまり威力がないように見えましたが」
ぴり、っと空気が冷えるのを感じた。――彼女がこうやって私に対して悪意を向けるのは、あの時以来ね……。そして、ジェリーの言葉に賛同するように、彼女のクラスの人たちが「そうですよ、的を壊せないほどの威力だっただけでしょう?」と言葉を発する。
マクシーン先生は呆れたように彼女たちを見る。
「的を壊されると新しい的を用意しないといけないだろう。一応これも経費で作っているんだからな。大切に扱いたまえよ」
「まぁ、魔法の実践とは的を破壊するのが目的ではないのですか?」
「当たり前だろう。魔力のコントロールを覚えるのが先だ。破壊願望でもあるのか、君は」
「ありませんわ、そんなもの。ただ、力を見せつけるのも、貴族の仕事なのではないかと思いまして」
マクシーン先生はそれを聞いて、ゆっくりと息を吐いた。
「力を見せつける貴族の大半は、大体が没落したがね」
「……っ」
ジェリーが息を飲んだ。その表情は、なにかを思い出しているようで……。一体なにを思い出しているのかしら?
「ジェリー・ブライト。確かに時には力を見せつけることも大切だ。……だが、人を力で抑えつけるやり方では……いつかやり返されるものだ」
「なるほど、覚えておきますわ」
「そうしてくれ」
……ピリピリとした空気が流れている。その空気を取り払うようにパンパンと手を叩くシャノン先生。
「まだ授業中よ。ほら、散った散った」
シャノン先生の声に、私はジーンたちの元へと向かった。ジェリーがじっと私を見ていたことには気付かないふりをした。
「……大丈夫?」
「ええ、ありがとう」
「……彼女、リザに悪意を向ける時だけ別人のようね」
今日の授業は魔法の実践だ。まばらになったからか、クラス合同になった。先生は二人。女性の先生だ。マクシーン先生とシャノン先生。魔法の実践はそれぞれの属性に合わせた魔法を教えてもらい、実践する。……四大属性、光や闇はともかく……私の属性は太陽と月。どういう魔法が得意なのか、自分でもわからない。それなりにすべての属性を使えるようだけど……。
「珍しい属性を持っている二人は、一番使う属性を試してみて」
……その二人とは、私とジェリーのことだ。ジェリーへと視線を向けると、彼女も私を見ていたようでにこりと微笑んだ。そして、魔法の実践のために「先に試しても良いかしら?」と聞いて来たので、こくりと首を縦に動かした。
ジェリーはすっと目を閉じて魔力を溜めて、目を開けるとゆっくりと炎を出した。目の前の的に向けて炎を放つと、炎は的に当たり燃え尽き、灰が舞った。……すごい威力ね。彼女の魔力を身近で受けても、あの重苦しいほどの魔力とは別のようだ。……ただ……やっぱり彼女には、なにかがあるような気がする。
「……では、エリザベス様、どうぞ」
「……ええ」
先生が新しい的を用意してくれたので、私は彼女と同じように炎を選択した。そして、的に向けて放つ。炎は的に当たり、散った。それを見たマクシーン先生が「素晴らしいコントロールね」と褒めてくれた。その言葉に反応したかのように、ジェリーが私を見る。
「それはどういう意味でしょうか? 私には、エリザベス様の放った魔法はあまり威力がないように見えましたが」
ぴり、っと空気が冷えるのを感じた。――彼女がこうやって私に対して悪意を向けるのは、あの時以来ね……。そして、ジェリーの言葉に賛同するように、彼女のクラスの人たちが「そうですよ、的を壊せないほどの威力だっただけでしょう?」と言葉を発する。
マクシーン先生は呆れたように彼女たちを見る。
「的を壊されると新しい的を用意しないといけないだろう。一応これも経費で作っているんだからな。大切に扱いたまえよ」
「まぁ、魔法の実践とは的を破壊するのが目的ではないのですか?」
「当たり前だろう。魔力のコントロールを覚えるのが先だ。破壊願望でもあるのか、君は」
「ありませんわ、そんなもの。ただ、力を見せつけるのも、貴族の仕事なのではないかと思いまして」
マクシーン先生はそれを聞いて、ゆっくりと息を吐いた。
「力を見せつける貴族の大半は、大体が没落したがね」
「……っ」
ジェリーが息を飲んだ。その表情は、なにかを思い出しているようで……。一体なにを思い出しているのかしら?
「ジェリー・ブライト。確かに時には力を見せつけることも大切だ。……だが、人を力で抑えつけるやり方では……いつかやり返されるものだ」
「なるほど、覚えておきますわ」
「そうしてくれ」
……ピリピリとした空気が流れている。その空気を取り払うようにパンパンと手を叩くシャノン先生。
「まだ授業中よ。ほら、散った散った」
シャノン先生の声に、私はジーンたちの元へと向かった。ジェリーがじっと私を見ていたことには気付かないふりをした。
「……大丈夫?」
「ええ、ありがとう」
「……彼女、リザに悪意を向ける時だけ別人のようね」
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