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2章

2章96話(197話)

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 ……ただ、相も変わらず女子寮は濃い魔力に満たされているし、ジェリーとジェリーのクラスメイトたちは私を親の仇のような目で見ていたけれど、彼女のクラスメイトたちはともかく、女子寮の魔力はせっせと追い出してはいるの。……きりがないほどだけど……。この状況、いつまで続くのかしら……。
 そんなことを考えつつ、アカデミーで授業を受けたり、アミュレットを作ったりとそれなりに忙しい日々を送っていた。
 そして週末、一度アンダーソン家に帰ってからドレスに着替え、馬車で王城へと向かった。
 お父様とお母様も一緒に。王城につくとヴィニー殿下が迎えてくれて、そのまま謁見室まで足を進める。謁見室には陛下と王妃殿下、そしてヴィニー殿下の兄二人が待っていた。……そう言えば、ヴィニー殿下の兄をこうしてじっくり見るのは初めてかもしれない。
 金髪に紫の瞳。ヴィニー殿下と同じ色のハズなのに、なぜこんなにも違うように見えるのだろう。……ああ、そうか。こんなにジロジロとヴィニー殿下は私を見なかった。視線を感じながらも、私たちは陛下たちに挨拶をする。

「楽にしてくれ。急な呼び出しに応えてくれて感謝する」

 ふわりと表情を綻ばせながら陛下が私たちに声を掛ける。私たちが「恐縮です」と答えてから、本題に入った。

「……今年の建国祭、アンダーソン家の子女であるエリザベス・アンダーソンに舞姫を任せたい」
「光栄です、陛下」

 すっとカーテシーをして答えると、どこかホッとしたように息を吐く陛下の姿が見えた。

「そうか、良かった。よろしく頼む。舞姫とアカデミーの両立は大変かもしれないが、君なら恐らく大丈夫だろう。なぁ、トレイシー?」
「そうですわね、陛下」

 扇子で口元を隠しながらも、王妃殿下が楽しくてしょうがないって顔をしているのがわかった。そして、ヴィニー殿下の二人の兄のうち、背の高いほうが私のことをじぃっと見ていることに気付き、そちらへ顔を向ける。

「……背が低いようですが、大丈夫なのですか?」

 疑うような視線だ。どんな疑いなのかはわからないけれど。

「大丈夫ですよ、兄上」

 きっぱりと、ヴィニー殿下が強い口調で……そしてどこか冷めた目で彼を見る。そして、一歩前に出ると、私の前に立つ。

「彼女の輝きは、他の者には真似できませんから」

 ……なんだか気恥ずかしい言葉を聞いた気がする。みんなきょとんとした表情を浮かべて、それから「それは楽しみだ」と陛下が笑みを深めた。

「それでは、舞姫についてだが――……」

 それからは舞姫が踊るための場所や人数、そしてディアの故郷の舞を見てみたいとか……いつの間にか舞姫の話から雑談に変わっていった。そしてなぜか一緒に食事を摂ることになり、食事を済ませてからアンダーソン家に戻った。……ああ、とても緊張した。
 ……それにしても、やっぱり……ヴィニー殿下と仲が悪いのかしら……? そんなことを考えながら、私はベッドに横になり目を閉じた。
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